年収700万円あると、金融機関から約5,000万円の住宅ローンを借り入れられる可能性があります。しかし、いくら年収が高くても、無理な借り入れをすると住宅購入後の生活が苦しくなるため、借入額は慎重に決めなければなりません。
この記事では、年収700万円の方が住宅購入に失敗しないように、借入限度額の計算方法や借入額の決め方などを幅広く紹介します。
- 年収700万円で5,000万円の住宅ローンを借り入れられるかシミュレーション
- 住宅ローン借入額を決めるときに留意するべきポイント
- 住宅ローン控除を活用すると返済負担を緩和できる
不動産業界の活性化・透明化を目指し、2018年仲介手数料定額制の不動産会社「イエツグ」を設立。お客様の「心底信頼し合えるパートナー」になることを目標に、良質なサービスと情報を提供している。
保有資格:宅地建物取引士・2級ファイナンシャルプランナー技能士・住宅ローンアドバイザー・既存住宅アドバイザー・防災士
目次
5,000万円借りられる?年収700万円の住宅ローン借入限度額を計算
では、年収700万円の方に対して、金融機関は具体的にいくらの住宅ローンを融資してくれるのでしょうか?ここでは、住宅ローンの借入限度額の計算方法を解説します。
金融機関は、住宅ローンの借入限度額を以下の計算式で算出します。
借入限度額=(年収×返済比率÷12−他の借入返済額)÷「審査金利◯%で100万円を◯年借りた場合の毎月の返済額」×100万円
※「審査金利◯%で100万円を◯年借りた場合の毎月の返済額」はこちらの表で確認できます
上記計算式のうち「返済比率」「審査金利」の内容や目安については、以下の通りです。実際の数値は、金融機関によって異なります。
内容 | 目安 | |
返済比率 | 年収のうち住宅ローンの返済に充ててもよい割合 | ・年収400万円未満:30% ・年収400万円以上:35% ※フラット35の場合 |
審査金利 | 金融機関が住宅ローンの審査をする際に用いる金利 | ・変動金利:3.1〜4.0% ・固定金利:借入金利と同じ |
変動金利は、返済途中の金利が状況に応じて上下する金利タイプ
固定金利は、返済途中の金利が変わらない金利タイプ
また、借入限度額の計算式にある「他の借入返済額」は、すでに借り入れているマイカーローンや教育ローンの毎月の返済額です。他の借り入れがあると、住宅ローンの借入限度額は少なくなります。
借入限度額のシミュレーションの条件は、以下の通りです。
- 年収:700万円
- 返済比率:35%
- 返済期間:35年
- 審査金利:3.5%
- 審査金利3.5%で100万円を35年借りた場合の毎月の返済額:4,133円
- 他の借り入れ返済額:なし
・借入限度額=(年収×返済比率÷12−他の借入返済額)÷「審査金利で100万円を○年借りた場合の毎月の返済額」×100万円
=204,167円÷4,133円×1,000,000円
≠4,940万円
金融機関が貸してくれる金額と自分自身が返済できる金額は異なる
住宅ローンの借入限度額は、あくまで金融機関が住宅ローンを融資してくれる金額です。住宅ローンの借入額は、マイホームの購入後に返済していける金額に設定しましょう。
年収が700万円である場合、税金や社会保険料を差し引いた手取りの年収は約542万円。よって毎月の手取り収入は、ボーナスを考慮すると約36万〜39万円です。約36万〜39万円の手取り収入のうち、約20万円を返済に回した残りで生活ができるのでしょうか?
