相続不動産売却の教科書|手続き・税金・注意点を網羅解説!

不動産を相続したものの、利用予定がなく売却を検討する方は少なくありません。しかし、相続から売却までの手続きは多岐にわたり、税金の問題も複雑です。

「何から始めればいいの?」「費用は?税金は?」そんな疑問や不安を抱えていませんか。この記事では、相続した不動産を売却する際の具体的な流れ、必要な書類、かかる税金と節税に役立つ特例、そして注意すべきポイントを網羅的に解説します。最後まで読めば、相続不動産売却の全体像が掴め、安心して手続きを進めるための知識が身につきます。

目次

1. 相続不動産売却の全貌:最初のステップから完了まで

相続した不動産の売却は、通常の不動産売却とは異なり、相続ならではの手続きが加わるため、全体の流れを事前に把握しておくことが非常に大切です。

相続が発生してから実際に不動産を売却し、全ての手続きが完了するまでには、大きく分けて「相続手続き段階」と「売却活動段階」、そして「売却後の手続き段階」があります。ここでは、それぞれの段階でどのようなことを行うのか、全体像を掴んでいきましょう。

1-1. 相続発生〜売却準備:まず何をすべきか?

相続が開始したら、まず行わなければならないのは遺言書の有無の確認です。故人が有効な遺言書を遺していれば、原則としてその内容に従って相続手続きが進められます。遺言書がない場合、または遺言書で指定されていない財産については、法律に基づいて相続人を確定させる必要があります。

これには、故人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本等を取り寄せ、相続関係を明確にする作業が伴います。同時に、相続財産には不動産や預貯金といったプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も含まれるため、財産目録を作成し、相続財産の全体像を正確に把握することが重要です。もしマイナスの財産が多い場合には、相続放棄(相続開始を知った日から3ヶ月以内)や限定承認といった手続きも検討する必要が出てきます。

1-2. 相続人間での取り決め:遺産分割協議の重要性

相続人が複数いる場合、誰がどの財産をどのように相続するのかを話し合う「遺産分割協議」を行います。不動産は現金のように簡単に分割できないため、特に慎重な協議が必要です。協議がまとまったら、その内容を明確にするために「遺産分割協議書」を作成し、相続人全員が署名し実印を押印します。

不動産を売却してその代金を分ける「換価分割」や、特定の相続人が不動産を相続し他の相続人に代償金を支払う「代償分割」、不動産を共有名義にする「共有分割」など、分割方法にはいくつかの選択肢があります。売却を前提とする場合は、後のトラブルを避けるためにも、換価分割を選択しその旨を遺産分割協議書に明記することが一般的です。

1-3. 売却の前提!相続登記(名義変更)は義務です

相続する不動産の名義を、故人から相続人へ変更する手続きを「相続登記」といいます。この相続登記は、不動産を売却するための法的な前提条件です。つまり、故人の名義のままでは不動産を売却できません。

さらに重要な点として、2024年4月1日から相続登記が義務化されました。不動産を相続したことを知った日から3年以内に正当な理由なく相続登記の申請を怠った場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。この義務化は過去の相続にも適用されるため、まだ相続登記が済んでいない不動産がある場合は速やかな対応が必要です。相続登記は、必要書類を揃えて管轄の法務局に申請することで行います。

1-4. いよいよ売却活動へ:不動産会社選びから引渡しまで

相続登記が完了し、不動産の名義が相続人に変更されたら、いよいよ売却活動を開始できます。まずは信頼できる不動産会社を選び、物件の査定を依頼します。複数の会社に査定を依頼し、査定価格だけでなく、販売戦略や担当者の対応などを比較検討して媒介契約を結ぶ不動産会社を決定しましょう。

その後、不動産会社が販売活動を行い、購入希望者が見つかれば価格や条件を交渉し、合意に至れば売買契約を締結します。売買契約後は、買主からの手付金の受領、住宅ローンの本審査(買主側)、そして残代金の決済と物件の引渡しへと進みます。決済時には、司法書士が所有権移転登記の手続きを代行するのが一般的です。

