不動産の売買契約を控え、「電子契約」という言葉に戸惑っていませんか? 2022年の法改正で本格的に解禁されましたが、「本当に安全なのか」「紙の契約書と何が違うのか」といった不安や疑問を感じるのは当然のことです。
高額な取引だからこそ、仕組みや安全性の理解は不可欠です。
この記事では、不動産取引における電子契約の基本から、法改正のポイント、メリット・デメリット、具体的な契約の流れまで、分かりやすく解説します。読み終える頃には、電子契約への不安が解消され、便利で安心な選択肢の一つとして検討できるようになるはずです。
時間やコストを節約し、スムーズな不動産取引を実現するための最新知識を身につけましょう。
目次
まずは結論!不動産取引の電子契約は「これからの新常識」へ
不動産取引における電子契約は、特別なものではなくなっています。2022年の法改正から3年以上が経過した現在、利便性と安全性が広く認知され、新しい取引のスタンダードとして定着しつつあります。
1.【比較表】電子契約と書面契約の7つの違いが一目瞭然
電子契約と書面契約の大きな違いは、コスト、時間、場所の制約がなくなる点です。以下の表で、具体的な違いを確認してみましょう。
| 比較項目 | 電子契約 | 書面契約 |
|---|---|---|
| 印紙税 | 不要 | 必要 |
| 契約場所 | オンライン(場所を問わない) | 対面(不動産会社など) |
| 契約時間 | 24時間いつでも可能 | 営業時間内 |
| 書類の保管 | データで簡単管理 | 紙で物理的に保管 |
| 紛失・劣化 | リスクが低い | リスクがある |
| 改ざんリスク | 技術的に困難 | リスクがある |
| 取引スピード | 早い | 時間がかかる |
この手軽さとコスト削減効果が、普及を後押ししています。
2. 2022年の法改正で「契約書(37条書面)」の電子化が全面解禁
不動産取引の電子化における最大の転換点は、2022年5月18日に施行された改正宅地建物取引業法です。
この法改正により、これまで紙での交付が義務付けられていた「重要事項説明書(35条書面)」と「売買契約書(37条書面)」の電子交付が全面的に認められました。結果として、押印も不要となり、取引を完全にオンラインで完結させる道が開かれました。
3. 2025年時点での普及率は約40%!大手を中心に導入が加速
法改正から約3年半が経過した2025年10月現在、不動産売買における電子契約の普及率は40%前後に達すると見込まれています。
大手不動産会社の約6割が導入済みという調査データもあり、導入は今後さらに加速する見込みです。数年以内には、中小の不動産会社にも普及し、電子契約が主流になると予測されます。
電子契約や不動産取引のDXについてのご相談はイエツグへ
そもそも不動産取引の電子契約とは?IT重説との違い
不動産取引のオンライン化を語る上で、「電子契約」と「IT重説」はセットで語られることが多い重要なキーワードですが、それぞれ役割が異なります。この2つの違いを正しく理解し、取引の全体像を掴みましょう。
1. 電子契約:契約書をデータ化し、オンラインで署名・締結する仕組み
電子契約とは、紙の売買契約書と印鑑の代わりに、電子ファイル(PDFなど)と「電子署名」を用いて契約を締結する仕組みです。
インターネット環境さえあれば、パソコンやスマートフォンを使い、時間や場所を選ばずに契約手続きを進められます。契約内容は、高度なセキュリティ技術によって保護された電子データとして保管されるのが特徴です。
2. IT重説:重要事項説明をビデオ通話などで行うこと
IT重説とは、「重要事項説明」を対面ではなく、Zoomなどのビデオ通話ツールを利用してオンラインで行うことです。
重要事項説明は、物件に関する重要な情報を宅地建物取引士が買主に対して説明する、法律で定められた手続きです。従来は対面が必須でしたが、これも法改正によりオンラインでの実施が認められるようになりました。
3. 2つを組み合わせることで、完全オンラインでの不動産取引が実現
「IT重説」で物件の説明を受け、その後に「電子契約」で売買契約を結ぶ。この2つを組み合わせることで、一度も不動産会社に来店することなく、自宅にいながら不動産取引を完結させることが可能になります。
まさに、不動産取引におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)を象徴する流れです。
イエツグが提供する先進的なサービス内容を詳しくご紹介します
【買主・売主向け】不動産電子契約の5つのメリット
電子契約は、買主・売主の双方に多くのメリットをもたらし、時間や場所の制約が多い現代のライフスタイルに最適な選択肢です。
1.【最大のメリット】契約書に貼る「印紙税」が不要になる
電子契約の最大の金銭的メリットは、数万円にのぼることもある「印紙税」が不要になる点です。印紙税は紙の契約書に課される税金ですが、電子契約は「課税文書の作成」にあたらないため、課税対象外となります。例えば、5,000万円の物件なら2万円の印紙税が節約できます。(出典:国税庁 印紙税額一覧表)
2. 不動産会社への来店が不要!遠隔地からでも契約可能に
