住宅ローン控除とは、ローンを組んでマイホームを購入した際に適用できる特例で、原則的に10年間という長期にわたり所得税や住民税から控除されます。
住宅ローン控除における注意点は、全ての中古物件が控除を受けられるわけではないということ。一定の築年数を超えた中古物件は、住宅ローン控除適用に必要な書類の申請が必要です。
本記事では、住宅ローン控除にかかわる以下3つの疑問をすっきり解説いたします。
- 住宅ローン控除とは?
- 住宅ローン控除の適用要件って?
- 適用要件を満たさない中古物件でも控除を受ける方法とは?
不動産業界の活性化・透明化を目指し、2018年仲介手数料定額制の不動産会社「イエツグ」を設立。お客様の「心底信頼し合えるパートナー」になることを目標に、良質なサービスと情報を提供している。
保有資格:宅地建物取引士・2級ファイナンシャルプランナー技能士・住宅ローンアドバイザー・既存住宅アドバイザー・防災士
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)とは?
住宅ローン控除(正式名称:住宅借入金等特別控除)とは、住宅ローンの年末残高に応じて計算された金額を、居住開始した年分以後、毎年各年分の所得税額から控除する特例です。
所得税から控除しきれない分は、住民税からも一部控除されます。
住宅ローン控除の適用期間は原則10年間。控除率は1%。
住宅ローン控除の適用期間は、10年。控除される金額は、住宅ローンの年末残高の1%が原則です。
ただし、以下の表のように、令和2(2020)年末までに入居した場合には、控除期間および控除額が原則とは異なることがあります。
(出典:国土交通省)
住宅ローン控除は所得税から直接控除される
所得税の控除には、『所得控除』と『税額控除』の2種類あります。住宅ローン控除は『税額控除』です。
所得控除は、所得金額から差し引く控除で、医療費控除や扶養控除などが該当します。ただ所得税は、所得控除を差し引いた後の金額に対し税率を乗じますので、「所得控除額=減額する所得税」ではありません。
一方、税額控除は、本来納める所得税の金額から直接控除する制度です。
住宅ローン控除額が20万円であれば所得税は20万円減額するので、同じ20万円の控除でも、所得控除よりも税額控除(住宅ローン控除)の方が節税効果は高いということになります。
新築を購入する場合の住宅ローン控除の要件
住宅ローン控除を適用するには、各種要件を満たす必要があります。
新築住宅を購入した場合の要件は、次の5つです。
- 居住
- 所得金額
- 建物床面積
- ローン返済期間
- 住宅特例の併用適用
①特例適用する物件に住んでいること
住宅ローン控除は、新築または取得の日から6か月以内に自らが居住し、適用を受ける各年の12月31日まで引き続いて住んでいることが必要です。
住宅を購入しただけでは、特例は適用できません。そして「自己居住用」ということですから、複数の物件を所有している人でも適用できる物件は1つのみとなります。
また住宅ローン控除の判定は毎年行いますので、特例を適用した翌年以降に居住しなくなったくなった場合には、その時点で特例は適用できなくなります。
②合計所得金額が3,000万円以下であること
住宅ローン控除を適用する年において、合計所得金額が3,000万円を超えた場合には特例は適用できません。
所得金額3,000万円は高額ですが、今まで住んでいたい物件や相続不動産を処分するタイミングが重なると、上限金額を超える可能性があるのでご注意ください。
③建物床面積50㎡以上かつ居住用として利用している
住宅ローン控除は、建物の床面積が50㎡以上であり、その床面積の2分の1以上を主に自己の居住用として利用している必要があります。
建物の床面積は、登記上に記載されている面積を確認してください。
④返済期間が10年以上のローンで対象物件を購入している
住宅ローン控除は、ローンを組んで住宅を購入した人が対象であり、ローンの返済期間は10年以上でなければいけません。
また借入先は金融機関などに限定され、親族や知人からのお金を借りて物件を購入しても住宅ローン控除は適用できません。
⑤前後2年以内の年に居住用不動産に対する特例を適用していない
住宅ローン控除を適用する年と、その前後の2年(合計5年間)の期間に、居住用不動産を売却した際の特例を適用している場合には、住宅ローン控除は適用できません。
居住用不動産の特例で有名なのが、3,000万円控除の特例です。
今まで住んでいた自宅を売却し、新しく住宅を購入する場合には、3,000万円控除の特例と住宅ローン控除の特例の、どちらかしか適用できません。
中古物件を購入する場合の住宅ローン控除の要件
中古物件を購入した場合でも、住宅ローン控除は適用できます。
ただし、基本的な要件は新築物件を購入した場合と同じですが、住宅ローン控除の適用要件の1つとして建築年数がありますのでご注意ください。
建築年数が20年あるいは25年以内の物件であること
中古物件を購入する際、住宅ローン控除適用において最も注意すべきは建築年数です。
建築されてから購入するまでの期間は、木造が20年、マンションなど耐火建築物の場合には25年以内であることが要件となります。
耐火建築物とは、鉄筋コンクリートや鉄骨鉄筋コンクリート造のものをいい、木造や軽量鉄骨造の建物は該当しません。
建築年数を超えている場合は証明書が必要
建築年数が20年(木造)もしくは25年(マンションなど)を超えていても、以下いずれかの物件に該当すれば、住宅ローン控除は適用できます。
- 耐震基準などを満たした物件
- 購入時に耐震工事の申請を行い、居住開始するまでに耐震工事が完了している物件
上記を満たしている証明として、以下いずれかの書類が必要になります。
- 耐震基準適合証明書
- 建設住宅性能評価書
- 既存住宅売買瑕疵(かし)保険の付帯証明書
また既存住宅瑕疵保険については、こちらの記事をご参照ください。
住宅ローン控除についてよくある質問にお答えしていきます!
