新型コロナウイルスの影響による失業者が全国で7万人を超えるという、厚生労働省の調査結果が報じられました。この調査では失業者が集計対象となっていましたが、職を失ってはいないものの大きな環境の変化に見舞われ、転職を検討している人も多く存在しています。
不動産業界はいつの時代も学歴不問・未経験歓迎の業界です。取引額が大きな商品を扱うことから、大きな収入を得るチャンスが豊富。それだけに非常に厳しい側面ももっており、すべての求職者にオススメできる仕事とは限りません。
今回は公務員から不動産仲介営業へ転職、現在は不動産会社を経営している丹が、不動産業界への転職についての持論をお話いたします。
- 不動産営業の仕事
- 不動産営業のメリット
- 不動産営業のデメリット
不動産業界の活性化・透明化を目指し、2018年仲介手数料定額制の不動産会社「イエツグ」を設立。お客様の「心底信頼し合えるパートナー」になることを目標に、良質なサービスと情報を提供している。
保有資格:宅地建物取引士・2級ファイナンシャルプランナー技能士・住宅ローンアドバイザー・既存住宅アドバイザー・防災士
ところで不動産営業ってどんな仕事なの?
目次
不動産営業とは
モノやサービスを企業や個人相手と取引する営業マン。不動産業界における営業マンは、どのような取引を行う職業なのでしょうか。
売主と買主のニーズを結びつける仕事
不動産仲介業における営業マンは、文字通り不動産を商品として扱う職業です。不動産を売りたい売主と買いたい買主のニーズを結びつけ、両者の取引を仲介します。
不動産は売りたいときに売れるとは限らず、また買いたいときに欲しい物件が出てくるとも限りません。そのため豊富な物件情報を頭にたたき込み、お客様のニーズにあった物件をすぐに紹介できるだけの知識量と勉強量が求められます。
学歴・経歴不問で即戦力
不動産営業は一般的に学歴・経歴不問とされる職業です。入社後は比較的早いうちから戦力として扱われ、仲介の現場にかり出されます。
非常に高額の商品である不動産を扱うため、就業当初はなかなか売れない時期が続きます。しかし一度売れれば非常に高額な歩合が入るため、若い20代のうちから年収1,000万以上の収入を手にする営業マンも珍しくありません。
長時間労働当たり前の”ブラック”な面も
高額な報酬を得られる可能性がある一方、労働時間は長時間化しやすい傾向があります。物件広告の手配、新規物件の調査、見込み客への勧誘電話、そして購入希望者への物件案内など、その業務は多岐に渡るため、文字通り朝から晩まで働き続けなければなりません。
でもそれの大変さを上回るメリットもあるよ!
不動産営業のメリット6選
ブラックな業界と認識されがちの不動産営業ですが、他の職種では得られないメリットも多くもっています。
不動産営業のメリット1.学歴・経験不問
不動産業界の中でも営業マンは常に人材不足であるため、学歴不問・未経験でも採用率が高めです。
多くの人に会うことが利益につながる職業であるため、人との会話が得意な人ほど営業マンとして求められます。評価はこれまでの学歴や経歴に関係なく、営業成績だけで判断。未経験から大きな実績を上げてきた営業マンも多く、誰でも活躍できる土壌がある職業といえます。
不動産営業のメリット2.車の運転がうまくなる
不動産物件の下見やお客様のご案内は、営業マンが自ら運転する車で行うため、自然と車の運転が上達します。
また、私がいた会社では3回ぶつけると修理を自腹で行わないといけない暗黙の了解がありました。これは業界内でも珍しい話ではないため、営業マンはどこに行っても運転技術を身につける必要に迫られているともいえます。
不動産営業のメリット3.生活に役立つ知識が身につく
不動産売買はさまざまな制度や法律を活用することで、売買の難易度や支払う税金が大きく変わります。
相続がらみの自宅売却の手続き方法、金利を抑えた住宅ローンの選び方、売買時の税金の処理手順などの情報に多く触れるため、普通の生活では知り得ないような知識を多く身につけられます。
そのため自分の私生活において当事者となった際には、営業マンとしてもらう給料以上に得をできるかもしれません。
不動産営業のメリット4.やりがいが大きい
不動産はどんなに安くても数百万、一般的な物件でも数千万円という大きな金額が動く商品です。扱う金額が大きいためなかなか頻繁には売れませんが、だからこそ売れたときの喜びは非常に大きなものとなります。
また不動産はお客様にとって、一生に一度の大切な買い物です。それだけにお客様のご希望通りに売買が成立した際には、大変感謝されることでしょう。
他の職種では味わえないような大きなお金と喜びを扱う、やりがいのある仕事であるといえます。
不動産営業のメリット5.売れていれば自由
不動産営業は良くも悪くも成果主義の世界です。会社員として規則通りに出社する必要はありますが、しっかり成果さえ出していれば厳しく拘束されることもありません。
売れっ子営業マンの中には、平日の昼間はどこにいるかわからない人もいるほどです。
不動産営業のメリット6.お金はそこそこ稼げる
不動産営業マンの給与は完全歩合制、または低額の固定給+歩合で計算されます。
