不動産売買の手続きには多くの書類があり、その数だけハンコを押す必要があります。しかし10月23日に政府が重要事項説明書を電子化する方針を発表。今後不動産取引における脱ハンコ化は加速していくでしょう。
結論:IT重説対応物件とは、物件だけで決まるものではなく、宅建業者の対応や取引当事者の合意、通信環境などを確認したうえで、オンラインの重要事項説明を利用できる不動産取引です。
「対応物件」と書いてある家を探すだけでなく、仲介会社に「売買のIT重説に対応していますか」「重要事項説明書を電子で受け取れますか」と確認するのが実務上の近道です。IT重説と書面の電子化は別の手続きなので、全部オンラインで完了するとは限りません。
国土交通省のIT重説・書面電子化の実施マニュアルも、取引前の確認材料になります。
重要事項説明書への押印が不要となることで、不動産売買はどう変わっていくのでしょうか。今回は重要事項説明書の押印不要化の影響と、押印や実印が必要な不動産売買手続きについて解説します。
- 重要事項説明書とは
- 不動産売買で押印が必要な書類
- 不動産売買で実印が必要な場面
いよいよ不動産業界にも脱ハンコの波がやってくるよ!
ところで重要事項説明書って何…?
目次
脱ハンコ化が進む不動産売買の「重要事項説明書」とは

重要事項説明の役割
重要事項説明書とは、敷地や建物の状態、法令による制限など、売買・賃貸を行う不動産に関する重要事項を記載する書類です。
不動産の賃貸・売買手続きの際、仲介業者は関係者に対し、宅地建物取引士による口頭説明を行う義務があります。
重要事項説明書の押印は一律ではない
「関係者全員の押印が必要」と一律に決めつけるのは、2026年時点の実務を説明する表現として正確ではありません。重要事項説明の内容、交付する書面の電子化、売買契約書への署名・押印は、それぞれ分けて確認する必要があります。
重要事項説明書などの書面は、一定の条件と相手方の承諾などを満たせば、電磁的方法で提供できる場合があります。一方、IT重説は宅建士がオンラインで説明する方法で、書面電子化と同じ意味ではありません。
売買契約の署名・押印、本人確認、住宅ローン、決済・登記で必要な対応は、契約当事者、仲介会社、司法書士、金融機関の運用によって変わります。実際の取引では、どの書類を電子で受け取れるか、紙や押印が残るかを個別に確認してください。
売買でも「IT重説」が利用できる

売買でも、テレビ会議などを使って宅建士から重要事項説明を受けるIT重説を利用できます。利用できるかどうかは、物件だけで決まるものではなく、仲介会社の対応、売主・買主の合意、通信環境、本人確認、説明に必要な資料の準備状況などを確認して判断します。
また、IT重説と書面の電子化は別の手続きです。オンラインで説明を受けられても書面が紙で交付されることがありますし、書面を電子で受け取れても説明自体は対面となる場合があります。ここは「全部オンラインで完了」と早合点しない方が、決済前に慌てずに済みます。
- 重要事項説明をオンラインで実施できるか
- 重要事項説明書などを電子で受け取れるか、承諾や保存方法はどうするか
- 売買契約、融資、本人確認、登記で紙や押印が残る書類は何か
脱ハンコは進んでいますが、書類や押印が残る場面もあります。
どんな書類にハンコを押すか復習しておこう!
不動産売買で押印が必要な書類

ここでは、紙と押印を前提に説明されていた時期の代表例を整理します。2022年以降は重要事項説明書などの書面を電磁的方法で提供できる制度も整備されているため、以下の書類が現在もすべて同じ形式で必要とは限りません。契約の進め方と関係者の運用を確認してください。
なお、効力の上ではインク付きのゴム印(シヤチハタ)も有効です。しかしシヤチハタのインクは時間経過で消えやすく、コピー時に印影が薄くなるため、多くの不動産会社では使用不可としています。
売買契約書
不動産売買における取引内容を明記した書類です。
物件本体や備品・付帯設備の情報に加え、代金の授受や契約解除の詳細な条件など、権利に関する取り決めも多く含まれています。
署名・押印の方法や、実印・印鑑証明書が必要かどうかは、契約条項、本人確認、金融機関や司法書士の手続きなどによって異なります。効力や必要書類を一律に判断せず、契約前に仲介会社・金融機関・司法書士へ確認しましょう。
重要事項説明書
敷地や建物がどのような状態か、法令によりどんな制限を受けているかなど、不動産を賃貸・売買する際に説明を受ける重要事項が記載されている書類です。
媒介契約書
不動産会社と売主が媒介契約を結ぶ際に必要な書類です。不動産会社が行う業務や売買にともなう義務、物件の売り出し価格や仲介手数料など、依頼する仲介に関する条件が細かに明記されています。
その他
押印必須とされる3種類の書類のほか、不動産会社によっては以下の書類に押印が求められます。
- 物件状況等報告書
- 付帯設備表
- 資金計画書
- 個人情報取扱同意書 など
なお、これらは手続き上必須ではありませんが、不動産会社側からではなく、売主・買主から提出を要求される場合もあります。
不動産取引はとっても大きな買い物。
安全に取引するために、実印が必要な場面もあるんだ。
不動産売買で実印が必要な場面

