【FP解説】住宅ローンを組んだら生命保険を解約せずにまずは「見直し」を!

住宅ローンを組んだ人のほとんどが、団体信用生命保険に加入します。

団体信用生命保険(以下、団信)とは、返済途中に債務者に万一のことがあったとき、保険金によって住宅ローンが完済される保険です。

団信に加入すると、「生命保険に加入する必要はない」と考えている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、団信に加入したからといって生命保険が不要になるわけではないため、安易に解約しないように注意が必要です。

本記事では、住宅ローンを組んだあとも生命保険が必要な理由や保障の見直し方を、わかりやすく解説していきます。

この記事でわかること
  • 住宅ローンを組んでも生命保険が不要とはいえない理由
  • 必要保障額の計算方法
  • 住宅ローンを組むと生命保険の見直しが必要な理由
執筆者 丹拓也
執筆者 丹拓也株式会社イエツグ代表取締役
不動産業界の活性化・透明化を目指し、2018年仲介手数料定額制の不動産会社「イエツグ」を設立。お客様の「心底信頼し合えるパートナー」になることを目標に、良質なサービスと情報を提供している。
保有資格:宅地建物取引士・2級ファイナンシャルプランナー技能士・住宅ローンアドバイザー・既存住宅アドバイザー・防災士

住宅ローンを組んでも安易に生命保険を解約してはいけない

住宅ローンを組んでも生命保険が不要とは言い切れない理由は、団信でカバーできているのが万一の場合の住居費のみだからです。

団信の保険金は、住宅ローンの残債と同じ金額です。どのタイミングで万一のことがあっても、残債以上の保険金が支払われることはありません。

住宅ローンを返済するのは、世帯主である場合が多いです。世帯主が万一の場合も、残された家族は引き続き生活をしていかなければなりません。団信でカバーできる住居費以外にも、食費や光熱費、通信費などの生活費がかかります

また住宅の購入を検討している世帯には、小さな子どもがいることも珍しくありません。子どもの教育費は、生涯で1,000万〜2,500万円といわれています。

戸建て住宅を購入した場合は、将来的にリフォーム費用が必要になる可能性があります。マンションでは、団信によって返済が免除されたあとも管理費や修繕積立金などの支払いが必要です。

このように世帯主が万一の場合、住居費以外にも遺族の生活費や子どもの教育費などの費用がかかります。団信に加入しているだけでは、万一が起こったあとの支出に対応できないことがあるため、生命保険に別途加入しておく必要があるのです

必要保障額の計算方法

では、生命保険に加入する場合、保障額はいくらに設定すればよいのでしょうか?ここでは、保険金額を決めるときの基準となる必要保障額の計算方法を解説します。

必要保障額は、万一のことが起こったあとの支出から収入を差し引いて計算します。

支出 収入
・遺族の生活費
・子どもの教育費、保育費
・子どもの結婚資金
・住居費用(家賃、管理費、修繕積立金)
・葬儀費用やお墓代、遺品の整理費用
・予備費(想定外の支出)
・遺族年金(遺族基礎年金・遺族厚生年金)
・死亡退職金
・弔慰金
・自己資産(預貯金などの金融資産)
・配偶者の労働収入
・配偶者の退職金

残された家族(遺族)の生活費は、末の子どもが独立するまでの生活費と、独立後に配偶者が平均寿命をむかえるまでの生活費を分けて計算します。末の子どもが独立するまでの生活費は、現在の生活費の70%、独立したあとは現在の50%で計算するのが一般的です。

遺族年金とは、公的年金に加入している人が死亡した場合、所定の要件を満たす配偶者や子どもに対して国から支払われる年金です。

自営業のような国民年金のみに加入している人が亡くなると、遺族基礎年金が支給されます。会社員のような厚生年金に加入している人が亡くなると、遺族は遺族基礎年金と遺族厚生年金の受給が可能です。

死亡退職金や弔慰金は、亡くなった人が働いていた会社から支払われる金銭です。制度の有無や支給額は、企業によって異なります。

ここで、以下のケースで夫が亡くなった場合の必要保障額を計算します。

  • 家族構成:夫(31歳、妻30歳、子ども0歳)
  • 夫の職業:会社員(年収約400万円)
  • 妻の職業:契約社員(年収約240万円)
  • 夫婦ともに23歳から働き始め現在まで厚生年金に加入している
  • 妻は夫の死亡後も現在の年収で60歳まで働き続ける
  • 現在の生活費:33.5万円

夫が万一の場合の、支出と収入は以下の通りです。

支出見込額 収入見込額
遺族の生活費 1億3,700万円 遺族年金の受給額 8,000万円
子どもの教育費、保育費 2,200万円 死亡退職金・弔慰金 300万円
子どもの結婚資金 300万円 自己資産 500万円
住居費用 4,000万円 配偶者の労働収入 7,000万円
葬儀費用やお墓代など 450万円
予備費 300万円
合計 2億950万円 合計 1億5,800万円

