2020年10月の首都圏の中古マンション・中古戸建の成約件数は、過去最高数を記録しました。コロナ禍で一時的に激減した取引数ですが、ここに来て「不動産バブル」の到来ともいえる状況になっています。
本記事では、マーケット情報を速報でお伝えしながら「不動産バブル」が今後も続くのか考察していきます。
- 最新の首都圏中古マンション取引状況
- 最新の首都圏中古戸建取引状況
- 「不動産バブル」は2021年も継続するのか?
【動画目次】
00:00 はじめに
01:12 1.最新の首都圏中古住宅取引状況
04:13 2.今とくに需要の高い不動産とは?
06:04 3.2021年も不動産バブルが継続するのか?
11:51 まとめ
不動産業界の活性化・透明化を目指し、2018年仲介手数料定額制の不動産会社「イエツグ」を設立。お客様の「心底信頼し合えるパートナー」になることを目標に、良質なサービスと情報を提供している。
保有資格:宅地建物取引士・2級ファイナンシャルプランナー技能士・住宅ローンアドバイザー・既存住宅アドバイザー・防災士
目次
不動産バブル?2020年10月首都圏中古住宅の成約数が“爆伸び”
10月の首都圏中古住宅流通は、かつてないほどの活性化を見せました。
中古マンション
まずは、首都圏中古マンションのマーケット速報から見ていきましょう。
成約平米単価
(出典:東日本レインズ)
2020年10月の首都圏中古マンションの成約件数は、前年同月比で「+31.2%」、「3,636件」と大幅増となっています。上記グラフの赤線ですね。かつてないほどの伸び率が見て取れますが、この成約数は10月としてマーケット速報を出している東日本レインズ史上過去最高となっています。
その一方で、「在庫件数」は前年比で「-16.7%」。11カ月連続で前年同月比を下回っています。
在庫件数とは、上記グラフで青線で示されているもので「市場に出ている物件の数」のことです。上記の緑の折れ線グラフ「新規登録数」も、前年を大幅に下回っていることがわかりますね。
需要が“爆伸び”しているにもかかわらず在庫数・新規登録数が少ないということは、需要と供給が需要に傾き始めているということ。すなわち今は、マンションの売り時だといえるのです。
成約平米単価
(出典:東日本レインズ)
続いて上記グラフは、中古マンションの平米単価の推移を表したものです。
中古マンションの平米単価は、6ヶ月連続で上昇中です。10月の平均平米単価は「56.04万円/㎡」で、前年同月比4.8%上昇しています。60㎡のマンションなら、「3,300万円」ほどが中古マンション価格の平均値ということですね。
中古戸建
続いて、首都圏中古戸建の成約件数と成約価格です。
成約件数
(出典:東日本レインズ)
中古戸建の成約件数は、中古マンションを上回る前年同月比「+41.8%」と大幅増となりました。こちらも東日本レインズ発足以降、10月としては過去最高値となっています。
中古マンション同様、成約件数の上昇を後目に、新規登録数と在庫数が下がってきていることがわかりますね。
成約価格
(出典:東日本レインズ)
2020年10月の中古戸建の成約価格は、前年同月比で「-1.2%」とやや落ちています。平均成約価格は、「3,113万円」です。
ただ新規登録物件(緑線)、在庫物件(青線)は上昇傾向にありますので、来月以降は成約価格が上がる可能性もあるでしょう。
withコロナ時代は郊外の中古戸建の成約数が堅調
2020年10月の首都圏の中古住宅の成約数は、まさに「爆伸び」といえるほどです。
(出典:東日本レインズ)
とくにコロナによる緊急事態宣言が明けてから堅調に成約数を伸ばしているのは、中古戸建。10月の成約数をエリア別に前年同月と比較すると、横浜・川崎市は驚きの102.7%増。その他の地域も、首都圏全エリアで25%以上増加しています。
東京多摩地区は前年比、4ヶ月連続で増加、千葉県は5カ月連続で増加と、郊外エリアの戸建て人気が高まっているようです。テレワーク・オンライン授業などの普及により「おうち時間」が増えたことで、広めの一戸建ての需要が伸びていることも起因していると考えられます。
2021年も不動産バブルが続くと考えられる4つの理由
気になるのは、この「不動産バブル」ともいえる現象が2021年も続くのかどうかではないでしょうか?
