親から大切な不動産を相続したものの、いざ売却を考えると「税金」という大きな壁が立ちはだかります。
「一体何に、いくら税金がかかるの?」
「手続きを一つ間違えるだけで、何十万円も損をしてしまうのでは…」
その不安、とてもよく分かります。実際に相続不動産の売却では、税金の知識があるかないかで、最終的に手元に残るお金が数百万円単位で変わってしまうことも珍しくありません。
でも、ご安心ください。
この記事では、相続不動産の売却で損をしないために不可欠な税金の知識を、専門家がゼロから徹底的に解説します。この記事で進むべき方向性を確認すれば、あなたは税金の不安から解放されるだけでなく、ご自身の状況にとって最も有利な売却プランを自信を持って描けるようになります。
目次
【全体像】相続不動産の売却でかかる税金は主に4種類
相続した不動産の売却では、いくつかの異なるタイミングで税金が発生します。複雑な計算や特例の話に入る前に、まずは全体像を把握することが重要です。
特に、売却によって利益が出た場合にかかる「譲渡所得税」が、税額が最も大きくなる可能性があり最重要です。しかし、それ以外にも関わる税金があるため、まずは以下の表で全体像をつかみ、手続きの見通しを立てましょう。
税金の種類 | 課税のタイミング | 何に対してかかるか | ポイント |
相続税 | 相続の発生時 | 不動産を含む遺産の総額 | 遺産総額が基礎控除額を超えた場合のみ課税。 |
登録免許税 | 相続登記(名義変更)時 | 不動産の固定資産税評価額 | 売却の前提となる手続きで必須の税金。 |
印紙税 | 不動産売買契約の締結時 | 売買契約書の契約金額 | 契約金額に応じて税額が決まる。 |
譲渡所得税(所得税・住民税) | 不動産を売却した翌年 | 売却による利益(譲渡所得) | この記事で最も重要な税金。利益が出なければ課税されない。 |
税金の全体像を見ると、少し不安に感じるかもしれません。イエツグでは、宅建士やFPといった専門家が、あなたの状況に合わせた最適なプランをご提案します。まずはお気軽にご相談ください。
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最重要!売却益にかかる「譲渡所得税」の仕組みと計算方法
前の章で確認した4種類の税金の中でも、特に税額が大きくなる可能性があり、計算も複雑なのが「譲渡所得税」です。ここからが税金計算の本番です。まずは4つのステップで、この譲渡所得税の仕組みをじっくり見ていきましょう。
ステップ1:譲渡所得を計算する
譲渡所得税は、不動産を売却して得た利益(譲渡所得)に対して課税されます。この譲渡所得は、以下のシンプルな計算式で算出します。
譲渡所得 = 売却価格 – (取得費 + 譲渡費用)
もし計算結果がマイナスになる場合、つまり売却で利益が出ていなければ譲渡所得税はかかりません。まずはこの基本の式を頭に入れておきましょう。
ステップ2:【税額が決まる最重要ポイント】取得費はいくら?
計算式の中でも、税額を左右する最大のポイントが「取得費」です。取得費とは、その不動産を手に入れるためにかかった費用のことで、いわば不動産の「仕入れ値」のようなものです。
相続不動産の場合、この取得費はあなたが支払った金額ではなく、亡くなった方(被相続人)が不動産を購入したときの価格や手数料を引き継ぎます。これは非常に重要な原則です。
しかし、古い不動産で契約書などがなく取得費が不明なケースも少なくありません。その場合は、「売却価格の5%」をみなし取得費として計算するルールがあります。ただし、この5%ルールは税金が非常に高くなる危険な罠でもあるのです。
【簡単シミュレーション】
例えば、親が2,000万円で購入した家をあなたが相続し、5,000万円で売却したとします。
- 取得費が証明できる場合:利益は 5,000万円 – 2,000万円 = 3,000万円
- 取得費不明で5%ルール適用の場合:利益は 5,000万円 – (5,000万円 × 5%) = 4,750万円
このように、課税対象となる利益が1,750万円も増えてしまうのです。だからこそ、取得費の証明は非常に重要になります。
ステップ3:譲渡費用に計上できるものを知る