これまで紹介してきた書類とは異なり、次の2つの手続きには「実印」が必要です。
実印として使用する印鑑は市区町村に登録が必要です。市区町村は正式にその印鑑が登録されていると証明する「印鑑証明書」を発行し、捺印がたしかに本人の意思によって行われたと証明します。
不動産登記
不動産物件の名義を売主から買主に変更する「所有権移転登記」を行う際、売主の承諾の上で不動産物件が譲渡されていると法務局が判断するため、実印による意思表示が必須とされています。
実印の捺印は登記の目的を証明する「登記原因証明情報」、移転登記手続きを司法書士に委任するための「委任状」に必要です。またそれぞれに捺印する際には、一緒に印鑑証明書を提出する必要があります。
金銭消費貸借契約
銀行などの金融機関が、買主へ住宅ローンなどの融資を行う際には、購入する不動産を担保とする「抵当権設定登記」が必要です。
抵当権は悪用されると、簡単に不動産を失ってしまいます。そのため法務局が買主の承諾の上で抵当権が設定されているか確認できるよう、実印での捺印が要求されます。
なお、抵当権設定登記が正常に行われないと、融資の不成立や無担保での融資実行といった、重大な問題が発生しかねません。そのため万が一にも手続きを失敗しないよう、司法書士への委任は必須です。
まとめ:不動産売買は今後も脱ハンコ化が加速します
近年ではネット銀行を中心に、金銭消費貸借契約の電子化が整備。手続きがネット上で完結するようになっており、メガバンクも追随する動きを見せています。
今後売買契約書も電子化が進めば、押印のみならず収入印紙も不要となる日がくるかもしれません。
弊社イエツグは、売買におけるIT重説の社会実験に実験開始当初から参加。IT重説に関する豊富な経験を活かし、今後脱ハンコ化が進んでも、どこよりもスムーズに対応できると自負しております。
オンラインを活用した不動産売買契約にご興味がありましたら、ぜひイエツグまでご相談ください。
【2026年補足】脱ハンコ・IT重説・電子契約はどこまで進んだ?
この記事を書いた当時と比べると、不動産売買のオンライン化はかなり進みました。今はIT重説、書面の電子化、電子契約を組み合わせた取引が現実的になっています。ただし、何でもかんでも完全オンラインで終わるわけではありません。脱ハンコは進んでいますが、実務にはまだ紙と確認作業が残る場面があります。
IT重説対応物件とは?売買でもオンライン説明は現実的になっています
IT重説とは、パソコンやスマートフォンなどを使い、宅建士がオンラインで重要事項説明を行う方法です。検索で多い「IT重説対応物件」という言葉は、物件そのものだけでなく、売主側・買主側・仲介会社・必要書類・通信環境・本人確認の準備が整うかで実務上の対応可否が変わります。詳しくはIT重説対応物件の見分け方でも整理しています。
電子契約・電磁的方法による書面交付でオンライン化できる範囲
| 手続き | オンライン化の考え方 | 注意点 |
|---|---|---|
| 重要事項説明 | IT重説としてオンライン説明が可能 | 宅建士証の提示、双方向通信、事前の資料確認など実施条件を満たす必要があります。 |
| 重要事項説明書などの交付 | 相手方の承諾など一定条件のもとで電磁的方法による提供が可能 | 電子データを受け取れる環境、保存できる状態、承諾手続きの確認が必要です。 |
| 売買契約 | 電子契約サービスを使えるケースがあります | 売主・買主・仲介会社・司法書士・金融機関の運用確認が必要です。 |
| 決済・登記 | 一部オンライン化は進むが、実務上は個別確認が必要 | 本人確認、融資実行、登記原因証明情報など、関係者の運用に左右されます。 |
電子契約の細かいメリット・デメリットは、不動産取引の電子契約のメリット・デメリットもあわせて確認してください。
紙や押印が残りやすいケース
- 金融機関の住宅ローン契約や抵当権設定に関する手続き
- 司法書士による本人確認や登記関係書類の確認
- 売主・買主のどちらかが電子契約に慣れていない場合
- 共有者、相続人、代理人など関係者が多い取引
- 電子署名サービスや本人確認方法が取引先の運用に合わない場合
実務メモ:オンライン化の可否は「法律上できるか」と「関係者全員がその運用で進められるか」を分けて考えるのが安全です。ここを一緒にすると、決済前に急に紙が復活します。紙、意外としぶといです。
イエツグでは、遠方の方や忙しい方の不動産売買でも、オンラインで進められる部分と対面・紙が必要な部分を事前に整理します。IT重説の具体的な流れはIT重説のやり方と注意点も参考にしてください。


































不動産業界の活性化・透明化を目指し、2018年仲介手数料定額制の不動産会社「イエツグ」を設立。お客様の「心底信頼し合えるパートナー」になることを目標に、良質なサービスと情報を提供している。
保有資格:宅地建物取引士・2級ファイナンシャルプランナー技能士・賃貸不動産経営管理士・外壁診断士・住宅ローンアドバイザー・既存住宅アドバイザー・防災士