契約のためだけに、遠方の不動産会社まで出向く必要がなくなります。仕事が忙しい方や、遠隔地の不動産を売買する方にとっては、交通費や移動時間の大幅な節約につながります。自宅や好きな場所から、リラックスして契約手続きに臨めます。
3. 契約書類の紛失リスクがなくなり、保管・管理が簡単になる
紙の契約書には、紛失や火災による焼失、経年劣化といったリスクが常に伴います。一方、電子契約書はデータとしてクラウド上などに安全に保管されるため、これらの心配がありません。必要な時にいつでも簡単に検索・閲覧でき、管理の手間も大幅に削減できます。
4. 24時間いつでもどこでも契約内容の確認ができる
契約手続きの途中でも締結後でも、スマートフォンやPCがあればいつでも契約内容を確認できます。「あの条文はどうだったか」と思った時に、分厚いファイルの中から契約書を探し出す必要はありません。手軽に内容を確認できるため、取引の透明性も高まります。
5. 契約手続きがスピーディに進み、取引期間を短縮できる
書類の郵送にかかる時間や、関係者が集まるためのスケジュール調整が不要になるため、契約手続き全体がスピーディに進みます。特に、売主・買主が遠隔地に住んでいるケースでは効果は絶大です。迅速に契約を締結できることで、その後の住宅ローン審査などもスムーズに進められます。
イエツグの仲介手数料定額制なら、印紙税だけでなく諸費用全体を大幅に削減できます
知っておくべき3つのデメリットと注意点
多くのメリットがある電子契約ですが、利用する上で知っておくべきデメリットや注意点もあります。事前にこれらを理解し、対策を講じておくことで、より安心して取引を進めることができます。
1. スマートフォンやPCなどのIT環境が必須
電子契約は、インターネットに接続されたPCやスマートフォン、タブレット端末がなければ利用できません。また、安定した通信環境も必要です。もし操作に不安があれば、不動産会社の担当者に事前に相談し、デモ画面などで練習させてもらうと安心です。
2. 厳格な本人確認手続きが必要になる
なりすましを防ぐため、電子契約では厳格な本人確認が求められます。一般的には、運転免許証やマイナンバーカードといった顔写真付きの身分証明書を、スマートフォンのカメラで撮影してアップロードする方法が取られます。この手続きを面倒に感じるかもしれませんが、安全な取引のためには不可欠なプロセスです。
3. 取引の相手方や不動産会社の同意がなければ利用できない
電子契約は、売主・買主・仲介する不動産会社のすべての当事者の同意がなければ利用できません。相手方が書面契約を希望したり、不動産会社がシステムを導入していなかったりする場合は、電子契約を利用できません。契約方法については、取引の早い段階で関係者全員の意思を確認しておく必要があります。
電子契約に関する不安や疑問は、まず「よくある質問」をご確認ください
不動産電子契約の具体的な流れを5ステップで解説
「電子契約って、具体的に何をするの?」という疑問にお答えするため、一般的な手続きの流れを5つのステップで解説します。専門システムを利用するため、操作は比較的簡単です。全体の流れをイメージしておきましょう。
1.【準備】メールアドレスや本人確認書類を用意する
まず、電子契約システムからの通知を受け取るメールアドレスと、本人確認に使う身分証明書(運転免許証など)を手元に用意します。不動産会社に、電子契約を希望する旨とメールアドレスを伝えておきましょう。
2.【受信】不動産会社から電子署名依頼のメールが届く
不動産会社が契約書の準備を終えると、登録したメールアドレスに、電子契約システムから「署名依頼」のメールが届きます。メール本文中のリンクをクリックして、契約システムにアクセスします。
3.【本人確認】システム上で身分証明書をアップロード
画面の指示に従い、スマートフォンのカメラなどで身分証明書とご自身の顔を撮影し、アップロードします。システムが自動で本人確認を行いますが、これは取引の安全性を担保する重要なステップです。
4.【署名】契約内容を確認し、電子署名を行う
システム上で契約書(PDF)の内容を隅々まで確認します。内容に問題がなければ、「署名」や「同意」といったボタンをクリックします。このクリックが、紙の契約書における押印と同じ効力を持ちます。
5.【保管】契約締結済みの電子ファイルをダウンロードする
すべての当事者の署名が完了すると、契約締結済みの電子契約書(PDF)が発行されます。このファイルを自身のPCやクラウドストレージにダウンロードして保管しましょう。これで契約手続きは完了です。
手続きの流れでご不明な点があれば、お電話で丁寧にご説明します
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電子契約は本当に安全?セキュリティと法的有効性の仕組み
「データだと改ざんされるのでは?」「本当に法的な効力があるの?」これは、電子契約に対して最も多く寄せられる懸念です。結論から言うと、電子契約は高度な技術により、紙の契約書と同等以上の安全性が確保されています。
1.「電子署名」が本人の意思を示し、なりすましを防ぐ
電子署名とは、電子文書に対して行われる、印鑑における「押印」に相当する手続きです。電子署名には、①その文書が本人によって作成されたことを証明する「本人証明」と、②内容が改ざんされていないことを証明する「非改ざん証明」の機能があります。これにより、なりすましや偽造を防ぎます。
