売買契約が解除になった際に請求されるローン特約と手付解除について

執筆者 丹拓也執筆者 丹拓也
株式会社イエツグ代表取締役。
不動産業界の活性化・透明化を目指し、2018年仲介手数料定額制の不動産会社「イエツグ」を設立。お客様の「心底信頼し合えるパートナー」になることを目標に、良質なサービスと情報を提供している。
保有資格:宅地建物取引士・2級ファイナンシャルプランナー技能士・住宅ローンアドバイザー・既存住宅アドバイザー・防災士

仲介手数料とは

不動産物件を不動産会社の仲介で購入又は売却するときに、不動産会社に支払う成功報酬のことを「仲介手数料」と言います。
諸費用の一部として、一般的に物件価格の3%+6万円と消費税の仲介手数料が発生します。

不動産会社が仲介手数料を請求するための要件

(以下では、仲介と媒介は同義。)

  1. 不動産会社が宅地建物取引業の免許を受けていること
  2. 依頼者と媒介契約が成立していること
    依頼者と不動産会社の間で媒介契約が成立していなければ、不動産会社は仲介手数料を請求することは出来ません。媒介契約は、口頭のみで成立しますが、争いを防止するため一般的には書面にて契約します。
  3. 媒介行為が存在していること
    不動産会社が、売買契約成立に要求される行為を行うことが必要です。
  4. 売買契約が成立したこと
    仲介手数料は成功報酬です、依頼した売買が成立しなければ仲介手数料を支払う必要はありません。多くの紛争が生じる要件です、後ほど検討します。
  5. 不動産会社の行った行為と売買契約等の成立に相当な因果関係があること
    たとえ不動産会社が成約に向けて努力しても、売買契約が不動産会社の行為とは無関係に成立した場合には仲介手数料を請求することはできません。

「売買契約が成立したこと」の要件について

不動産会社が仲介手数料を請求するためには、依頼者の不動産の売買契約が成立することが要件です。では契約が解除になった場合、仲介手数料はどうなるのでしょうか。今回は、ローン特約解除と手付解除の場合について見ていきます。

ローン特約とは

ローン特約とは、不動産を購入するに当たって、買主が売買代金を金融機関などからの融資を利用することを前提に売買契約を締結し、融資の全部または一部について承認が得られなかった場合には、その売買契約を無条件で白紙解除したり、契約を解除したりすることができるとの条件を約定することをいいます。この場合、手付解除や契約違反などの解除の適用はされず、支払済の手付金は買主に返還されます。

ローン(融資)特約条項の種類

ローン特約条項には当然失効型と解除権行使型の二種類があります。
当然失効型の文例としては、「融資の全部又は一部の承認が得られない場合、本契約は自動的に消滅する。」となります。そして、当然失効型の場合は、ローンの成立により売買契約が有効になる停止条件付売買契約(停止条件のイメージは、これまで停止していた売買契約の効力が一定の事情の発生により生じるというもの)ですから、融資の不成立により解除が確定します。

一方、解除権行使型の文例としては、「融資の全部又は一部の承認が得られない場合は、契約書記載の期限内であれば買主は本契約を解除できる」となります。そして、解除権行使型の場合は、契約はいったん成立し、ローンの不成立を理由とする解除権の行使により、契約が解除される解除条件付売買契約となります。(解除条件のイメージは、売買契約締結により発生した契約の効力が一定の事情の発生により消滅するというもの)したがって期限内に解除権の行使をしなければ契約は存続することになります。

ローン特約解除の場合の仲介手数料の考え方

前述の通り、当然失効型の場合には、ローンが成立しなければ売買契約も成立しないことになりますから、不動産会社が仲介手数料を請求するための要件「売買契約が成立した」を充たしませんので、仲介手数料を支払う必要はありません。

一方、解除権行使型の場合には当初から売買契約は成立していますから、不動産会社は仲介手数料を請求するための要件である「売買契約が成立したこと」を充たします。では、買主が解除権を行使した場合に、契約は遡って効力が消滅しますがこの時、仲介手数料を請求するための要件「売買契約が成立した」も遡って充たさなくなるのでしょうか。

この場合、仲介会社に落ち度がない場合には、仲介手数料を請求することが出来ると考えるのが一般的です。しかし、売買契約は成立したものの引渡しを含めた「完了」まではしていないことを考慮し仲介手数料の全額の請求は困難であると考えられています。(半額ぐらいが相場です。)
もちろん、媒介契約書に「ローン特約解除の場合には仲介手数料は発生しない」と定められていればそれに従うことになります。

特に買主の立場になる場合にはまず、不動産売買契約書のローン特約解除の条項が、当然失効型なのか解除権行使型なのかを確認し、また不動産会社との媒介契約書を確認しローン特約解除をした場合には仲介手数料を支払う必要があるのか確認し思わぬトラブルを避けましょう。

手付解除とは

手付を交付することによって、一定の期限までは売買契約をなんらの理由なく解除できるようにすることを手付解除といいます。
(民法557条1項「買主が売主に手付を交付したときは、当事者の一方が契約の履行に着手するまでは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を償還して、契約の解除をすることができる。」)

手付解除の場合の仲介手数料の考え方

手付解除の場合、実は判例でも仲介手数料の請求を認めるべきか否か、認められるとすればいくらか等さまざまで統一されていません。

全額認めるべきだという考えの根拠は、締結された売買契約にはなんら問題はないということにあり、不動産会社が仲介手数料を請求するための要件「売買契約が成立した」を充たすというものです。
仲介手数料は請求できないという考えの根拠は、はじめから手付解除がありうるかもしれないという不完全な売買契約であり、不動産会社が仲介手数料を請求するための要件「売買契約が成立した」を充たさないというものです。

裁判によっても結論がさまざまですので、不動産会社との媒介契約に手付解除の場合に仲介手数料を支払わなければばらないのか必ず確認しましよう。

手数料請求を認めた裁判例

ここで手付解除の際に、仲介手数料の請求は否定した上で、不動産会社に手数料請求を認めた裁判例をご紹介します。

買主が手付を放棄して売買契約を解除した場合に、売主は不動産の所有権を失うことなく手付金まで取得するとこができます。そこで、売主から依頼をうけた不動産会社が、仲介手数料を売主に請求した事件があります(福岡高裁平成15年12月25日)。なお、本件では依頼者と不動産会社の媒介契約書に手付解除の場合の仲介手数料の取り決めがありませんでした。

裁判所は、一般論として媒介による報酬は、売買契約が成立し、その履行がなされ取引の目的が達成された場合について定められているものということを前提に、仲介手数料の支払いは請求出来ないとした上で、商法512条の規定を根拠に、不動産会社は相当な報酬を請求できるとしました。(商法512条「商人がその営業の範囲内において他人のために行為をしたときは、相当な報酬を請求することができる。」)そして報酬額の算定は、過去の判例に従い(最高昭和43年8月20日)取引額、媒介の難易、期間、労力、その他諸般の事情を考慮したものと考えられます。

最後に

裁判所における不動産関係の争いは毎年1万件とも言われます(訴訟にならないものも含めると10万件程度はあるのではないかと言われています。)。不動産会社に不動産売買の仲介(媒介)の依頼をする場合には必ず媒介契約書を締結しましょう。契約書類に分からない条文を見つけた場合には必ず質問をし、争いを未然に防ぎましょう。不動産会社は媒介契約書に基づき依頼者の不動産の購入、売却に向けて真摯に努力をしますから、前記裁判例のように場合によってはそれに応じた報酬を請求されることもありえます。

参考文献:「宅地建物取引士」 公益法人不動産流通センター

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