「親が住んでいる実家を、自分が買い取って住みたい」「離婚にあたって、夫名義の家を妻が買い取りたい」。そんな親族間での不動産売買を考えたとき、多くの人が「身内同士だから簡単だろう」と思いがちです。しかし、いざ住宅ローンを申し込むと、金融機関から厳しい目を向けられ、審査に通らないケースが後を絶ちません。この記事では、なぜ親族間売買の住宅ローン審査が厳しいのか、その根本理由から、審査を突破するための具体的な戦略、そして税務上のリスクまで、専門的な内容を分かりやすく徹底解説します。この記事を読めば、あなたは親族間売買に潜むリスクを正しく理解し、安全かつ確実に取引を進めるための道筋を描くことができます。
目次
まずは結論!親族間売買のローンが厳しいのは「取引の公平性」を疑われるから
結論から言うと、金融機関が親族間売買に慎重になる最大の理由は、その取引が「第三者間のような公平な条件で行われているか」を客観的に判断するのが非常に難しいからです。
金融機関が住宅ローンで融資するお金は、あくまで「住宅を購入するため」の資金です。しかし、親族間売買の場合、以下のような懸念がつきまといます。
- お金の使い道は本当に住宅購入だけか?(親の借金返済などに流用されるリスク)
- 売買価格は適正か?(不当に高く設定し、差額を別の用途に使う「水増し融資」のリスク)
- そもそも、これは本当に「売買」なのか?(実質的な「贈与」を隠すための取引ではないかという疑念)
これらのリスクから身を守るため、多くの金融機関は親族間売買への融資に厳しい基準を設けているか、そもそも取り扱い自体を行っていないのが実情です。
【最重要】ローン審査以前の壁!「みなし贈与」と税務署のリスク
住宅ローンの問題以上に注意しなければならないのが、「贈与税」のリスクです。親族間売買では、売買価格の設定を誤ると、税務署から「実質的な贈与(みなし贈与)」と判断され、後から高額な税金を課される可能性があります。
1. なぜ親族間売買で「贈与税」がかかるのか?
それは、売買価格が市場の価格(時価)と比べて著しく低い場合に、「時価との差額分を贈与した」とみなされるからです。例えば、時価3,000万円の家を、親子だからという理由で500万円で売買した場合、差額の2,500万円分は親から子への贈与と判断され、買い主である子に高額な贈与税が課せられる可能性があります。良かれと思って安く売買したことが、かえって大きな負担を生むのです。
2. キモは「適正な時価」。価格設定を間違えると大損する
「みなし贈与」を避けるためには、売買価格を「適正な時価」の範囲内で設定することが絶対条件です。この「時価」を無視した価格設定は、贈与税のリスクだけでなく、以下のような問題も引き起こします。
- 住宅ローン審査への悪影響:時価と売買価格が乖離していると、金融機関は取引の公平性を疑い、審査がさらに厳しくなります。
- 住宅ローン控除が使えない可能性:親族間の特別な関係を利用して安く購入した場合など、一定の条件下では住宅ローン控除(減税制度)の対象外となることがあります。
3. 適正価格の調べ方(不動産会社の査定が基本)
では、「適正な時価」はどうやって調べれば良いのでしょうか。最も信頼性が高く、一般的な方法は「不動産会社に査定を依頼すること」です。第三者である不動産のプロに査定してもらい、「査定報告書」を作成してもらうことで、その価格が客観的な時価であることを金融機関や税務署に対して証明できます。1社だけでなく、2〜3社に査定を依頼すると、より価格の客観性が高まります。
イエツグでは、親族間売買の前提となる不動産査定も承っております。公平な第三者として、お客様の状況に合わせた適正な査定をご提供します。
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【審査突破】親族間売買で住宅ローンを組むための4つの戦略
原則として審査が厳しい親族間売買ですが、決して道が閉ざされているわけではありません。適切な手順を踏み、ポイントを押さえることで、融資を受けられる可能性は十分にあります。ここでは、審査を突破するための4つの具体的な戦略をご紹介します。
戦略① 親族間売買に柔軟な金融機関を選ぶ(ノンバンク等)
メガバンクなど多くの都市銀行は親族間売買への融資に消極的ですが、一部の金融機関は対応しています。特に、金利がやや高めになる傾向はありますが、フラット35や一部のネット銀行、地方銀行、信用金庫、ノンバンク系の金融機関などは、比較的柔軟な審査が期待できます。最初から「取引NG」の銀行に時間を費やすのではなく、対応可能な金融機関をリストアップして相談することが重要です。
戦略② 第三者(不動産会社)を仲介に入れて公平性を示す
金融機関が最も懸念する「取引の公平性」を担保するために、不動産会社に仲介を依頼するのは非常に有効な戦略です。不動産会社が間に入ることで、以下のメリットが生まれます。
- 適正な時価に基づいた売買価格であることを証明できる。
- 法的に不備のない「不動産売買契約書」が作成される。
- 客観的な第三者の目で取引全体がチェックされる。
仲介手数料はかかりますが、ローン審査の通過率を高め、後々のトラブルを防ぐための「保険」と考えれば、その価値は十分にあると言えるでしょう。
戦略③ 法的に有効な「不動産売買契約書」を作成する
個人間で作成した覚書のような書類では、金融機関は契約の正当性を認めてくれません。不動産会社や司法書士といった専門家が作成した、印紙の貼付された法的に有効な「不動産売買契約書」を準備することが、ローン審査の最低条件となります。この契約書があることで、これが贈与ではなく、正式な「売買」であることを証明できます。
