他の土地に囲まれており、公道に接していない「袋地」。公道へ出るために周囲の土地を通行する権利は法律で認められているものの、日当たりが悪かったり隣地との境界線が曖昧になっていたりと懸念点もあります。
また建築基準法では、袋地には新たに家を建てたり、建て替えたりすることが認められていません。
本記事では、袋地について以下のポイントを解説いたします。
袋地の購入を検討している人は、ぜひ参考にしてみてくださいね!
不動産業界の活性化・透明化を目指し、2018年仲介手数料定額制の不動産会社「イエツグ」を設立。お客様の「心底信頼し合えるパートナー」になることを目標に、良質なサービスと情報を提供している。
保有資格:宅地建物取引士・2級ファイナンシャルプランナー技能士・住宅ローンアドバイザー・既存住宅アドバイザー・防災士
目次
袋地(無道路地)とはどんな土地のこと?
「袋地」とは、他の土地に囲まれているために公道に出られない土地のこと。公道へ出る道を持たないため「無道路地」とも呼ばれます。ただし他の土地を通行する権利は法律で規定されていますので、たとえ隣地所有者の合意がなくとも当然に認められます。
建築基準法の関係で、袋地には新たに家を建てたり、建て替えを行ったりすることが認められていないケースもあります。
他の土地を通行しなければ公道に出られず、再建築ができない……。
こういったデメリットを抱えた袋地の評価は低い傾向にあります。評価が低い分安く購入できるものの、売却が困難になる場合も少なくありません。
そもそもなぜ居住に不便な袋地が発生したかですが、もともと一筆の土地を合意の上で、あるいは親族間で分割・譲渡して袋地になったケースが多いようです。
袋地から公道へ出る権利は法律で認められている(囲繞地通行権)
袋地(無道路地)を囲んでいる土地を「囲繞地(いにょうち)」といい、袋地の所有者は囲繞地を通行して公道へ出ることになります。
この通行権は「囲繞地通行権」あるいは「袋地通行権」といい、民法によって定められており、私道を設置する根拠法となっています。
通行権の詳細について、民法の内容をもとに確認しましょう。
第二百十条 他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地を通行することができる。
第二百十一条 前条の場合には、通行の場所及び方法は、同条の規定による通行権を有する者のために必要であり、かつ、他の土地のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。
2 前条の規定による通行権を有する者は、必要があるときは、通路を開設することができる (民法)
上記のとおり、袋地の所有者に認められる通行権はあくまで必要最小限に限られ、通行する土地の損害に対しては償金を支払う必要があります。
「損害」とありますが、実際は「通行の対価」ですので、通行権は原則有償です。
例外的に、分筆によって袋地が生じたケースでは、分筆前に一筆であった土地であれば無償で通行権が認められます。
第二百十三条 分割によって公道に通じない土地が生じたときは、その土地の所有者は、公道に至るため、他の分割者の所有地のみを通行することができる。この場合においては、償金を支払うことを要しない。(民法)
ここまで見てきた囲繞地通行権のポイントをおさらいしましょう。
・囲繞地の通行場所や方法は必要最小限に留めなければならない
・通行する土地の損害に対して有償
・分割によって袋地ができた場合は分割者の土地を無償で通行できる
袋地購入の際は不動産登記簿表題部を確認
前章で確認したとおり、囲繞地通行権の行使が有償か無償かは、袋地が生じた理由によって異なります。
したがって袋地購入を検討する際は、必ず不動産登記簿謄本を確認するようにしましょう。不動産登記簿謄本は「表題部」「甲区」「乙区」の3部構成になっていますが、今回確認すべきは「表題部」です。
(画像出典:法務省)
表題部の「原因及びその日付」という欄に、土地の分筆・合筆・錯誤など、過去の経過が時系列で記載されています。分筆されている場合は、この欄に「○番1、○番2に分筆」といった記録があるはずです。
袋地が再建築不可とみなされてしまう場合
袋地には新たに家を建てたり、建て替えたりすることができません。これは、建築基準法の接道義務を満たさないためです。
接道義務とは「建築物の敷地は道路に2m以上接していなければならない」という規定で、目的は緊急車両の通路確保です。
また、接する道路の幅員についても「4m以上のもの」と基準が定められています。
・道路とは幅4m以上のものを指す
接道義務を果たすには、上記2つの条件を満たす必要があります。
たとえば4m未満の道路に2m以上接していたとしても、それでは接道義務を果たせていないということです。
逆に、袋地として購入した土地であっても後から接道義務を果たすことができれば、建築や建て替えが可能になります。
袋地でも建築や建て替えを可能にする3つの方法
前章で見てきたとおり、袋地の建築や建て替えを可能にするためには、接道義務を果たす必要があります。
具体的には、下記3つの方法があります。
1.隣家の土地を購入する
2.同じ面積の土地を交換する(等価交換)
3.通行地役権を設定する
それぞれの方法について詳しく解説します。
方法1.隣家の土地を購入する
1つ目は、公道に面している隣家の土地を購入し、接道条件を満たす方法です。
この際も「幅4m以上の道路に2m以上接していること」が条件ですので注意しましょう。
方法2.同じ面積の土地を交換する(等価交換)
2つ目は、同じ面積の土地を交換する等価交換という方法。
「幅4m以上の道路に2m以上接する」という接道条件を満たすよう、部分的に土地を交換し接道条件を満たします。
方法3.通行地役権を設定する
3つ目は、通行地役権を設定するという方法です。
通行地役権とは、袋地の所有者と隣地(承役地といいます)の所有者の合意によって設定されるもの。前述の囲繞地通行権と通行地役権とは、隣地所有者の合意が必要かどうかという違いがあります。
・通行地役権……隣地(承役地)所有者の合意が必要。
なお、囲繞地通行権の場合は「必要最小限の範囲」というルールがありましたが、通行地役権の場合は当事者間の合意による取り決めですので範囲に制限はありません。合意があれば、無償で通行地役権を設定することも可能です。
通行地役権設定後は設定登記が必要で、法務局への登記申請は隣地所有者と共同で行います。
まとめ
再建築不可の袋地でも、新たに家を建築したり建て替えたりする方法はあります。
ここまで見てきたように、等価交換や通行地役権を設定するなど復数の方法がありますが、いずれの方法を取るにしても重要になってくるのが隣家の土地所有者との関係性。隣地の方が、良好な関係性を築けそうな人か確認するのも、袋地購入では大事なポイントとなります。
弊社イエツグでは、袋地を購入される方にはデメリットや注意点についてもしっかりお伝えしております。制限の多い袋地にも価格が安いという大きなメリットがあり、方法によってもその他の土地と同じように建て替えも建築も可能となります。お客様にとって最適なお住まいをご提案できるよう努めておりますので、ぜひお気軽にお問合せください。
・袋地購入の際に確認すべきこと
・袋地が再建築不可とみなされる場合
・袋地でも建築や建て替えを可能にする3つの方法