1-5. 売却後の手続き:確定申告を忘れずに

不動産を売却して利益(譲渡所得)が出た場合には、売却した年の翌年に確定申告を行い、所得税や住民税などの税金を納める必要があります。相続した不動産の売却には、税負担を軽減できる特例制度がいくつか用意されています。

これらの特例を適用するためにも確定申告は必須です。確定申告の期間は原則として翌年の2月16日から3月15日までです。必要な書類を準備し、期限内に正しく申告・納税を行いましょう。イエツグでは、この複雑な確定申告の手続きをサポートするサービスもご用意しています。

相続不動産の売却は多くのステップを含みますが、一つずつ確実に進めていくことが大切です。全体像を把握することで、次に何をすべきかが見えやすくなります。
相続不動産の売却に関するご相談や無料査定は、イエツグにお気軽にお問い合わせください:株式会社イエツグ お問い合わせ

2. こんなにたくさん?相続不動産売却に必要な書類一覧と取得方法

相続した不動産を売却する手続きでは、様々な場面で多くの書類が必要となります。書類の準備には時間がかかるものもあるため、何が必要で、どこで取得できるのかを事前に把握しておくことがスムーズな売却活動の鍵となります。大きく分けて「相続登記(名義変更)に必要な書類」と、その後の「不動産売却時に必要な書類」の二段階で準備を進めることになります。ここでは、それぞれの段階で主に必要となる書類を解説します。

2-1. 相続登記(名義変更)に必須の書類:ケース別に解説

不動産の名義を故人から相続人に変更する相続登記は、売却の前提となる重要な手続きです。必要となる書類は、遺言書の有無や遺産分割協議の状況によって異なります。 まず、どのような相続形態であっても共通して必要になることが多いのは、故人(被相続人)の出生から死亡までの連続した戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍です。

これらは故人の本籍地の市区町村役場で取得します。また、故人の住民票の除票または戸籍の附票も必要です。不動産を相続する相続人については、戸籍謄本と住民票、そして固定資産評価証明書が求められます。固定資産評価証明書は、不動産の所在地を管轄する市区町村役場、東京23区の場合は都税事務所で取得できます。 

遺言書に基づいて相続登記を行う場合は、上記の書類に加えて有効な遺言書そのものが必要です。自筆証書遺言の場合は、家庭裁判所による検認済証明書も併せて提出します。 遺産分割協議によって不動産を特定の相続人が取得する場合は、相続人全員の合意内容を記した遺産分割協議書が不可欠です。この遺産分割協議書には、相続人全員が署名し、実印を押印します。

そして、全員分の印鑑証明書(発行後3ヶ月以内が望ましい)も添付する必要があります。 これらの書類に加えて、法務局所定の登記申請書を作成し提出します。登記申請書は法務局のウェブサイトからダウンロード可能です。書類に不備があると手続きが滞るため、慎重に準備を進めましょう。

2-2. 不動産売却時に不動産会社へ提出する書類

相続登記が完了し、いよいよ不動産会社に売却を依頼する段階では、物件の詳細情報を示す書類が必要になります。まず、登記簿謄本または登記事項証明書は、不動産の権利関係を正確に示す公的な書類です。法務局で取得できます。

また、故人がその不動産を購入した際の売買契約書や重要事項説明書があれば、取得費の確認や物件情報の把握に役立ちます。 さらに、登記済権利証(いわゆる「権利証」)または登記識別情報は、不動産の所有者であることを証明する非常に重要な書類です。これらは再発行されないため、紛失した場合は司法書士に相談し、本人確認情報作成制度などの代替手続きが必要になることがあります。 

土地や一戸建ての場合は、土地測量図や境界確認書があると、土地の正確な面積や隣接地との境界が明確になり、買主への説明やトラブル防止に役立ちます。建物の場合は、建築確認済証や検査済証が建物の適法性を示す資料となります。

マンションであれば、管理規約や使用細則、維持費(管理費・修繕積立金)に関する書類が重要です。固定資産税納税通知書や固定資産評価証明書も、税額の目安や評価額を示すために必要です。

2-3. 買主への引渡し時に用意する書類

無事に購入希望者が見つかり売買契約を締結した後、最終的な決済と物件の引渡しの日には、売主としていくつかの書類を用意する必要があります。まず、本人確認書類として運転免許証やマイナンバーカードなどが求められます。