譲渡費用とは、不動産を売却するために直接かかった経費のことです。具体的には、不動産会社に支払った仲介手数料をはじめ、売買契約書に貼った印紙税、土地の境界を確定させるための測量費などが含まれます。もし、家を解体して更地として売却したのであれば、その解体費用も譲渡費用になります。これらの費用を証明する領収書は、必ず大切に保管しておきましょう。
ステップ4:税率を確認する(長期 vs 短期)
算出した譲渡所得に、決められた税率を掛けて最終的な税額が決まります。この税率は、不動産の所有期間によって天と地ほど変わってきます。
所有期間の区分(売却した年の1月1日時点) | 合計税率 | 内訳(所得税・復興特別所得税・住民税) |
5年超(長期譲渡所得) | 20.315% | 15% + 0.315% + 5% |
5年以下(短期譲渡所得) | 39.63% | 30% + 0.63% + 9% |
繰り返しになりますが、相続不動産の場合、この所有期間はあなたが相続した日からではなく、亡くなった方がその不動産を取得した日から通算して計算されます。このルールは非常に重要なので、絶対に覚えておいてください。
譲渡所得の計算は、不動産売却における税務の核心です。イエツグでは、仲介手数料を定額182,900円(税別)に抑えることで譲渡費用を削減できるだけでなく、提携税理士による確定申告の無料代行サービスもご用意しています。ご自身のケースでの税額が気になる方は、ぜひ一度ご相談ください。
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【節税のキモ】知らないと損!相続不動産売却で使える特例
譲渡所得の計算方法がわかったところで、ここからは税負担を劇的に軽くできる可能性がある、非常に重要な「特例制度」について解説します。これらの特例を知っているかどうかで、手元に残るお金が数百万円単位で変わることもありますので、ご自身の状況と照らし合わせながら読み進めてください。
特例1:取得費加算の特例
この特例は、あなたが不動産を相続した際に「相続税」を納税した場合にのみ使える節税術です。具体的には、あなたが支払った相続税の一部を、前章で解説した不動産の「取得費」に上乗せできる制度です。取得費という経費が増えるため、課税対象となる譲渡所得を圧縮し、結果として税額を減らすことができます。この特例を使うには、相続開始日(被相続人が亡くなった日)から3年10ヶ月以内に不動産を売却する必要があります。配偶者の税額軽減などを使い、最終的な相続税の納税額がゼロになった場合は対象外となるためご注意ください。
特例2:空き家の3,000万円特別控除
亡くなった方が一人で住んでいた実家など、一定の要件を満たす「空き家」を相続して売却した場合に使える、非常に強力な特例です。なんと、譲渡所得から最大で3,000万円もの金額を控除できます。ただし、その適用要件は非常に細かく設定されています。例えば、建物が昭和56年5月31日以前の旧耐震基準で建築されていること、売却価格が1億円以下であること、そして売却前に耐震リフォームを行うか、家を取り壊して更地にすることが求められます。期限もタイトで、相続開始日から3年が経過する年の12月31日までに売却を完了させなければなりません。
【戦略的な判断】「取得費加算」と「空き家特例」、あなたはどちらを選ぶべき?
【超重要ルール】これら2つの特例は、両方の条件を満たしていても同時に使うことはできません。
どちらか一方、ご自身の状況にとって有利な方を選択する必要があります。では、どうやって判断すれば良いのでしょうか?以下の専門家の思考フローに沿って、ご自身の状況を確認してみましょう。
Question 1. 今回の相続で、あなたは相続税を納税しましたか?
いいえ、納税していません(基礎控除内だった等)。
→ その場合、あなたが使える可能性のある特例は「空き家特例」一択です。前述の厳しい適用要件(建物の古さ、耐震改修や取り壊し等)を満たせるか、詳しく確認していきましょう。
はい、納税しました。
→ その場合、あなたは両方の特例を使える可能性があります。次の質問に進んでください。
Question 2. あなたの状況は「空き家特例」の適用要件を満たせそうですか?
