2020年10月現在も、政府による金融緩和政策と新型コロナウイルスによる景気の低迷が重なり、住宅ローン金利は低い水準で推移しています。
「金利が低いうちに固定金利で借りておきたい」と考えている方もいらっしゃるでしょう。しかし低金利だからといって、固定金利が正解とは限りません。金利タイプの特徴やメリット・デメリットをよく理解したうえで選ぶことが大切です。
本記事では、住宅ローン金利が選びやすくなるように、全期間固定金利についての情報を幅広く解説していきます。
- 全期間固定金利の特徴やメリット・デメリット
- フラット35の特徴や金利
- 住宅ローン金利の選び方
不動産業界の活性化・透明化を目指し、2018年仲介手数料定額制の不動産会社「イエツグ」を設立。お客様の「心底信頼し合えるパートナー」になることを目標に、良質なサービスと情報を提供している。
保有資格:宅地建物取引士・2級ファイナンシャルプランナー技能士・住宅ローンアドバイザー・既存住宅アドバイザー・防災士
目次
全期間固定金利とはローンの完済まで金利が一定である金利タイプ
住宅ローンの金利タイプは、返済期間中の金利が変わらない「固定金利」と、状況に応じて金利が変わる「変動金利」に分かれます。
固定金利は、完済まで金利がまったく変わらない「全期間固定金利」と、借入当初から3年や10年などの一定期間のみ金利が固定される「固定期間選択型」の2種類です。
全期間固定金利は、金利の固定期間と返済期間が同じですが、同じ金融機関で金利タイプの変更はできません。返済途中で全期間固定金利から、変動金利や固定期間選択型に変更する場合は、他の金融機関が取り扱う住宅ローンに借り換える必要があります。
2段階固定金利タイプとは
全期間固定金利には、返済終了まで金利が一定であるタイプの他に、借入当初の10年間と、11年目以降で金利が異なる2段階固定金利があります。
借り入れから10年目までの金利は、11年目以降の金利よりも低く設定されるのが一般的。11年目以降の金利は、申込時もしくは融資の実行時に決まります。
全期間固定金利のメリット・デメリット
では、全期間固定金利には、どのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか?それぞれ確認していきましょう。
全期間固定金利のメリット
全期間固定金利のメリットは、以下の2点です。
- 借入時に毎月の返済額と返済総額が確定する
- 借入審査に比較的通りやすい
また、返済期間中の金利上昇リスクもないため、変動金利や固定期間選択型よりも、審査に比較的通りやすいといわれています。自営業者や転職して間もない方は、全期間固定金利の借り入れを検討してみてはいかがでしょうか。
全期間固定金利のデメリット
全期間固定金利には、以下2つのデメリットがあります。
- 借入当初の金利が他の金利タイプよりも高い
- 他の金利タイプよりも返済額が高くなる恐れがある
全期間固定金利は、返済期間中に金利が変動するリスクがないぶん、借入当初の金利が変動金利や固定期間選択型よりも高く設定されています。借入当初の返済額は、他の金利タイプよりも高くなるため、家計を圧迫するリスクが高い点に注意しましょう。
また、返済期間中に市場の金利の変動幅や変動したタイミングによっては、全期間固定金利の返済総額がもっとも高くなる恐れがあります。
代表的な全期間固定金利「フラット35」の特徴や金利の推移
全期間固定金利型には、民間の金融機関が独自で取り扱うものの他に、住宅金融支援機構と金融機関が共同で取り扱う「フラット35」があります。
フラット35は、取り扱う金融機関によって金利や手数料が異なります。名前が同じでも、内容は異なるため、複数の金融機関を比較して申込先を選びましょう。
フラット35の金利は、融資率によって変わります。融資率とは、建設費や購入価格に対する借入額の割合。たとえば、住宅の購入価格が3,000万円、借入額が2,400万円の場合、融資率は2,400万円÷3,000万円=80%です。
融資率 | 金利 |
9割以下 | 年1.300%~年2.060% |
9割超 | 年1.560%~年2.320% |
※出典:住宅金融支援機構
※上記は2010年10月現在の新機構団信付きフラット35の借入金利
※金利は申し込む金融機関によって異なります
またフラット35は、以下のように返済期間によっても金利が異なります。
返済期間 | 金利 |
15年~20年 | 年1.210%~年1.970% |
21年~35年 | 年1.300%~年2.060% |