また、実印と、その実印の印鑑証明書(通常は発行後3ヶ月以内のもの)も必要です。 登記上の住所と現住所が異なる場合は、住民票の提出を求められることがあります。売買代金の振込先を確認するために、銀行口座の通帳またはキャッシュカードも持参しましょう。そしてもちろん、物件の鍵や、エアコンなどの付帯設備がある場合はその取扱説明書や保証書なども買主に引き渡します。 

これらの書類は、売買契約締結から引渡しまでの間に不動産会社から指示があるはずですので、早めに準備に取り掛かることがスムーズな取引完了につながります。

相続不動産の売却では、このように多岐にわたる書類の準備が必要です。どの書類がいつまでに必要なのかをリストアップし、計画的に収集を進めることが重要です。


必要書類の準備や手続きについてご不明な点があれば、イエツグがサポートいたします。お気軽にご相談ください:株式会社イエツグ お問い合わせ

3. 相続不動産、どう分ける?主な遺産分割方法とその特徴

相続人が複数いる場合、相続財産の中に不動産が含まれていると、その分け方(遺産分割方法)が大きな課題となることがあります。不動産は現金のように物理的に簡単に分割できないため、相続人間で納得のいく方法を見つけることが円満な相続には不可欠です。

ここでは、相続不動産の代表的な遺産分割方法である「現物分割」「換価分割」「代償分割」「共有分割」の4つの方法について、それぞれの概要、メリット、デメリットを解説します。どの方法がご自身の状況に適しているか考える際の参考にしてください。

3-1. 現物分割:不動産そのものを誰かが引き継ぐ

現物分割とは、個々の相続財産をそのままの形で、特定の相続人が取得する方法です。例えば、長男が実家の土地と建物を相続し、二男が預貯金を相続するといった形です。不動産の場合、その不動産自体を特定の相続人が単独で所有することになります。

 この方法のメリットは、不動産を売却せずにそのままの形で残せる点です。その不動産に住み続けたい相続人がいる場合や、先祖代々の土地として守っていきたい意向がある場合に適しています。また、売却の手間や費用がかからないことも利点と言えるでしょう。 しかし、デメリットとしては、相続財産の価値が均等でない場合に、相続人間で公平な分割が難しくなる点が挙げられます。

例えば、不動産の価値が非常に高く、他の相続財産が少ない場合、不動産を相続した人とそうでない人の間で取得額に大きな差が生じてしまう可能性があります。これを調整するために、代償分割と組み合わせることもあります。

3-2. 換価分割:売却して現金で分ける、最も公平な方法

換価分割とは、相続した不動産を売却して現金化し、その現金を相続人間で合意した割合(例えば法定相続分など)に従って分配する方法です。誰もその不動産を利用する予定がない場合や、相続人間で公平に遺産を分けたい場合に適しています。

 最大のメリットは、各相続人が受け取る金額が明確になり、公平な分割が実現しやすい点です。また、不動産の維持管理費や固定資産税の負担から解放されます。 一方で、デメリットとしては、不動産を売却するための手間と時間がかかる点が挙げられます。不動産会社への仲介依頼、売買契約、登記手続きなどが必要です。

また、必ずしも希望通りの価格やタイミングで売却できるとは限りません。市場の状況によっては、想定よりも低い価格でしか売れない可能性もあります。さらに、売却によって譲渡所得税が発生する場合があることにも注意が必要です。

3-3. 代償分割:不動産取得者が他の相続人へ金銭を支払う

代償分割とは、特定の相続人が不動産を現物で相続する代わりに、他の相続人に対してその不動産の価値に見合う代償金(現金など)を支払う方法です。例えば、実家を長男が相続し、その代わりに長男が他の兄弟に一定額の現金を支払うといったケースです。

 この方法のメリットは、特定の相続人が不動産を取得しつつ、他の相続人との間でもある程度の公平性を保てる点です。事業を引き継ぐために不動産が必要な場合や、その不動産に強い愛着を持つ相続人がいる場合に有効です。