上記のケースでは、万一の場合の支出合計2億950万円から、収入合計1億5,800万円を引いた、5,150万円が必要保障額です。

もし、住宅を購入し団信に加入したことで、万一のときの住居費用が1,200万円に減った場合、必要保障額は5,150万円-(4,000万円-1,200万円)=2,350万円。よって団信に加入しても、2,350万円の死亡保障に加入する必要があります

団信にがんや三大疾病などの保障が付いていても民間の保険が不要とは限らない

団信は、死亡・高度障害だけでなく、がんや三大疾病(がん・心筋梗塞・脳卒中)を保障するものもあります。

仮に、がん保障が付いた団信に加入したとしても、がん保険や医療保険が不要となるわけではありません。

たとえば、がん保障が付帯された団信でカバーできるのは、がんと診断された場合の住居費のみご自身の貯蓄で、医療費の自己負担や収入の減少に対処できない場合は、がん保険や医療保険に加入して備えなければなりません

住宅ローンを組むときは生命保険の「見直し」が必要

住宅ローンを組んで団信に加入すると、万一の場合の住居費用を生命保険で備える必要がなくなります。そのため団信に加入する場合は、生命保険の見直しが必要です。

たとえば団信に加入したことで、必要保障額が4,500万円から2,000万円に減った場合死亡保障も2,500万円減らさなければなりません。団信に加入したにもかかわらず生命保険を見直していないと、保障が過剰になり余分の保険料を支払ってしまう恐れがあります

生命保険の見直しによって毎月の保険料負担が減ると、住宅購入後の家計に余裕が生まれて生活が楽になるでしょう。見直しによって住宅ローンを返済できる目処が立ち、マイホームの購入が可能になることも珍しくありません。

また「フラット35」であれば、金利を0.2%差し引くことで新機構団信を外して借り入れられます。新機構団信よりも民間の生命保険に加入したほうが、保険料を安く抑えられる場合があるため、あえて団信に加入しないのも方法の1つです。

以上の点から、住宅を購入するときは、住宅ローンや団信を踏まえて加入中の生命保険を見直しましょう。

必要な保障は変わり続ける

住宅の購入時に生命保険を見直したとしても、保障内容は定期的に見直していかなければなりません。時間の経過とともに、必要な保障額が変わるためです。

たとえば、子どもが3歳のときと16歳のときでは、遺族の必要生活費が異なります。子どもの成長に合わせて、死亡保障額を減額するのが理想です。

保険料負担が家計を圧迫するリスクを減らすためにも、子どもの進学や独立、ご自身の退職などのライフイベントごとに、保障内容を適切に見直しましょう

まとめ:住宅ローンを組んだ場合の生命保険の解約や見直しはFPに相談を

団信でカバーできるのは、借り入れた人が万一の場合の住居費のみです。残された家族の生活費や子どもの教育費などに備えるためには、生命保険に加入する必要があります

必要保障額は、遺族の生活費や子どもの教育費といった支出から、遺族年金や配偶者の収入などを差し引いて算出します。必要保障額を正確に計算して生命保険に加入することで、保険料負担が家計を圧迫せずに済むはずです。

とはいえ、専門的な知識がない方にとって、必要保障額の計算は難しいでしょう。住宅ローンを組んだあとの生命保険の見直し方がわからない場合は、FP(ファイナンシャルプランナー)に相談してみてはいかがでしょうか。

弊社イエツグには、FPが在籍しており、あなたの必要保障額を正確に計算いたします。またキャッシュフロー表を無料で作成いたしますので、住宅を購入するタイミングや将来の必要貯蓄額も把握しやすいです。

住宅を購入したあとに、金銭的な心配をしたくない方は、ぜひ弊社イエツグのFPにご相談ください。

イエツグは、住宅とともに想いを”人から人に継ぐ”という願いから付けた社名です。仲介手数料を格安・定額にすることで、節約できた費用を住宅の質を向上させるために使っていただきたいと考えております。住まいを”継ぐ”には、耐震性や価値を向上することが不可欠だと思うからです。 イエツグ代表の私、丹は、元消防士。東日本大震災で多くの家屋が倒壊し、大切なものを失った方々を目の当たりにしたことにより、既存住宅の価値を上げ、良質な住宅を流通させることがこの国の急務なのではないかと考えるようになりました。小さな会社ではありますが、社員一同、同じ志を持って対応させていただいております。ぜひ一度ご相談ください。
監修者 品木彰
監修者 小林だいさく金融ライター、ファイナンシャルプランナー。
大手保険会社で培った知識と経験から、保険、不動産、税金、住宅ローンなど幅広いジャンルの記事を執筆・監修。

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