結論からいうと、新型コロナウイルスは不動産業界に深刻な影響をもたらしています。すでに不動産の需要は低下しつつあり、不動産価格は下落を始めました。
本記事では、新型コロナウイルスが与える不動産業界への影響、およびコロナ禍における不動産会社の経営についてご説明します。
不動産会社のなかには、すでに経営が苦しく撤退を余儀なくされるケースもあります。
そういった事態について考え、改善案を出していくために不可欠となる現状把握の一助として、本記事をご参照ください。
- 新型コロナウイルスが不動産業界にもたらす影響
- 不動産価格が下落する理由と根拠
- 今後、求められる経営の姿勢
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本編の内容は「0:42」からお話させていただいています。
不動産業界の活性化・透明化を目指し、2018年仲介手数料定額制の不動産会社「イエツグ」を設立。お客様の「心底信頼し合えるパートナー」になることを目標に、良質なサービスと情報を提供している。
保有資格:宅地建物取引士・2級ファイナンシャルプランナー技能士・住宅ローンアドバイザー・既存住宅アドバイザー・防災士
目次
新型コロナウイルスが与える今後の不動産業界への影響
2020年1月末、新型コロナウイルスが発生した時点では、不動産業界に対する影響が少ないといった見方があり、需要自体はほとんど変わっていませんでした。
旅行会社のプランキャンセルが相次いだり、インバウンド需要が減ったりといった兆候は見られていたものの、不動産業界全体に強い危機意識はなく直接的な影響もなかったのです。
しかし、2月中旬、WHOによるパンデミックの宣言とともに、お問い合わせ数が激減しました。特に、オリンピックの選手村がある晴海豊洲エリア、その周辺のタワーマンションを積極的に購入していた投資家たちが一気に手を引いたのです。
2019年末からタワーマンションを購入されるお客様が増えており、月に多いときには5、6件購入されるお客様もいました。
また、2020年1月時点でも5件購入されたお客様がいたため、不動産需要の高まりを強く感じていましたが、パンデミックの宣言後の購入件数はゼロになっています。
投資物件以外のお問い合わせも減少傾向
投資物件ではなく、お客様自身が住む住宅(実需物件)の分野でも、お問い合わせが減少傾向にあるとのこと。弊社は物件売買がメインであるため、賃貸物件の領域に詳しくはないものの、聞くところによると賃貸契約のキャンセルや相談件数の減少、入居日変更の希望が見られるそうです。
不動産会社を経営している私の知り合いには、お客さんがパタリと途絶えてしまい廃業するケースもありました。ほかにも、廃業には追い込まれていないですが、そもそもお客様がおらず受付・電話対応のために1人だけ配置し、あとは全員休みにしている会社もあります。
不動産の価格は長期的に下がっていく?
よく「不動産価格は今後どうなっていくのだろう?」といった質問を受けますが、これに関しては「確実に下がる」と断言できます。ですから、不動産の購入を検討している方は、この予想を加味したうえでご検討ください。
今回のコロナショックの比較対象となる過去事例として「リーマンショック」が挙げられます。リーマンショック当時、不動産価格は1年ほどかけて約20%下落しました。
20%の価格下落なので、5,000万円の価格であった物件が、1年のあいだに4,000万円程度まで値下がりしたということです。
また、今回の価格下落の根拠は、過去事例をもとにした予想だけではありません。不動産を証券化したREIT(不動産投資信託)が大暴落している状況も、根拠の1つです。
以下の画像は、REIT全体の価格動向を示す「東証REIT指数」と呼ばれる指標。2020年2月を境に、大暴落している様子がうかがえます。
出所:SBI証券「東証REIT指数」
2,200付近から、一時は1,200以下にまで指数が下落し、REITの価格が半分近くにまで落ち込みました。東証REIT指数は、実際の不動産市場に先立って価格が推移する傾向にあるため、不動産価格も東証REIT指数をなぞるように下落していくものと予想できます。
また、今後の不動産市場を読み解くポイントや、一時的に値下がりしている不動産を購入することが望ましい理由について、下記ページにて詳しく解説しています。不動産の購入を検討している方は、ぜひチェックしてみてくださいね。
これから不動産会社はどうなる?どう経営すべき?