 しかし、デメリットとして最も大きいのは、不動産を取得する相続人に十分な代償金を支払えるだけの資力が必要となる点です。代償金の額は不動産の評価額に基づいて決定されますが、その評価方法や金額について相続人間で合意が得られないとトラブルになる可能性もあります。また、代償金の支払いが一括で難しい場合は、分割払いの合意が必要になることもあります。

3-4. 共有分割:複数人で共有名義にするが、注意が必要

共有分割とは、相続不動産を特定の相続人に分けるのではなく、複数の相続人がそれぞれの持分を決めて共有名義で所有する方法です。例えば、兄弟3人で実家を3分の1ずつの持分で共有するといった形です。 

一見すると公平な分割方法のように思えますが、実際には多くの問題点を抱えています。メリットとしては、不動産を売却せずにひとまず相続手続きを完了できる点が挙げられるかもしれません。 

しかし、デメリットは非常に多く、将来的なトラブルの原因となりやすいです。まず、不動産を売却したり、大規模なリフォームを行ったり、賃貸に出したりする際には、共有者全員の同意が必要となります。一人でも反対すれば実行できません。

また、固定資産税や維持管理費も共有者全員で分担する必要がありますが、誰かが支払いを滞らせると他の共有者に負担がかかります。さらに、共有者の一人が亡くなると、その持分がさらにその相続人に引き継がれ、共有関係がより複雑化していく「鼠算的共有」という問題も生じます。

そのため、共有分割は可能な限り避けるべき分割方法とされています。もし一時的に共有にしたとしても、早期に売却するなどして共有状態を解消することが望ましいでしょう。

どの遺産分割方法を選択するかは、相続人それぞれの意向、不動産の特性、そして将来的な影響を総合的に考慮して決定する必要があります。

特に売却を視野に入れている場合は、換価分割がスムーズなケースが多いですが、他の方法との比較検討も重要です。
遺産分割方法についてお悩みの場合や、相続不動産の売却をスムーズに進めたい方は、イエツグにご相談ください。

専門家と連携し、最適な解決策をご提案します:株式会社イエツグ お問い合わせ

4. 売却の必須手続き!相続登記(名義変更)の全ステップと注意点

相続した不動産を売却するためには、その不動産の名義を故人(被相続人)から相続人へ変更する「相続登記」という手続きが不可欠です。この相続登記が完了していなければ、法的にその不動産を売却することはできません。

さらに、2024年4月1日から相続登記は義務化され、正当な理由なく怠ると過料が科される可能性もあります。ここでは、相続登記の具体的な方法や流れ、そして注意すべき点について詳しく解説します。

4-1. なぜ必要?相続登記が売却の前提となる理由

不動産の所有者は、法務局の登記簿に記録されることで法的に公示されます。故人の名義のままでは、その不動産の真の所有者が誰であるかが第三者からは不明確な状態です。不動産売却は、所有者自身が行うか、または正当な代理人が行う必要があります。

そのため、売却活動を始める前に、まず相続によって不動産の所有権を取得した相続人の名義に登記を変更し、法的に所有者であることを明確にする必要があるのです。 また、相続登記をせずに長期間放置してしまうと、相続関係が複雑化するリスクがあります。

例えば、相続人が亡くなってさらに次の相続が発生すると、関係者が増え、遺産分割協議がまとまりにくくなることがあります。売却を考えているのであれば、できるだけ速やかに相続登記を済ませることが、後のトラブルを避け、スムーズな売却につながります。

4-2. 相続登記、誰の名義にする?3つの主なパターン

相続登記を行う際に、誰の名義にするかは、遺言書の有無や遺産分割協議の結果によって決まります。主なパターンは以下の3つです。

  1. 法定相続分による共有名義:故人に有効な遺言書がなく、相続人間での遺産分割協議もまだまとまっていない場合、民法で定められた法定相続分に従って、相続人全員の共有名義として登記する方法があります。ただし、この状態で不動産を売却するには共有者全員の同意が必要となるため、売却を前提とする場合は最終的な名義としては推奨されにくいです。
  2. 遺言書に基づく単独または共有名義:故人が「長男にこの不動産を相続させる」といった内容の有効な遺言書を遺していれば、その遺言書の内容に従って特定の相続人の単独名義、または遺言で指定された持分での共有名義に登記します。
  3. 遺産分割協議に基づく単独または共有名義:遺言書がない場合や、遺言書とは異なる内容で相続人間が合意した場合は、遺産分割協議を行います。その協議結果(遺産分割協議書に記載)に基づいて、特定の相続人の単独名義にするか、あるいは合意した持分割合で共有名義に登記します。不動産を売却して代金を分ける「換価分割」の場合でも、手続きの便宜上、一旦代表相続人の単独名義にすることがあります。その際は、遺産分割協議書にその旨を明記しておくことが重要です。

