「瑕疵を理解せずに契約書にサインしてしまった」
「瑕疵の意味を聞いたけど正直よくわからない」
瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)が重要なことであるとは認識しているものの、具体的にどんなことなのか確認する機会を逃してしまってはいませんか?
不動産売買では、このように「サラッとしか説明されないけど実はすっごく大事」なことがたくさん存在します。瑕疵担保責任もそのひとつです。
そこで本記事では、瑕疵担保責任について疑問をスッキリ解決いたします。
不動産売買書の瑕疵担保責任の意味、そして売主が負う責任について知りたい人は、ぜひ参考にしてください。
- 瑕疵担保責任の意味について
- 個人と宅建業者とでは責任の重さは違うの?
- 瑕疵担保責任は必ず負わなければいけないの?
責任を負う期間や責任そのものをどうするかについて、売主と買主で売買前にしっかり話し合う必要があるんだ。

不動産業界の活性化・透明化を目指し、2018年仲介手数料定額制の不動産会社「イエツグ」を設立。お客様の「心底信頼し合えるパートナー」になることを目標に、良質なサービスと情報を提供している。
保有資格:宅地建物取引士・2級ファイナンシャルプランナー技能士・住宅ローンアドバイザー・既存住宅アドバイザー・防災士
目次
不動産売買でよく聞く瑕疵担保責任とは?
不動産売買契約書によく出てくる瑕疵担保責任の意味をしっかり理解している人は、実はそんなに多くはありません。
しかしこの瑕疵担保責任、場合によっては損害賠償や契約の取消しなどが発生する恐れがある重要な項目です。
そこで、瑕疵担保責任がどのような意味で、誰がどのように責任を負わなければいけないのか、おさらいしていきましょう。
瑕疵の意味とは?
瑕疵(かし)とは、傷や欠陥のことをです。
とはいえ、ほんの小さな傷のことではなく、本来あるべき機能や品質、性能が備わっていない状況を瑕疵があると言います。
瑕疵が見つかってから1年以内に買主から申し出があれば、売主は損害の大きさによって賠償しなければならないと、民法で規定されています。
では、どのような欠陥が見つかった場合に賠償しなければいけないのでしょうか?瑕疵の例を以下にあげていきます。
物理的瑕疵 |
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このように、目に見える形で欠陥が発生しており、かつその欠陥があることで生活に支障をきたしている状態を物理的瑕疵と呼びます。
瑕疵はこれだけではありません。「目に見えないもの」「法的な規制がかかっているもの」なども瑕疵のひとつです。
物理的瑕疵 |
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環境的瑕疵 |
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心理的瑕疵 |
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このように、目に見える傷や欠陥はないものの「精神的に負担を抱えて生活しなければいけない物件」や「大きなストレスを与える生活環境」なども、瑕疵物件となります。
どんな責任を負うのか
では、瑕疵が見つかった場合、売主はどんな責任を負わなければいけないのでしょうか?瑕疵担保責任が発生したときに売主が負うべき責任を以下にまとめました。
損害賠償 | 金銭や物品などで損害部分の埋め合わせをすること |
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契約の解除 | はじめから契約を無かったことにすること |
瑕疵が見つかった場合、売主は欠陥部分を補うために金銭などで損害を賠償しなければいけません。建物の存続自体が難しく、埋め合わせできるようなレベルの欠陥ではない場合は、買主から契約解除を求められることもあります。
2020年4月1日には民法が改正となり、この瑕疵担保責任が少し変わります。
新民法では瑕疵を「契約不適合責任」と呼ぶことになり、負うべき責任の種類が少しばかり増えました。
追完請求 | 不足分を買主に引き渡すこと |
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代金減額請求 | 損傷部分に応じ代金を減額請求すること |
新民法では、追完請求と代金減額請求がプラスされます。品質や数量が不足している場合も売主は責任を負わなければいけなくなりました。
つまり、欠陥や損傷以外にも、契約内容に適合していない不動産を引き渡した場合、売主は上記いずれかの形で責任を追及されるのです。
個人と法人の不動産売買では瑕疵担保責任の重さが違うのか
売主が個人の場合と法人である場合、どう責任の重さが違うのでしょうか?
結論から言うと、宅建業者(法人)の方が責任が少し重くなります。細かく説明すると、宅建業者は責任を完全に免除することはできないのです。
1-1 | 個人 | 宅建業者 |
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責任を免除する特約 | 有効 | 無効 |
宅建業者は「瑕疵があっても責任を負いません」という契約書を交わしても、その項目は有効とはなりません。これは宅地建物取引業法という宅建業者が守るべき法律で定められているからです。ちなみに個人間売買の場合は「瑕疵があっても責任を負いません」という特約は有効です。
瑕疵担保責任を定めているのは「民法」と「宅地建物取引業法」という法律です。売主が個人の場合は民法が適用され、売主が不動産会社(宅建業者)の場合は宅地建物取引業法が適用となります。
不動産売買成立後から瑕疵担保責任を追及できる期間はどのくらい?
