親や親戚、親しい友人との不動産売買。仲介手数料を節約できる「個人間売買」は魅力的ですが、「何から手をつければいい?」「契約書や税金はどうなる?」といった疑問や不安はありませんか?
この記事は、そんなあなたのための「完全手順書」として、不動産の個人間売買に必要な全ステップを、専門家の知見を交えて徹底解説します。
読み終えれば、取引の全体像を理解し、具体的な行動計画を立てられるようになります。リスクを回避し、円満な取引を成功させる知識をここで手に入れてください。
目次
【はじめに】不動産は個人間でも売買できる!仲介なしのメリット・デメリット
不動産は、不動産会社を介さずに個人同士でも売買できます。ただし、それには大きなメリットと、注意すべきデメリットがあります。
メリット:最大の魅力は「仲介手数料」がゼロになること
個人間売買の最大のメリットは、不動産会社に支払う仲介手数料が一切かからないことです。通常、仲介手数料は「売買価格の3%+6万円」が上限とされ、4,000万円の物件なら約138万円にもなります。この費用がまるごと節約できるのは、非常に大きな魅力です。
デメリット:手続きの全責任を負い、トラブルのリスクが高まる
一方で、デメリットは、取引の調査、書類作成、手続きに関する全責任を自分たちで負うことです。契約書の不備、物件の隠れた欠陥、税務上の問題など、専門知識がないと対応が難しいトラブルに発展しやすくなります。安易な気持ちで進めるのは非常に危険です。
【完全ガイド】不動産を個人売買する全手順・流れ8ステップ
ここからは、実際に不動産を個人間で売買する際の全手順を、8つのステップに分けて具体的に解説します。この流れに沿って進めれば、抜け漏れなく手続きを完了できます。
STEP1:物件調査と売買条件の話し合い
最初のステップは、売買対象となる不動産の現状を正確に把握することです。法務局で登記簿謄本を取得して所有者や権利関係を確認し、役所で都市計画や建築基準法上の制限などを調査します。その上で、引渡しの時期や支払い方法など、基本的な売買条件を当事者間で話し合います。
STEP2:売買価格の決定 ※親族間は「贈与税」に要注意
次に、売買価格を決定します。知人同士であれば自由に決められると思いがちですが、特に親族間の場合、相場より著しく低い価格で売買すると、差額が「贈与」とみなされ、買主に高額な贈与税が課されるおそれがあります。周辺の取引事例を参考に、客観的な根拠のある価格設定が重要です。
STEP3:必要書類の準備(売主・買主別リスト)
契約から決済、登記までに必要な書類を準備します。抜け漏れがあると手続きが滞るため、リスト化して確認しましょう。
- 売主:登記済権利証(または登記識別情報)、印鑑証明書、実印、固定資産評価証明書など
- 買主:住民票、印鑑証明書、実印、本人確認書類など
STEP4:不動産売買契約書の作成
話し合った内容を基に、不動産売買契約書を作成します。契約書は、後の「言った言わない」というトラブルを防ぐ最も重要な書類です。物件の表示、売買代金、手付金の額、引渡しの時期、契約不適合責任の取り扱いなど、必須の記載事項を漏れなく盛り込みます。
STEP5:手付金の授受と契約の締結
契約書の内容に双方が合意したら、署名・捺印して契約を締結します。この際、一般的に買主から売主へ、売買代金の一部である「手付金」を支払います。手付金の額は、売買代金の5%~10%程度が相場です。金銭の授受については、必ず領収書を取り交わしましょう。
STEP6:決済(残代金の支払い)と【最重要】所有権移転登記
契約で定めた日に、買主は売主へ残代金の全額を支払います(決済)。そして、この決済と同時に、法務局で「所有権移転登記」の申請を行うことが最も重要です。この登記手続きによって、法的に不動産の所有者が買主に移ります。手続きは専門性が高いため、司法書士に依頼するのが一般的です。
STEP7:物件の引渡し(鍵の受け渡し)
決済と登記申請が無事に完了したら、売主は買主に物件の鍵を全て渡し、物件を引き渡します。引渡し日までに、売主は引越しを済ませ、物件を空けておく必要があります。電気・ガス・水道などの清算も忘れずに行いましょう。
STEP8:売却後の確定申告
不動産売買が完了しても、それで終わりではありません。売主は、売却の翌年に確定申告が必要です。売却によって利益(譲渡所得)が出た場合は納税し、損失が出た場合でも、特例を使えば税金の還付を受けられる可能性があります。買主も、不動産取得税の申告や、住宅ローン控除を受けるための確定申告が必要です。
個人売買で絶対避けるべき3大トラブルとプロによる回避策
個人間売買には、仲介業者がいる取引では起こりにくい特有のトラブルがあります。ここでは、代表的な3つのトラブルとその回避策を解説します。
トラブル①【税金】相場より安すぎて「贈与税」の爆弾が…
親族間売買で最も多いのがこのトラブルです。良かれと思って相場の半額などで売却した結果、税務署から「差額分は贈与である」と指摘され、買主である子供や孫に数百万円の贈与税が課されてしまうケースです。
親族間売買で税務署に指摘されない「適正価格」の調べ方
回避策は、売買価格を「適正な時価」に設定することです。不動産鑑定士による鑑定評価を取得するのが最も確実ですが、費用がかかります。最低限、固定資産税評価額や、近隣の類似物件の成約価格(レインズマーケットインフォメーション等で調査可能)を基に、客観的な根拠を示せる価格を設定しましょう。
トラブル②【契約】契約書の不備で「言った言わない」の泥沼に…