結論としては、不動産バブルが一定期間、継続する可能性は高いと考えられます。ここからは、その根拠となる4つの理由を解説します。
1.株価が上昇中
上記グラフは、2020年11月10日時点の1年間の日経平均の推移です。11月10日には一時25,000円台まで上昇しましたが、これは実に29年ぶりのことです。
不動産価格は、原則的に株価と連動します。
その要因としては、株価の上昇によって投資家に余力が生じ、不動産の需要が増加するというものです。ただ不動産は株のような流動性はないため、株式から数ヶ月遅れて連動していくと考えられます。
ということはつまり、今の株価の高騰が2021年以降、不動産価格に現れると考えるのが自然ですよね。
2.住宅ローン金利が「史上最低」
そもそも株価が高騰している大きな要因となっているのは、金融緩和です。また、政府や自治体が法人・個人向けに行っている助成金や補助金の存在も大きいでしょう。
金利が低く、元手があれば、資金を株などの投資に回す人が増えます。それと同時に、ローンを使って購入する人がほとんどの不動産の需要が上がるのです。
こちらの記事でも解説していますが、2020年11月現在、各金融機関は住宅ローンの金利水準を“競る”ように引き下げています。昨今では毎月のように金利水準の過去最小値を更新し、変動金利の金利水準にいたっては「底値」ではないかともいわれています。
そしてこの「史上最低」ともいえる金利水準は、2021年以降も継続する可能性が高いといえるでしょう。
その根拠は、金融の引き締めに転じることはしばらくできそうにないということ。金融緩和の目的は、企業や個人の資金調達を楽にし、経済を活性化させることです。株価が高騰しても、不動産バブルが到来しても、やはりコロナが経済に与える影響は深刻だといえます。
(出典:日経新聞)
11月9日の厚生労働省の発表によれば、コロナによる解雇(見込み含む)は7万人を超えています。
要は、この状況下で日銀は金融緩和を続けざるを得ないといえるのです。現に日銀の黒田総裁は「2021年以降も金融緩和を継続する」旨の発言をしており、さらに状況によっては追加の金融緩和措置を講じていくとしています。このことから、2021年以降、住宅ローン金利についても低水準が継続すると見られています。
3.住宅ローン控除が「再延長」する見込み
住宅ローン控除とは、住宅ローンの年末残高の最大1%を所得税・住民税から控除する制度です。
基本的に控除期間は「10年」ですが、2019年の消費税10%への増税の対応策として、控除期間を「13年」に延長する措置が取られました。この特例は、「2020年末まで」の入居という要件があるため間もなく終了する制度です。
ただここに来て、国土交通省と財務省は、2021年度税制改正にこの特例を2年間延長することを盛り込む方向で調整に入っています。
2021年度に住宅ローン控除が適用になる人は、控除期間が10年から13年に延長するということ。適用要件は、「2021年9月まで」に契約して、「2022年末まで」に入居という適用要件で調整が進んでいますので、2021年の不動産流通を後押しすると考えられるのです。
4.「残価設定ローン」が始まる?
政府は2021年にモデル事業を始めるべく、官民で「残価設定ローン」という新たな住宅ローンの開発に乗り出しています。
(出典:日経新聞)
残価設定ローンとは、一般的な住宅ローンとは異なり、借入額と将来の住宅価値の差額のみを返済するという仕組みです。自動車購入時のローンとしては一般的でしたが、資産価値が読みにくい日本の住宅特有の問題から、住宅ローンとしてはあまり普及していませんでした。
ただ近年では長期優良住宅など質の高い住宅の供給が進んでおり、住宅の残価が設定しやすくなったことが新しいローンの仕組み構築の背景となっています。残価設定ローンが普及すれば、これまで住宅が購入できなかった層も不動産を購入しやすくなるはずです。
残価設定ローンの存在もまた、不動産バブルが継続するのではないかと考えられる大きな要因の一つです。
まとめ:withコロナ時代は不動産バブルの兆し
今はすでに、不動産バブルは到来したといえる状況にあります。
ただバブルの背景にあるのは、金融緩和や政府による支援策。実質的にはコロナが経済に与えた影響は計り知れず、何年も不動産バブルが継続するとは限りません。
また不動産バブルが見られるエリアは、局所的になる可能性があります。これから不動産売買をお考えの方は、ご希望・ご所有のエリアの不動産相場価格を注視して売り時・買い時を検討されることをおすすめします。