最後に、住宅ローン控除を適用する際に、よくある質問にお答えしていきます。
Q.住宅ローン控除の申請で必要になる書類は?
A.住宅ローン控除は、確定申告で特例適用の申請を行います。
必要書類は下記の通りで、一定の築年数を経過した中古物件を購入する際には、用意する書類が増えますので、ご注意ください。
<住宅ローン控除を適用する際に用意する書類>
・住宅借入金等特別控除額の計算明細書
・住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書
・対象物件の登記事項証明書
・売買契約書の写し等で、対象物件の取得年月日、取得対価の額、家屋の床面積が50㎡であることが確認できる書類
・対象物件の建築年数が20年(マンションなどの場合は25年)を超えている場合には、いずれかの書類
①耐震基準適合証明書
②建設住宅性能評価書の写し
③既存住宅売買瑕疵担保責任保険契約
・対象物件の建築年数が20年(マンションなどの場合は25年)を超えている場合で、取得の日までに耐震改修を行うことについて申請をし、居住時点で耐震改修工事が完了していることを証する、いずれかの書類
①建築物の耐震改修計画の認定申請書の写しおよび、耐震基準適合証明書
②耐震基準適合証明申請書の写しおよび、耐震基準適合証明書
③建設住宅性能評価申請書の写しおよび、建設住宅性能評価書の写し
④既存住宅売買瑕疵担保責任保険契約の申込書の写しおよび、既存住宅売買瑕疵担保責任保険契約が締結されていることを証する書類
⑤請負契約書の写し
出典:国税庁
Q.毎年、住宅ローンの申告手続きが必要なの?
A.住宅ローン控除を適用する場合には、居住開始した年分の確定申告が必要です。
2年目以降住宅ローン控除を適用する場合、会社員・公務員の方については、年末調整で手続きできます。
(確定申告を行う人は、申告書に住宅ローン控除適用の内容を記載する必要があります。)
Q.ローンを完済した場合、住宅ローン控除はどうなるのか?
A.住宅ローン控除は、毎年の年末ローン残高の金額に基づき計算します。
そのため住宅ローンが適用できる年数が残っている状態でも、ローンの返済が完了した時点で特例は適用できなくなります。
Q.不動産業者から購入した中古物件であれば住宅ローン控除は適用できるのか?
建築年数が経過した中古物件の場合、耐震基準に適合した物件のみが特例の対象です。
耐震基準に適合した物件は、購入前に検査が完了していることが前提であり、耐震基準の検査を行っていない物件を購入すると、住宅ローン控除は適用できません。
(購入時に耐震基準の申請をしている場合を除く)
不動産業者が必ずしも住宅ローン控除の適用について言及することはありませんので、業者を選ぶことも重要です。
まとめ:住宅ローン控除とは、全ての物件に適用となる特例ではない
住宅ローン控除の適用時にチェックするポイントは、以下の通りです。
- 居住の有無
- 合計所得金額
- 建物床面積の広さ
- 住宅ローンの返済期間
- 住宅特例の併用適用
- 中古物件は築年数
- 築年数の要件を満たしていない中古物件は耐震基準等の証明書の有無
これらのチェックポイントの中でとくに気を付けるべきは、中古物件の築年数と購入する際の耐震基準等の証明書の有無。どんなに気に入った物件でも、木造であれば築20年、マンションなど非木造構造であれば築25年以上の物件で、かつ耐震基準等を証明できない場合には、住宅ローン控除は受けられません。
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