どのパターンで登記するかは、相続人全員でよく話し合って決定する必要があります。

4-3. 相続登記の具体的な流れと必要書類

相続登記の手続きは、一般的に以下の流れで進みます。

  1. 必要書類の収集:前章「2-1. 相続登記(名義変更)に必須の書類」で解説した通り、戸籍謄本類、住民票、固定資産評価証明書、遺産分割協議書(または遺言書)、印鑑証明書など、相続の状況に応じた多くの書類を集めます。
  2. 登記申請書の作成:法務局のウェブサイトなどから登記申請書の様式を入手し、必要事項を記入します。不動産の表示や登記の目的、原因、相続人の情報などを正確に記載する必要があります。
  3. 登録免許税の納付:相続登記には登録免許税という税金がかかります。税額は原則として不動産の固定資産税評価額の0.4%です。収入印紙を購入し、登記申請書に貼付して納付します。
  4. 法務局への申請:収集した書類と作成した登記申請書を、不動産の所在地を管轄する法務局に提出します。窓口持参のほか、郵送やオンライン(一定の条件あり)での申請も可能です。
  5. 登記完了・登記識別情報通知書の受領:申請書類に不備がなければ、1週間から2週間程度で登記が完了します。完了すると、法務局から登記識別情報通知書(従来の権利証に代わるもの)が交付されます。これは非常に重要な書類なので、大切に保管してください。

書類の収集や申請書の作成は専門的な知識が必要な場合もあるため、自信がない場合は司法書士などの専門家に依頼することも検討しましょう。

4-4. 相続登記の義務化!期限と過料に注意

これまで任意とされてきた相続登記ですが、2024年4月1日から義務化されました。この改正により、不動産を相続したことを知った日から3年以内に、正当な理由なく相続登記の申請を行わなかった場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。

この義務化は、改正法施行前に発生した相続についても適用され、施行日から3年間の猶予期間が設けられています。 相続登記を長期間放置すると、権利関係が複雑になるだけでなく、売却したいときにすぐに売却できない、あるいは過料の対象となるリスクが生じます。相続が発生したら、できるだけ早く相続登記の手続きに着手することが重要です。

相続登記は、相続不動産を売却するための第一歩であり、法律上の義務でもあります。手続きが複雑で分かりにくいと感じる場合は、専門家の力を借りることも有効な手段です。
イエツグでは、相続登記に関するご相談や、信頼できる司法書士のご紹介も可能です。

お気軽にご相談ください:株式会社イエツグ お問い合わせ

5. 相続不動産売却特有の注意点!知っておくべき7つのポイント

相続した不動産の売却は、通常の不動産売却と比べて特有の注意点がいくつか存在します。これらのポイントを事前に理解しておくことで、予期せぬトラブルを避け、よりスムーズで有利な売却活動を進めることができます。

ここでは、相続不動産を売却する際に特に気をつけるべき7つの重要な注意点を解説します。

5-1. 共有名義での売却は全員の同意が必須

相続不動産が複数の相続人の共有名義になっている場合、その不動産を売却するためには共有者全員の同意が法的に必要となります。

一人でも売却に反対する共有者がいれば、売却手続きを進めることはできません。売却価格、売却のタイミング、不動産会社の選定など、売却に関する全ての条件について共有者間で合意を形成する必要があります。相続人が遠方に住んでいたり、関係性があまり良好でなかったりすると、この合意形成が難航するケースもあります。

そのため、相続登記の段階で、可能であれば売却を前提とした代表相続人の単独名義にしておくか、換価分割する旨を遺産分割協議書に明記しておくことが望ましいです。どうしても共有名義で売却する場合は、事前に全員でしっかりと話し合い、意思統一を図っておくことが不可欠です。