戦略④ 住宅ローン以外の資金調達方法も検討する
もし住宅ローンの審査がどうしても難しい場合は、他の資金調達方法も視野に入れましょう。例えば、日本政策金融公庫や、一部の銀行が提供する「フリーローン(無担保ローン)」などです。ただし、これらは住宅ローンに比べて金利が高く、借入期間も短いことがほとんどです。あくまで最終手段として考え、返済計画に無理がないか慎重に検討する必要があります。
親族間売買の進め方や、対応可能な金融機関のご相談も、イエツグにお任せください。お客様の状況に合わせた最適なプランをご提案します。
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親族間売買を安全に進めるための5ステップと専門家の役割
親族間売買は、通常の不動産取引以上に、正しい手順で慎重に進める必要があります。ここでは、安全な取引を実現するための5つのステップと、各段階で関わる専門家の役割を解説します。
ステップ1:不動産会社に依頼し、物件の「査定」と「調査」を行う
まずは不動産会社に依頼し、物件の「査定報告書」を取得して適正な時価を把握します。同時に、物件に法的な問題(再建築不可など)がないか、プロの目で調査してもらうことも重要です。
【専門家】不動産会社
ステップ2:査定価格を基に、親子(親族)間で「売買価格」を決定する
査定価格を基準として、親族間で話し合い、最終的な売買価格を決定します。この価格が、みなし贈与と判断されない、常識的な範囲内であることが重要です。
ステップ3:専門家(司法書士や不動産会社)に「売買契約書」の作成を依頼する
決定した売買価格と条件に基づき、法的に有効な不動産売買契約書を作成します。契約内容に漏れや不備がないよう、専門家に依頼するのが賢明です。
【専門家】不動産会社、司法書士
ステップ4:金融機関に「住宅ローン」を申し込む
作成した売買契約書や査定報告書などの必要書類を揃え、親族間売買に対応してくれる金融機関に住宅ローンの本審査を申し込みます。
【専門家】金融機関
ステップ5:ローン契約後、司法書士立ち合いのもと「決済」と「所有権移転登記」を行う
住宅ローンの契約が完了したら、金融機関、売主、買主、そして司法書士が集まり、売買代金の支払い(決済)と、家の名義を買主に変更する「所有権移転登記」の手続きを同時に行い、取引は完了です。
【専門家】司法書士
親族間売買の住宅ローンに関するQ&A
最後に、親族間売買と住宅ローンに関してよくある質問にお答えします。
Q1. 親族間売買でも住宅ローン控除は使えますか?
A1. 原則として、親子間や夫婦間など「生計を一つにする親族」からの取得の場合、住宅ローン控除は適用されません。これは、家族内で資金を移動させて減税の恩恵を受けることを防ぐためです。ただし、生計を別にする兄弟からの購入など、条件によっては適用されるケースもあります。詳細は税務署や税理士にご確認ください。
Q2. 個人間で作成した契約書でもローン審査は通りますか?
A2. いいえ、ほぼ通りません。前述の通り、金融機関は取引の公平性と契約の法的な有効性を重視します。当事者だけで作成した契約書は、そのどちらも担保できないため、審査の土台に乗らないと考えた方が良いでしょう。専門家が作成・記名押印した契約書が必須です。
Q3. 住宅ローンが通らなかった場合、どうすればいいですか?
A3. まずは、なぜ審査に落ちたのか、金融機関に可能な範囲で理由を確認しましょう。その上で、別の金融機関に再チャレンジする、自己資金の割合を増やす、売買価格を見直す、といった対策を検討します。売買契約書には、ローンが通らなかった場合に契約を白紙撤回できる「ローン特約」を付けておくことが、買主を守るために非常に重要です。
不動産取引に関するどんな疑問も、まずはイエツグにご相談ください。専門家ネットワークを活かし、最適な解決策をご提案します。
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まとめ:自己判断は危険!専門家と連携して安全な親族間売買を実現しよう
今回は、「親族間売買」という特殊な不動産取引において、なぜ住宅ローンの審査が厳しいのか、そしてその壁をどう乗り越えれば良いのかについて詳しく解説しました。
親族間売買で最も危険なのは、「身内同士だから大丈夫だろう」という自己判断で進めてしまうことです。良かれと思って設定した価格が将来多額の贈与税を生んだり、ローンが組めずに計画が頓挫したりと、知識がないまま進めるにはあまりにもリスクが大きすぎます。取引の公平性を客観的に証明し、法務・税務上のリスクを回避するためには、不動産会社や司法書士、税理士といった専門家のサポートが不可欠です。
この記事が、あなたが安全な親族間売買を進めるための一助となれば幸いです。大切な家族との取引だからこそ、専門家としっかり連携し、後々まで誰もが納得できる、後悔のない不動産売買を実現してください。
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不動産業界の活性化・透明化を目指し、2018年仲介手数料定額制の不動産会社「イエツグ」を設立。お客様の「心底信頼し合えるパートナー」になることを目標に、良質なサービスと情報を提供している。
保有資格:宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士・2級ファイナンシャルプランナー技能士・住宅ローンアドバイザー・既存住宅アドバイザー・防災士