いいえ、満たせそうにありません(建物が新しい、親が一人暮らしではなかった等)。
→ その場合、あなたが使える特例は「取得費加算の特例」です。期限内に売却できるよう、計画を進めましょう。
はい、満たせそうです。
→ ここで初めて、どちらの特例が金銭的に得になるかを比較検討します。具体的には、「取得費に加算できる相続税額」と「3,000万円」を天秤にかけ、控除額が大きい方の特例を選択するのが基本的な戦略となります。どちらの金額が大きくなるかは個別の状況によるため、税理士などの専門家に相談して、正確なシミュレーションを行うことを強くお勧めします。
特例の選択は、まさに専門的な判断が求められる領域です。イエツグでは、お客様の状況を丁寧にヒアリングし、提携する税理士と連携して最適な節税プランをご提案します。どちらの特例が有利か、まずはお話をお聞かせください。
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【実践】相続から売却、納税までの5ステップと注意点
税金の知識を身につけたところで、いよいよ実践です。相続が発生してから売却、そして納税を完了するまでの具体的な流れを、5つのステップで解説します。これは、あなたがスムーズに、そして有利に売却を進めるための行動計画です。
ステップ1:遺産分割協議と相続登記【売却のスタートライン】
まず、誰がその不動産を相続するのかを、相続人全員での話し合い(遺産分割協議)で正式に決定します。その上で、不動産の名義を亡くなった方からあなた(相続人)へ変更する「相続登記」を法務局で行います。この名義変更が完了して、初めてあなたは不動産を法的に売却できる立場になります。
【注意点】2024年4月から法律が変わり、相続登記は義務化されました。相続を知った日から3年以内に登記をしないと罰則の対象となる可能性もあります。売却する・しないに関わらず、この手続きは必須のスタートラインです。
ステップ2:不動産会社へ査定依頼【価格の把握と比較】
次に、その不動産がいくらで売れそうか、プロに価値を診断してもらいます。これが「査定」です。
【注意点】査定は1社だけでなく、必ず複数の不動産会社に依頼しましょう。なぜなら、会社によって査定額や売却戦略が異なるからです。複数社を比較することで、あなたの不動産の適正な相場を把握でき、最も信頼できるパートナーを見つけやすくなります。
ステップ3:媒介契約と売却活動【パートナーとの連携】
査定内容や担当者の対応に納得できたら、売却のサポートを正式に依頼する不動産会社と「媒介契約」を結びます。契約後は、不動産会社が広告を出したり、内覧の対応をしたりと、購入希望者を探すための売却活動を本格的に開始します。
ステップ4:売買契約と決済【ゴールまであと少し】
購入希望者が見つかり、価格などの条件がまとまったら、その方と「売買契約」を締結します。そして後日、買主から売買代金の全額を受け取ると同時に、不動産の所有権を完全に買主に移転させます。これで、あなたにとっての売却手続きは完了です。
ステップ5:確定申告【忘れずに行う最後の義務】
売却という大きなイベントが終わっても、まだ最後の重要な手続きが残っています。不動産を売却して利益が出た場合は、売却した年の翌年2月16日から3月15日までの間に、税務署へ確定申告を行わなければなりません。
【最重要注意点】前の章で解説した「取得費加算の特例」や「空き家特例」などを使い、計算上の納税額がゼロになったとしても、その特例の適用を受けるためには確定申告が必須です。これを忘れると、特例が適用されず、後から高額な税金を請求される可能性があるので、絶対に忘れないようにしましょう。
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【ケース別】税金シミュレーションで効果を実感!
これまでの知識をもとに、具体的なモデルケースで税額がどれほど変わるのかを見ていきましょう。ここでは、親から実家を相続したAさんのケースでシミュレーションします。
【Aさんの状況】
親が1,500万円で購入した実家を相続し、このたび4,000万円で売却することになりました。売却にかかる仲介手数料などの譲渡費用は150万円です。今回の相続では相続税を納税しており、計算の結果、取得費に加算できる金額は300万円となりました。また、Aさんの実家は「空き家の3,000万円特別控除」の要件も満たしています。(所有期間は長期譲渡とします)
この条件で、①特例を使わない場合、②取得費加算の特例を使う場合、③空き家特例を使う場合の納税額を比較してみましょう。
① 特例なし | ② 取得費加算の特例 | ③ 空き家特例 | |
譲渡所得の計算 | 4000万 – (1500万 + 150万) = 2,350万円 | 4000万 – (1800万 + 150万) = 2,050万円 | 2350万円 – 3000万円 = 0円 |
納税額 (税率20.315%) | 約477万円 | 約416万円 | 0円 |
節税効果(①との差額) | – | 約61万円お得 | 約477万円お得 |
このシミュレーションから分かること
この結果から、2つの重要なことが分かります。
第一に、特例を知っているか知らないかで、納税額に数百万円という大きな差が生まれるということです。もしAさんが特例の知識なく申告していたら、本来払う必要のなかった約477万円もの税金を納めることになっていました。
第二に、どちらの特例が有利かは、個々の状況によって全く異なるということです。今回は空き家特例が圧倒的に有利でしたが、もし取得費に加算できる相続税額が非常に大きければ、結果は変わっていたかもしれません。だからこそ、ご自身の状況に合った最適な選択をすることが何よりも重要なのです。
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まとめ:専門家への相談が、最適な相続不動産売却への近道
今回は、相続した不動産の売却にまつわる税金について、その全体像から計算方法、そして節税に不可欠な特例制度までを詳しく解説してきました。
売却益にかかる「譲渡所得税」を正しく理解し、ご自身の状況に合わせて「取得費加算の特例」や「空き家の3,000万円特別控除」といった選択肢を比較検討することが、いかに重要であるかを感じていただけたのではないでしょうか。
この記事は、複雑で不安の多い税金の不安をなくすことを目指して作成しました。しかし、全ての不安をなくすには専門家への相談が不可欠です。
特例適用の最終判断や、個別の事情を反映した正確な税額の計算は、やはり税理士などの専門家でなければ難しい領域です。最適な売却戦略を立て、手続きを間違いなく完了させるために、ぜひ一度専門家へ相談してみてください。
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