5-2. 換価分割時の「みなし贈与税」に注意

換価分割(不動産を売却して現金を相続人間で分ける方法)を行う際、手続きの便宜上、一旦代表相続人の一人を単独名義にして売却することがあります。

この場合、売却後に他の相続人に代金を分配する際、その分配が贈与とみなされて「みなし贈여税」が課税されるリスクがないか注意が必要です。

このリスクを避けるためには、遺産分割協議書に「不動産を換価し、その売却代金を各相続人が〇〇の割合で取得する」といった具体的な分割方法と分配割合を明確に記載しておくことが非常に重要です。税務署に対して、あくまで遺産分割の一環としての代金分配であることを証明できるようにしておきましょう。

5-3. 税金の特例には期限と条件あり!適用漏れを防ぐ

相続不動産の売却には、税負担を軽減できる特例がいくつか存在します。例えば「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」や「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」などです。

これらの特例を適用できれば大幅な節税につながりますが、それぞれに厳格な適用要件と申告期限、売却期限などが定められています。例えば、空き家特例は原則として相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却する必要があり、取得費加算の特例も相続税の申告期限の翌日以後3年以内の売却が対象です。

これらの期限を過ぎてしまうと特例は適用できません。また、特例の適用を受けるためには確定申告が必須です。どの特例が利用可能か、条件を満たしているか、いつまでに何をすべきかを正確に把握し、適用漏れがないように注意しましょう。

5-4. 取得費・所有期間は故人のものを引き継ぐ

譲渡所得税を計算する際、売却した不動産の「取得費」と「所有期間」は、故人(被相続人)がその不動産を取得した時の金額と日付をそのまま引き継ぎます。

相続人が相続した時点の時価や相続日ではありません。故人がその不動産をいくらで購入したかを示す売買契約書や領収書などが取得費の証明となります。もしこれらの書類が見つからず取得費が不明な場合は、売却価格の5%を概算取得費として計上できますが、実際の取得費よりも低くなることが多く、税負担が増える可能性があります。

できる限り故人の購入時の資料を探し出す努力が必要です。所有期間も同様に、故人の取得日から計算するため、相続後すぐに売却したとしても、故人の所有期間が長ければ長期譲渡所得として低い税率が適用される可能性があります。

5-5. 書類の準備は早め早めに!紛失に注意

相続不動産の売却には、相続関係を証明する戸籍謄本類、遺産分割協議書、登記済権利証(または登記識別情報)、固定資産税評価証明書、売買契約書、領収書など、非常に多くの書類が必要です。これらの書類の中には取得に時間がかかるものや、紛失すると再発行が非常に困難なもの(特に登記済権利証)も含まれます。

売却活動をスムーズに進めるためには、必要書類をリストアップし、できるだけ早い段階から計画的に収集・準備を始めることが重要です。特に登記済権利証を紛失している場合は、司法書士に相談して代替手続き(本人確認情報作成制度など)を行う必要があり、追加の時間と費用がかかるため注意が必要です。

5-6. 信頼できる不動産会社の選定が成功の鍵

相続不動産の売却は、通常の売却に加えて相続に関する法務や税務の知識も求められるため、不動産会社選びは特に慎重に行う必要があります。

相続案件の取り扱い実績が豊富で、相続に詳しい専門家(司法書士、税理士など)との連携がスムーズな不動産会社を選ぶことが、売却成功の大きな鍵となります。査定価格の高さだけでなく、担当者の知識や経験、提案力、そして親身に対応してくれるかどうかも重要な選定基準です。複数の不動産会社に査定を依頼し、サービス内容や担当者を比較検討することをおすすめします。

イエツグでは、相続不動産の売却サポートも得意としており、専門家と連携してお客様をバックアップします。

5-7. 2024年4月からの相続登記義務化を再認識

繰り返しになりますが、2024年4月1日から相続登記が義務化されました。不動産を相続したことを知った日から3年以内に正当な理由なく相続登記を行わない場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。

これは、これから発生する相続だけでなく、過去に発生した相続でまだ登記が未了のものも対象となります(施行日から3年間の猶予期間あり)。売却するしないに関わらず、相続が発生したら速やかに相続登記を行うことが、法的な義務であり、将来のトラブルを未然に防ぐためにも不可欠です。売却を検討しているなら、なおさら早期の登記完了を目指しましょう。