民法では、瑕疵担保責任は「瑕疵を知ったときから1年以内」と定められています。
買主が不動産の欠陥部分を見つけてから1年以内に売主へ請求すると、売主は損傷部分に応じて賠償をしなければいけません。反対に、買主が瑕疵を発見してから1年以上後に請求した場合は、売主は責任を負わなくてもよいことになります。
特別法である宅建業法では、売主が宅建業者の場合は引き渡してから2年以上という特約が有効となるため、不動産取引の慣習ではほぼ全ての取引が2年と定められています。
ただ一般的には、個人の売主の瑕疵担保責任は2~3ヶ月程度と売買時に取り決めをすることが多いものです。
そんなときは、これから紹介する方法でリスクを減らすことを考えてみよう!
瑕疵担保責任のリスクを減らすには?免責特約について
瑕疵の発生は、売主だけでなく買主にとっても負担が大きいものです。できることなら、瑕疵の発生リスクを軽減させて、気持ちよく取引を終えたいですよね。
しかし、瑕疵はいつの間にか発生しているもの。特に腐食やシロアリ発生などは、売主が注意して暮らしていたとしても発生に気づいたり、未然に瑕疵を防いだりすることは難しいといえるでしょう。
瑕疵担保の負担をゼロにすることはできませんが、リスクを軽減させる方法はあります。
免責特約とは?瑕疵担保責任を問わない契約もある
本来負うべき責任を問わないことにする約束を、免責特約といいます。「売主が瑕疵担保責任を負わない」という免責特約を締結し、売主が瑕疵の責任から逃れることも可能です。
ただし、免責特約を締結するには以下の条件が必要となります。
- 売主が宅建業者でないこと
- 売主が知らない瑕疵であること
「個人と法人の不動産売買では瑕疵担保責任の重さが違うのか」の項目で前述したように、宅建業者が売主であった場合は瑕疵担保免責特約は締結できませんが、個人による売買の場合は瑕疵責任を負わない特約は有効です。
ただし、売主が知らない瑕疵であることも免責特約を締結するための条件のひとつです。世の中には「黙っていればわからない」と考える売主も一定数いて、買主にわざと事実を告げないケースもあります。「瑕疵担保免責特約を締結し、とにかく早く引き渡してしまえばいいだろう」と考える人もいますが、このような買主の生活を考えない悪知恵は通用しないことになっています。
このような事態に対処するために、売主が知っていて隠した瑕疵に関しては、免責特約があっても瑕疵担保責任を追及できるというわけです。
瑕疵保険に入るという方法も
もうひとつ、「瑕疵保険加入」という瑕疵担保責任のリスクを軽減させる方法があります。
瑕疵保険とは、買主から瑕疵についての請求があった場合、保険会社が売主に代わり補修費用を支払ってくれる保険です。瑕疵保険に加入するのは売主で、保険期間は1~5年間となります。
瑕疵保険の支払い対象は以下の通りです。
- 構造上主要な部分
- 雨漏り
- 給排水設備の故障
- 電気設備の損傷
瑕疵保険の支払い対象となるのは、それぞれの性能を十分に満たしていない・不足していることによって生活が成り立たない部分です。「エアコンが古い」「扉の閉まりが悪い」というような大きく生活に影響を与えない部分に関しては保証の対象とはなりません。
とはいえ、売主・買主ともにメリットが大きい瑕疵保険。売主にとっては売却後の物件の修繕対応を保険会社に任せることができます。
また買主にとっては、安心して中古住宅を購入できること・最大で30万円のすまい給付金を受け取れること・自治体によっては補助金を受けとれる、などたくさんのメリットがあります。
弊社イエツグでは、安心して中古住宅を売却できるよう瑕疵保険加入を無料で5年間付帯しております。中古住宅の売却戦略のひとつとして、または安全な住み替え先を探したいという人は、ぜひイエツグまでご相談ください。
まとめ
瑕疵担保責任の規定は、買主の生活を守るためにできた法律です。中古住宅の売買契約後に重大な欠陥が見つかったときには、売主側に賠償責任が生じます。
しかし、瑕疵担保責任はマイナスのイメージだけではありません。瑕疵対策は、買主と売主に大きなメリットをもたらします。瑕疵保険に加入の可否は、他の競合物件との差別化を図る売却戦略のひとつにもなります。また買主側としては、「瑕疵対策している建物=安心できる」という物件選びの判断基準となるでしょう。
イエツグでは、弊社仲介の物件に対し、安心して中古住宅を購入してもらえるよう無料で瑕疵保険に加入できます。中古住宅の売買の強い味方である瑕疵保険、ぜひ検討してみてください。