インターネット上のひな形をそのまま使った結果、重要な取り決めが記載されておらず、後から「エアコンは置いていってくれるはずだった」「この傷は聞いていない」といったトラブルに発展するケースです。親しい間柄でも口約束は禁物です。
必須記載事項リストと「契約不適合責任」の重要性
回避策は、物件の状態や付帯設備の有無、そして「契約不適合責任」について、契約書に明確に記載することです。「契約不適合責任」とは、引き渡した物件に契約内容と違う欠陥があった場合に売主が負う責任のことで、この責任を「負う」のか「免除する」のかを明記しないと、深刻なトラブルの原因になります。
トラブル③【物件】引き渡し後に欠陥発覚!親しい仲だからこそ揉める…
引き渡し後、シロアリ被害や雨漏りなど、契約時には分からなかった重大な欠陥が見つかるケースです。買主が修繕費を請求し、売主がそれを拒否すれば、たとえ親子であっても関係に深い亀裂が入りかねません。
トラブルの芽を摘む「専門家」という保険
これらの深刻なトラブルを防ぐ最も確実な方法は、取引の一部だけでも専門家に依頼することです。特に、全てのルールの土台となる「不動産売買契約書」の作成やリーガルチェックだけでも司法書士や行政書士に依頼すれば、リスクを大幅に軽減できます。数万円の費用を惜しんだ結果、数百万円の損失や人間関係の破綻を招かないよう、専門家の活用を検討しましょう。
「自分でできること」と「専門家(司法書士)に頼るべきこと」の明確な境界線
個人間売買を成功させるコツは、コスト削減のために自分でやることと、安全のために専門家に任せることを見極める点にあります。
【自分でできる】物件調査、条件交渉、書類収集
法務局や役所での物件調査、当事者間での価格や条件の話し合い、そして住民票や印鑑証明書などの基本的な書類収集は、時間と手間をかければ自分たちで行えます。これらの部分を自分たちでやることで、コストを抑えられます。
【専門家に頼るべき】売買契約書の最終チェック、所有権移転登記
一方で、法的な専門知識が不可欠な「売買契約書の最終的な内容確認」と、取引の完了を法的に確定させる「所有権移転登記」は、司法書士に依頼すべきです。特に登記手続きは、書類の不備が許されない非常に厳格なものです。この費用を惜しむと、取引そのものが無効になるリスクさえあります。
司法書士への依頼費用と選び方のポイント
所有権移転登記を司法書士に依頼した場合の費用は、物件の評価額などによって変動しますが、報酬と登録免許税(税金)を合わせて10万円~30万円程度が目安です。複数の司法書士事務所から見積もりを取り、費用だけでなく、個人間売買の経験が豊富で、親身に相談に乗ってくれる司法書士を選びましょう。
「仲介」と「完全個人売買」の“いいとこ取り”という選択
「全部自分たちでやるのは不安だけど、仲介手数料をまるごと払うのはもったいない…」そんな方のために、イエツグでは「取引サポートプラン」をご用意しています。契約書の作成だけ、登記手続きだけ、といったように、あなたが不安な部分だけを専門家がピンポイントでサポートします。仲介と個人売買の“いいとこ取り”で、コストと安心を両立しませんか?
不動産の個人売買に関するよくある質問
最後に、不動産の個人間売買を検討されている方からよくいただく質問にお答えします。
Q1. 住宅ローンは利用できますか?
A1. はい、利用できますが、金融機関の審査が厳しくなる傾向にあります。
個人間売買では、不動産会社が作成する「重要事項説明書」がないため、金融機関は物件の担保価値をより慎重に評価します。そのため、審査のハードルが上がったり、融資実行までに時間がかかったりすることがあります。利用したい金融機関には、個人間売買であることを事前に伝えて相談しましょう。
Q2. 費用は総額でいくらくらいかかりますか?
A2. 仲介手数料は不要ですが、登記費用や税金などの実費がかかります。
買主側でかかる主な費用は、所有権移転登記の費用(登録免許税+司法書士報酬)、売買契約書の印紙税、そして不動産取得税です。物件にもよりますが、数十万円から百万円以上かかる場合もあります。事前に司法書士に見積もりを取っておくと安心です。
Q3. 親子間売買で特に気をつけることは何ですか?
A3. 最も注意すべき点は、やはり「贈与税」です。
相場からかけ離れた低い価格での売買は絶対に避けましょう。また、代金の支払いも、実際に口座間で送金するなど、客観的な証拠を残しておくことが重要です。「あげたも同然」の取引とみなされないよう、あくまで第三者との取引と同じように、契約書や領収書をきちんと取り交わす姿勢が大切です。
まとめ:個人売買は準備が9割。リスクを理解し、専門家を賢く使おう
不動産の個人間売買は、仲介手数料を節約できる大きなメリットがありますが、その裏には専門知識を要する煩雑な手続きと、深刻なトラブルにつながるリスクが潜んでいます。
成功の鍵は、自分でやることと、費用をかけてでも専門家に任せることの線引きを正しく行う点にあります。この記事でご紹介した8つのステップと3大トラブルの回避策を参考に、十分な準備と調査のもと、安全で円満な取引を実現してください。
個人間売買の「困った」、イエツグが解決します
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不動産業界の活性化・透明化を目指し、2018年仲介手数料定額制の不動産会社「イエツグ」を設立。お客様の「心底信頼し合えるパートナー」になることを目標に、良質なサービスと情報を提供している。
保有資格:宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士・2級ファイナンシャルプランナー技能士・住宅ローンアドバイザー・既存住宅アドバイザー・防災士