これらの注意点を事前に理解し、対策を講じることで、相続不動産の売却をより円滑に進めることができます。不明な点や不安な点は専門家に相談し、一つ一つ解決していくことが大切です。
相続不動産の売却に関するあらゆるご相談は、イエツグにお任せください。専門的な知識と経験でお客様をサポートいたします:株式会社イエツグ お問い合わせ

6. 相続不動産売却にかかる税金の種類と節税に繋がる特例制度

相続した不動産を売却する際には、通常の不動産売却と同様に税金がかかる可能性があります。しかし、相続特有の税金や、逆に相続だからこそ利用できる税金の特例制度も存在します。

どのような税金が関わってくるのか、そして賢く節税するためにはどのような特例があるのかを事前に理解しておくことは、手元に残る資金を最大化するために非常に重要です。ここでは、相続不動産売却に関連する主な税金と、節税に役立つ特例制度について解説します。

6-1. 相続時にかかる可能性のある税金:相続税

まず、不動産を相続した段階で関わってくるのが「相続税」です。相続税は、亡くなった方(被相続人)から財産を相続した場合に、その相続した財産の総額が一定の基礎控除額を超えるときに課税されます。基礎控除額は「3,000万円 + (600万円 × 法定相続人の数)」で計算されます。例えば、法定相続人が2人の場合、基礎控除額は3,000万円 + (600万円 × 2人) = 4,200万円となります。

相続財産の総額がこの金額以下であれば、相続税の申告も納税も不要です。 相続財産には、不動産のほか、預貯金、株式、生命保険金(一部非課税枠あり)などが含まれます。不動産の評価額は、相続税路線価や固定資産税評価額などを基に算出されます。

相続税が発生する場合は、相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内に税務署へ申告し、納税する必要があります。

6-2. 売却時にかかる主な税金:譲渡所得税・住民税・印紙税など

相続した不動産を実際に売却する際には、主に以下の税金がかかる可能性があります。

  • 譲渡所得税・住民税:不動産を売却して利益(譲渡所得)が出た場合に、その利益に対して課税されます。計算方法は「譲渡所得 = 売却価格 − (取得費 + 譲渡費用)」です。重要なのは、この「取得費」と「所有期間」は、原則として故人がその不動産を取得した時の金額と日付を引き継ぐ点です。税率は所有期間が5年超(長期譲渡)か5年以下(短期譲渡)かで大きく異なり、長期譲渡の方が税率は低くなります。
  • 印紙税:不動産売買契約書を作成する際に必要となる税金で、契約金額に応じて税額が定められています。収入印紙を契約書に貼付して納付します。
  • 登録免許税:売却に伴い、買主へ所有権を移転するための登記手続きに登録免許税がかかりますが、これは通常、買主が負担します。ただし、売主側で住宅ローンの抵当権抹消登記が必要な場合は、その登録免許税(不動産1個につき1,000円)は売主負担となります。
  • 消費税:個人が居住用として使用していた不動産を売却する場合、土地と建物そのものには消費税はかかりません。ただし、不動産会社へ支払う仲介手数料や司法書士への報酬には10%の消費税が課税されます。

6-3. 節税の鍵!相続不動産売却で使える主な特例制度

相続した不動産を売却する際には、税負担を軽減できるいくつかの特例制度があります。これらを活用できるかどうかで手元に残る金額が大きく変わるため、しっかりと確認しましょう。

  • 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例(空き家特例):相続または遺贈により取得した被相続人居住用家屋(昭和56年5月31日以前に建築されたもの等、一定の要件あり)またはその敷地等を、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却し、かつ一定の条件を満たした場合に、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる制度です。この特例の適用を受けるためには、家屋の耐震改修や取り壊しが必要となる場合もあります。
  • 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例(取得費加算の特例):相続税を納めた人が、その相続税の申告期限の翌日から3年以内に相続した不動産を売却した場合、納めた相続税額のうち一定額を、売却した不動産の取得費に加算できるというものです。取得費が増えることで譲渡所得が圧縮され、結果として譲渡所得税が軽減されます。
  • マイホームを売ったときの特例(3,000万円特別控除や軽減税率の特例):もし相続した不動産に相続人が実際に居住しており、その家をマイホームとして売却する場合は、通常のマイホーム売却と同様の特例(3,000万円特別控除や所有期間10年超の場合の軽減税率の特例など)が適用できる可能性があります。適用要件を個別に確認する必要があります。