売れれば売れるほど収入は大きくなり、20代で年収1,000万円を稼ぎ出すのも夢ではありません。
私も毎月の給料に波はありましたが、月収100万円を超えたことも何度か、最高で150万円ほどの歩合を手にした経験があります。
ブラックと言われるだけのデメリットもちゃんと知っておこう。
不動産営業のデメリット7選
いいところもある不動産営業ですが、ブラックな仕事といわれるだけあり、非常に厳しい面も多くもっています。
不動産営業のデメリット1.会社の雰囲気が悪い
不動産会社で働くなら、会社の雰囲気が悪い点は覚悟しておいた方がよいでしょう。
不動産営業の部署においては、部下の売上の合計が上司の評価の対象となります。
月間の売上が悪ければ、上司はさらに上の上司から怒られてしまい、その怒りは部下にそのまま下ろされてしまいます。
会社の雰囲気に直結する上司の機嫌は営業成績次第。とくにピリピリしやすい月末は、居心地の悪い期間となるでしょう。
不動産営業のデメリット2.長時間労働になりがち
先に紹介しましたとおり、営業マンは担当する業務が多く、長時間労働になりやすい傾向があります。また一般的には体育会系と呼ばれる風習の職場のため、朝は定時よりも数時間早く出勤、夜は上司が帰るまで帰れない職場も少なくありません。
程度の差はあるでしょうが、おおむね毎日12時間以上の長時間労働は当たり前に行われます。
もしかしたら、入社時の面接では定時退勤や短い残業があると説明されていたかもしれません。
しかし悪しき慣習ではあるのですが、不動産業界においては入社時の説明と実態がまったく違う場合も多く、長時間労働は免れないと思った方がよいでしょう。
不動産営業のデメリット3.事実上休日がない
不動産営業は一般消費者を相手にするビジネス、いわゆるBtoCのビジネスです。個人である顧客の都合優先のため、たとえ休日でもお客様からの連絡があれば、即座に対応しなければなりません。
仮に以前から予約していた旅行にいく当日だったとしても、お客様の要望次第ではキャンセルも止む無し。完全に自由な休日は無いという覚悟が必要でしょう。
不動産営業のデメリット4.売れないと生活できない
原則として給料は歩合により決定。売れれば大金を手に入れられる一方、まったく売れずに収入が無い月もあります。
入社後数ヶ月は最低保証額を設けられる場合もありますが、長時間労働をしたとしても残業代は出ません。
どんなに厳しい仕事にも耐えられるという体育会系のタフな新人が辞めていく背景には、続けたくても収入がないという切実な理由も多く含まれています。
不動産営業のデメリット5.交通違反しやすい
自動車を運転する機会が多いため、自然に交通違反を犯しやすくなるという問題もあります。
お客様を物件に案内する際に駐車違反、1日のうちに対応しなければならない業務が多いためスピード違反、そのあげくに事故を起こすという営業マンは後を絶ちません。
あまりに事故を起こす頻度が高いため、中には免許停止となってしまう営業マンもいるようです。
不動産営業のデメリット6.客からよく思われない
不動産業界は、バブル時代には反社会勢力との関わりが問題視されたこともあり、いまだに「不動産営業はガラが悪い」と思われやすい職業です。
また夜遅くに営業電話をかけることから、迷惑な存在というイメージもつきまとっています。
そのため不動産営業への風当たりは強くなりやすく、お客様から冷たい扱いを受けることもあるでしょう。
不動産営業のデメリット7.マナーが悪く勉強不足な営業に囲まれる
不動産営業は人の出入りが頻繁に行われます。そのためじゅうぶんな社員教育を施せず、一般的な社会人としてのマナーを身につけていない営業マンも多く存在します。
業者間での電話においてもタメ口、ガチャ切り、保留のまま長時間放置など、社会人としてまともな応対をしてもらえないケースは少なくありません。
また口はうまくても勉強不足の営業マンも多く存在します。彼らは
- 勤続が長くても宅建士資格を取れない
- ローンの計算ができない
- 節税のための制度を知らない
といった特徴があり、もちろん良い成績は残せません。こういった良質とはいえない営業マンに囲まれることに嫌気がさし、不動産営業からの退職を選ぶ人もいるようです。
まとめ:不動産営業は厳しくも見返りが大きい職業
不動産業界は全体的にブラックな慣習がまかり通っており、理不尽も多い業界です。
不動産を扱う会社はコンビニよりも多いと言われるほど競争相手も多く、営業が実を結ぶようになるまで非常に厳しい日が続きます。しかし営業マンとして成長し、コンスタントに物件を売れるようになれば、年収1,000万を超える高収入も夢ではありません。
もし不動産業界へ転職を希望されるなら、失敗9割成功1割くらいのつもりで、自分に合った会社を探し、働きがいのある会社で成長を目指すのがよいでしょう。
営業マンの現状に対し厳しい意見をお伝えしましたが、私も営業マンを経て、現在は不動産会社経営者として充実した毎日を送っております。
不動産営業は、お客様に喜んでいただいてこそ成り立つ職業です。イエツグは、お客様のための不動産営業マンを目指すあなたの転職が成功されることを、心より応援しています。