※出典:住宅金融支援機構
※上記は2020年10月現在の新機構団信付きフラット35の借入金利
※金利は申し込む金融機関によって異なります
なお、フラット35は、2017年10月1日から、団体信用生命保険(新機構団信)が自動で付帯されています。
団体信用生命保険とは、借り入れた人が死亡または所定の身体障害状態となった場合に、保険金でローンが完済される保険
新機構団信に加入する際は、健康状態の告知が必要です。ご自身の健康状態に不安がある場合は、新機構団信に加入しない選択もできます。
もし新機構団信に加入しない場合、フラット35の借入金利から0.2%が差し引かれます。
フラット35の金利引き下げ制度
フラット35は、所定の条件を満たすと、以下のように金利が引き下げられます。
特徴 | 引下げ幅 | 引下げ期間 | |
【フラット35】S | 耐震性能やバリアフリー性能などの高性能な物件を購入した場合に金利が引き下げられる | 0.25% | Aプラン:5年 Bプラン:10年 |
【フラット35】子育て支援型 | 子育て支援に積極的な地方公共団体でマイホームした取得し財政的支援を受けた場合に金利が引き下げられる | 0.25% | 5年 |
【フラット35】地域活性化型 | 地域活性化に積極的な地方公共団体へUターンやIターンなどをして住宅を購入し財政的支援を受けると金利が引き下げられる | 0.25% | 5年 |
【フラット35】リノベ | 中古住宅を購入し所定の性能向上リフォームを行った場合に金利が引き下げられる | 0.5% | Aプラン:5年 Bプラン:10年 |
たとえばフラット35の借入金利が1.3%、取得した住宅がフラット35Sの金利Aプランが適用される技術基準を満たしている場合、借入当初10年間の金利が1.05%に引き下げられます。
フラット35の金利の推移
フラット35の金利は、以下のように毎月細かく変動しながらも、全体的には低下傾向にあります。
※出典:ARUHI
全期間固定金利は、「新発10年物国債」の金利を指標に決められています。
新発10年物国債は、株式と同じく市場で取引されています。投資家が予想する将来の物価や金利によって、新発10年物国債の金利は日々上下しているため、全期間固定金利は毎月見直される場合が多いです。
住宅ローン金利の値は、融資の実行時に決まります。住宅の売買契約時と融資の実行時では、全期間固定金利がわずかに変化する可能性を想定して資金計画を立てましょう。
住宅ローン金利は複数の返済シミュレーションを比較して選ぶ
全期間固定金利は、借入当初の金利が変動金利や固定期間選択型よりも高いため、返済負担が増えたとしても、金利を固定した方が安心できるのかを考えることが大切です。
仮に、借入額4,000万円、返済期間35年(元利均等方式)の住宅ローンを借り入れたとしましょう。全期間固定金利(1.3%)で借り入れた場合と、変動金利(0.41%)で借り入れた場合で、以下のように毎月の返済額は約1.6万円、返済総額は約683万円も変わります。
固定金利(1.3%) | 変動金利(0.41%) | 差 | |
毎月の返済額 | 118,593円 | 102,251円 | 16,342円 |
返済総額 | 49,809,007円 | 42,945,439円 | 6,863,568円 |
もし変動金利が、10年ごとに金利が1%ずつ上昇し、最終的に3.41%となった場合、返済総額は48,607,442円です。よって、返済途中で金利が上昇しても全期間固定金利の方が、返済総額は高くなります。
住宅ローンの返済額に占める利息額は、前回の返済残高に金利をかけて計算します。借入時の金利が高いほど、利息負担が増えて返済総額が高くなるのです。
返済シミュレーションを比較すると、「この返済額の差なら固定金利の方が安心だ」「返済額がこんなに違うのであれば変動金利にしておこう」といった判断ができます。
まとめ:低金利だからといって全期間固定金利が正解とは限らない
全期間固定金利は、返済終了までの金利が固定されるため、毎月の返済額や返済総額が借入時に確定します。全期間固定金利を選ぶと金利上昇により、返済額の増加に不安をかかることはありません。
一方で全期間固定金利は、借入時の金利が他の金利タイプよりも高い点に要注意。返済シミュレーションで、全期間固定金利と他の金利タイプの返済負担の差をよく確認して選びましょう。
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