これらの特例は、適用要件が複雑であったり、他の特例と併用できない場合があったりするため、注意が必要です。どの特例が最も有利になるかはケースバイケースです。

6-4. 売却後の確定申告は必須

相続不動産を売却して譲渡所得が生じた場合、または上記の特例を適用して税金が0円になる場合でも、原則として売却した年の翌年の2月16日から3月15日までに確定申告を行う必要があります。

確定申告を怠ると、特例が適用されないだけでなく、無申告加算税や延滞税などのペナルティが課される可能性もあります。必要書類を準備し、期限内に正しく申告しましょう。イエツグでは、提携税理士による無料の確定申告代行サービス(譲渡所得の申告のみ、媒介契約締結が条件)も提供しており、お客様の負担を軽減します。

相続不動産売却時の税金は複雑ですが、正しい知識と適切な特例の活用が節税への道を開きます。ご自身の状況に合わせて、最適な方法を選択しましょう。

 相続不動産の税金や特例について、専門家のアドバイスが必要な場合は、イエツグにご相談ください。お客様に最適なご提案をいたします:株式会社イエツグ お問い合わせ

【まとめ】専門知識と正しい手順で、後悔しない相続不動産売却を実現しよう

相続した不動産の売却は、相続の開始から遺産分割、名義変更(相続登記)、そして売却活動、税金の申告に至るまで、多くのステップと専門的な知識を要する複雑なプロセスです。この記事では、その手続きの流れ、必要な書類、遺産分割の方法、売却時の注意点、関連する税金と節税に役立つ特例制度について、網羅的に解説してきました。

重要なポイントは、まず相続が発生したら遺言書の確認と相続人の確定を速やかに行い、相続人全員で遺産分割協議をしっかりと行うことです。特に不動産を売却して現金化する「換価分割」を検討する場合は、その旨を遺産分割協議書に明記することが後のトラブルを防ぎます。

そして、2024年4月から義務化された相続登記(名義変更)は、売却の前提となるだけでなく法的な義務でもあるため、期限内に必ず済ませましょう。売却活動においては、相続案件に強い信頼できる不動産会社を選ぶことが成功の鍵です。

税金面では、相続税の基礎控除額の確認や、売却益に対する譲渡所得税の計算、そして「被相続人の居住用財産(空き家)の特例」や「取得費加算の特例」といった節税効果の高い特例制度の適用条件を正確に理解し、活用することが大切です。これらの特例を適用するためには、確定申告が必須であることも忘れてはいけません。

相続不動産の売却は、法務・税務の知識だけでなく、相続人間の感情的な配慮も求められるデリケートな問題です。手続きの複雑さや書類の多さに戸惑うこともあるでしょう。そのような時は、一人で抱え込まず、不動産会社や司法書士、税理士といった専門家のサポートを積極的に活用することをおすすめします。

的確なアドバイスとサポートは、スムーズな売却と、相続人全員が納得できる結果へと繋がります。

株式会社イエツグでは、仲介手数料定額制という明確な料金体系のもと、相続不動産の売却に関するあらゆるご相談を承っております。

相続登記に関する司法書士のご紹介から、売却戦略のご提案、そして提携税理士による無料の確定申告代行サービス(譲渡所得の申告のみ、媒介契約締結が条件)まで、お客様の状況に合わせたきめ細やかなサポートを提供いたします。長年の経験と専門知識を活かし、お客様の大切な資産である相続不動産の売却を、安心してお任せいただけるよう全力で取り組みます。

相続した不動産の売却でお悩みなら、まずは第一歩として、イエツグの無料相談・無料査定をご利用ください。私たちと一緒にお客様にとって最善の道筋を見つけましょう。
イエツグの無料相談・査定はこちらから:株式会社イエツグ お問い合わせ
イエツグのサービス詳細はこちら:イエツグ公式サイト