2.「タイムスタンプ」が契約内容の改ざんを防ぐ
タイムスタンプとは、ある時刻にその電子文書が存在し、それ以降改ざんされていないことを証明する技術です。契約が締結された時刻を正確に記録することで、「後から内容を書き換えた」といった不正を防止します。これは、紙の契約書にはない、電子契約ならではの強力なセキュリティ機能です。
3. これらの技術により、紙の契約書と同等以上の法的効力が担保される
「電子署名法」という法律により、本人による電子署名が行われた電子文書は、紙の契約書への押印と同様に、法的に有効なものとして成立することが定められています。(出典:e-Gov法令検索 電子署名法)電子署名とタイムスタンプという二重の技術的措置によって、電子契約は法的にも安全性の面でも、安心して利用できる仕組みとなっています。
イエツグが選ばれる理由。お客様からいただいた信頼の声をご覧ください
法改正から3年半、電子契約の「今」と「未来」
電子契約は、今まさに不動産業界に大きな変革をもたらしています。法改正から約3年半が経過した現場のリアルな声や、戦略的な活用法、そして万が一のトラブルへの備えまで、一歩踏み込んだ情報をご紹介します。
1. 現場のリアルな声:電子契約を利用した人の成功事例と失敗談
成功事例としては「海外赴任中に、一度も帰国せず国内のマンションを売却できた」といった声が聞かれます。時間と場所の制約を超えられる電子契約のメリットが最大限に活かされたケースです。一方で、「夫婦間で十分に契約内容を確認しないまま署名してしまい、後で意見が食い違った」といった失敗談も。手軽さゆえに、慎重な確認を怠らないことが重要です。
2. 「攻めのDX戦略」としての電子契約導入メリット
不動産会社にとって電子契約の導入は、単なる業務効率化に留まりません。コスト削減はもちろん、「遠隔地の顧客を獲得できる」「先進的な取り組みで他社と差別化できる」といった売上向上にも直結します。さらに、場所に縛られない働き方を求める若い世代にとって魅力的に映るため、優秀な人材の確保にも繋がります。
3. もしトラブルになったら?電子データの証拠能力と相談窓口
電子契約書は、電子署名とタイムスタンプによって証拠能力が担保されており、裁判においても有効な証拠として認められます。万が一、契約内容を巡ってトラブルが発生した場合は、紙の契約書と同様に、弁護士や消費生活センターなどの専門機関に相談することが可能です。データだからといって、不利になることはありません。
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不動産取引の電子契約に関するよくある質問
ここでは、不動産取引の電子契約について、お客様から特によくいただく質問にお答えします。
Q1. スマートフォンだけでも電子契約はできますか?
A. はい、可能です。ほとんどの電子契約サービスはスマートフォンに対応しています。本人確認の際のカメラ撮影などを考えると、むしろPCよりもスムーズに進められる場合があります。ただし、契約書のような長文の書類を確認する際は、画面の大きいPCやタブレットの方が見やすいでしょう。
Q2. 契約書の内容を家族に確認してもらうことはできますか?
A. はい、できます。署名前の電子契約書(PDF)をメールで送ったり画面を見せたりすることで、ご家族に内容を確認してもらえます。紙の契約書と同様、必ず署名前にご自身だけでなく、関係者にも確認してもらうようにしましょう。
Q3. 電子契約システムを利用するのにお金はかかりますか?
A. いいえ、買主様・売主様が費用を負担することは基本的にありません。電子契約システムの利用料は、サービスを導入している不動産会社が負担します。お客様にとっては、印紙税が不要になるなど、コスト的なメリットが大きくなります。
まとめ:電子契約を正しく理解し、安全でスムーズな不動産取引を実現しよう
この記事では、2025年最新の情報に基づき、不動産取引における電子契約の仕組みやメリット・デメリット、安全性について詳しく解説しました。
電子契約は、印紙税の節約や手続きの効率化といった大きなメリットをもたらす、これからの不動産取引のスタンダードです。セキュリティ技術と法律によってその安全性はしっかりと担保されており、正しく理解すれば非常に便利なツールとなります。
もし取引する不動産会社から電子契約を提案されたら、それは顧客の利便性を考える先進的な会社だと判断する、一つの材料になるでしょう。不動産取引という人生の大きなイベントを、よりスマートに、より安心して進めるために、電子契約という新しい選択肢をぜひ前向きに検討してみてください。
さあ、新しい時代の不動産取引へ。最初の一歩はイエツグにご相談ください
















不動産業界の活性化・透明化を目指し、2018年仲介手数料定額制の不動産会社「イエツグ」を設立。お客様の「心底信頼し合えるパートナー」になることを目標に、良質なサービスと情報を提供している。
保有資格:宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士・2級ファイナンシャルプランナー技能士・住宅ローンアドバイザー・既存住宅アドバイザー・防災士