不動産の流通がほぼストップしているなか、これから不動産会社がどのようになっていくのか、およびどのように経営をしていけばいいのかご説明します。
これまでに資金を蓄えていなかった会社は、すでに撤退を始めているケースも多々あります。多少の資金を確保しており、まだ倒産には至っていない会社であっても、中小零細企業であれば多くて3ヶ月ほどの運転資金しか蓄えられていないでしょう。
雇用維持のために給料を補填してもらえる「雇用調整助成金」、個人事業主に最大100万円、法人に最大200万円を給付する「持続化給付金」を利用したとしても、わずかな延命措置にしかなりません。
ここに加えて融資制度を活用し、さらに半年ほど事業を存続させたとしても、コロナウイルスが終息している可能性は決して高くないはずです。
メディアに流れてくる専門家の意見を参照しても、終息の目途を予測することは難しく、今後2、3年、あるいはそれ以降もずっと新型コロナウイルスと共存しなければならない事態はあり得るとのこと。
こうした、いつ終わるのか予想できない逆境のなかで、私たち不動産会社はどのようにして生き残っていけば良いのでしょうか。
不動産会社が生き残るための選択肢は2つ
今後、不動産会社が生き残るための選択肢は、大きく2つ挙げられます。
- 社員を減らして少人数の会社として経営する
- コスト削減のため、新たな経営方法を模索する
今回は、2つ目に挙げた「コスト削減のため、新たな経営方法を模索する」という方法についてご説明します。
まず、不動産取引のプロセスは、情報収集から始まり、見学、そして契約や引き渡しがあります。
このうち、情報収集は現状でもインターネット上で行うことが可能ですし、今後さらなる利便性アップを実現できる可能性もあるでしょう。
たとえば、レインズは不動産会社にのみ操作・閲覧が可能であったものの、これを誰にでも扱えるようにすれば状況は一変するように思います。
不動産会社の機能を集約した無人店舗の運営が、コロナウイルス終息前後に主流となってきても不思議ではありません。
これは決して絵空事ではなく、従来は不動産会社のみ閲覧できていた物件の情報を、お客様が閲覧・印刷できるサービスを提供する無人店舗はすでに存在しています。
物件の見学・売買のIT化も現在進行形で普及中
これまで、見学には不動産会社の営業マンが同行し、鍵を開けて内見する流れが一般的でした。ここに、スマートフォンをかざすだけでロックを解除できる「スマートロック」を導入すると、営業マンが同行する必要はなくなります。
なぜなら、ネットから内見予約を行ったのち、見学者はデジタルキーを不動産会社から受け取り、物理キーを受け取ることなくスマートフォン1つで物件見学に向かえるからです。
スマートロックの機能により内覧履歴を残せるため、セキュリティ面の心配を解消しつつ、見学者の滞在時間・訪問時間など営業に使えるデータの確保も可能です。
また、見学後に行う契約に関しては、すでに賃貸契約の分野で「IT重説」が活用されています。IT重説は、インターネット通信を利用することで、契約者が自宅にいながら不動産業者の重要事項説明を受けられるというもの。
売買契約に関しても試験的に導入が進んでおり、2020年の10月まで「IT重説がトラブルなく実施できるのか」といった実験が行われています。
弊社も、IT重説の登録事業者59社に含まれており、売買契約においてもIT重説が機能するのか実証するために活動しています。
今回、新型コロナウイルスの騒動によりIT重説の重要性は高まっているように感じているため、この実験が問題なく進めば売買契約の分野においてもIT化は進んでいくでしょう。
新型コロナウイルスの終息後も従来通りには戻らない
コロナウイルスが終息すれば元の状態に戻るかというと、そうではないと考えています。オフィスに出勤せず、リモートワークを活用して効率的に業務を進める流れは、このまま継続するのではないかと思うのです。
これと同様に、不動産取引のプロセスもIT化された手段が一般的になり、無駄なプロセスはすべて省略された形のまま維持されるものと予想しています。
「場所を問わず、スマートフォンさえあれば不動産の契約ができる」といったあり方のほうが、不動産会社にとってもお客様にとっても理想的で無駄のない取引ができるため、こういった領域に力を入れていくことが不動産業界で生き残るために重要なのではないでしょうか。
「そんなの流行らない」といって否定する不動産関係者も一定数いますが、実際にIT化は進んでいます。
ですから、IT化の流れに反対し、ITとの共存を拒んでいる不動産会社は厳しくなり、ITを積極的に取り入れる企業から事業が再度軌道に乗るのだと考えています。
まとめ
不動産業界に対する新型コロナウイルスの影響は大きく、弊社をはじめ多くの不動産会社が大ダメージを受けています。不動産の需要回復は目途が立っておらず、しばらくの期間は厳しい状況が続くことはほぼ確実でしょう。
しかし、こんな状況であるからこそ、コロナウイルス終息から逆算して新たな手法を取り入れることが、いまの私たちに必要な意識だと考えます。改善策を考え抜いて実行し、このコロナウイルスがもたらす不況へ共に立ち向かっていきましょう。