また住宅を購入した場合、住宅ローンの返済以外にも以下の支出が発生します。
マンション購入時 | 戸建て住宅購入時 |
・管理費 ・修繕積立金 ・駐車場代(契約した場合のみ) |
・将来の修繕や増改築に備えた積み立て |
以上の点から住宅ローンの借入額は、ご自身の手取り収入のうちローンの返済に充てられる金額を踏まえて慎重に決めることが大切です。
40歳で借りると完済はいつ?年収700万円の適正な住宅ローン借入額
住宅ローンの適正な返済比率は、25%以下といわれています。以下は、2020年10月現在の金利水準で、返済比率ごとに住宅ローン借入額を逆算した結果です。
返済比率 | 返済可能額 | 住宅ローンの借入額の目安(返済期間35年、元利均等方式) | |
変動金利(0.475%) | 固定金利(1.3%) | ||
15% | 毎月87,500円(年間105万円) | 3,380万円 | 2,950万円 |
20% | 毎月116,667円(年間140万円) | 4,510万円 | 3,920万円 |
25% | 毎月145,833円(年間175万) | 5,640万円 | 4,900万円 |
年収700万円の人は、返済比率を15%に設定しても、3,000万円前後の借り入れが可能です。返済比率を20%に設定すれば、4,500万円以上の住宅も購入できます。
ただし変動金利は、将来的に返済負担が上昇するリスクがある点に注意が必要です。もし借入可能額いっぱいまで変動金利型の住宅ローンを借りてしまうと、将来的に毎月の返済負担が増えたときに、家計が赤字となる恐れがあります。
変動金利で借り入れるときは、借入額を減らして、返済負担が増えたときに繰上返済ができるよう、いくらか貯蓄しておくと安心です。
借入額は完済時の年齢も考慮して決める
住宅ローンの返済期間を、よく検討せず35年に設定するのはおすすめできません。多くの方は、60歳あるいは65歳になると企業を退職して年金生活が始まり、収入が低下するためです。
仮に、40歳の方が住宅ローンを借り入れる場合、返済期間を35年にすると完済時の年齢は75歳。将来の年金受給開始年齢が70歳に延びていたとしても、5年間は年金生活をしながら住宅ローンを返済することになります。
返済負担が老後の家計を圧迫する事態を防ぐためには、定年退職を迎えるまであるいは年金の受給が開始されるまでに、住宅ローンを完済しなければなりません。
仮に40歳で住宅ローンを借り入れて65歳までに完済したい場合、返済期間は25年以下となります。たとえ毎月の返済可能額が同じでも、住宅ローンの返済期間が短くなると、以下のように借入額は少なくなるのです。
返済比率 | 返済可能額 | 住宅ローンの借入額の目安(元利均等方式) | |||
返済期間25年 | 返済期間35年 | ||||
変動金利(0.475%) | 固定金利(1.3%) | 変動金利(0.475%) | 固定金利(1.3%) | ||
20% | 毎月116,667円(年間140万円) | 3,290万円 | 2,980万円 | 4,510万円 | 3,920万円 |
このように住宅ローンの返済期間が10年違うと、借入額に約1,000万円の差が出ます。あなたにとって現実的な借入額を決めるときは、毎月の返済可能額だけでなく、住宅ローンを完済する年齢も考慮することが大切です。
年収700万円あると住宅ローン控除での節税効果が期待できる
住宅ローン控除とは、年末時点の住宅ローン借入残高の1%分、所得税や住民税から控除してくれる制度です。住宅ローン控除よる所得税の還付や住民税の減額を受けられると、住宅ローンの返済負担を緩和できます。
たとえば年末時点の借入残高が3,500万円であった場合、所得税から最大で35万円が控除され、引ききれなかった分は住民税から控除されます。※所得税の課税所得金額の7%(上限13万6,500円)が上限
また所定の条件を満たすと、控除期間が本来の10年から13年に延長されます。返済11〜13年目の控除額は「住宅ローンの借入残高の1%」と「建物取得価格の2%÷3」のどちらか低い金額です。
所得税や住民税は、所得のうち課税対象となる金額に所定の税率をかけて計算されるため、年収が低いと税額も低くなり、あまり節税効果を得られません。しかし年収が700万円あれば所得税や住民税も高くなるため、住宅ローン控除による高い節税効果が期待できます。
ただし、住宅ローン控除の対象となる借入残高は4,000万円が上限です(耐震性能やバリアフリー性能などが所定の条件を満たした「長期優良住宅」を購入する場合は、5,000万円が上限)
また年収が同じ700万円であっても、家族構成や生命保険の加入状況などによって、所得税や住民税の税額が変わるため、節税効果が異なる点にも注意が必要です。
まとめ:借入額は「返済可能額」と「完済時の年齢」を考慮して決める
年収が700万円あると、最大で約5,000万円の住宅ローンを借り入れられます。しかし年収が高くなっても、住宅ローンは実際に自分自身が返済できる金額を借り入れることが大切である点に変わりはありません。
住宅ローンの借入額は、手取り収入のうち返済に充てられる額や完済時の年齢などを考慮し、借り入れ後に生活が苦しくならないよう、現実的な金額に設定しましょう。
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大手保険会社で培った知識と経験から、保険、不動産、税金、住宅ローンなど幅広いジャンルの記事を執筆・監修。