住宅ローンは、「35年など全期間、金利を固定するタイプ」と「金利が変動するタイプ」だけしかないと思っていませんか?実は、住宅ローンの金利タイプにはもう一つあります。それが、「固定期間選択型」です。
固定期間選択型は、借り入れから3年・5年・10年など一定期間の金利を固定する金利タイプです。中でも10年固定金利は人気があり、固定期間選択型で住宅ローンを借り入れた人の約34.6%に選ばれています。出典:住宅金融支援機構「住宅ローン利用者調査(2020年5月調査)」
しかし人気だからといって、よく検討もせずに10年固定金利を選ぶのはおすすめできません。むしろ、10年固定金利ほど慎重に選ばなければならない金利タイプはないといっても過言ではありません。
そこで本記事では、10年固定金利住宅ローンの仕組みやメリット・デメリットなどを、幅広く解説します。
- 10年固定金利住宅ローンの特徴
- 10年固定金利住宅ローンのメリット・デメリット
- 10年固定金利の住宅ローンがおすすめな人
【動画目次】
00:00 はじめに
01:44 10年固定金利住宅ローンのメリット・デメリット
05:59 10年固定金利で気になる「10年後」のこと
09:32 10年固定金利の住宅ローンがおすすめな人
不動産業界の活性化・透明化を目指し、2018年仲介手数料定額制の不動産会社「イエツグ」を設立。お客様の「心底信頼し合えるパートナー」になることを目標に、良質なサービスと情報を提供している。
保有資格:宅地建物取引士・2級ファイナンシャルプランナー技能士・住宅ローンアドバイザー・既存住宅アドバイザー・防災士
目次
「10年固定金利」の住宅ローンの特徴
10年固定金利の住宅ローンは、借り入れから10年間の金利が特約で固定されている金利タイプです。固定期間が終了すると特約は消滅し、金利が半年に一度見直される変動金利に移行します。
金融機関が取り扱う固定金利特約を選んで、再び金利を固定させることも可能です。ただし金融機関によっては、金利を再び固定させるときに特約再設定手数料の支払いが必要です。
金利を固定できる期間は、金融機関によって2年、3年、5年、10年、20年などさまざま。中でも金利の固定期間が長い10年固定金利を、多くの金融機関が変動金利と並んで主力商品としています。
10年固定金利住宅ローンのメリット・デメリット
10年固定金利の住宅ローンにも、他の金利タイプ同様にメリットもあればデメリットもあります。ご自身にとって10年固定金利が合っているかどうかは、メリットとデメリットの内容を確認した上で判断することが大切です。
10年固定金利のメリット
10年固定金利のメリットは、以下の2点です。
- 固定期間中は変動金利なみの低金利である
- 借り入れから10年間にわたって返済元本を着実に減らせる
2020年10月現在、10年固定金利の最低値は、auじぶん銀行の0.54%です。さらにauじぶん電気を同時に契約すると、キャンペーンにより0.51%まで引き下げられます。
現在の変動金利方はおおむね0.4%台。10年固定金利の借り入れ当初10年の返済額は、変動金利とほぼ変わらないといえます。
住宅ローンの返済額に占める利息額は、前回の返済残高に金利をかけて計算されます。借入当初の金利が低いと返済額に占める利息の割合も低くなり、効率的に元本を返済していけるのです。
10年固定金利のデメリット
一方で10年固定金利には、以下2点のデメリットがあります。
- 固定期間の終了後に優遇金利が変更される場合がある
- 固定期間終了後の変動金利に「5年ルール」や「125%ルール」がない
住宅ローンの借り入れ時に適用される金利は、金融機関が独自に定める店頭金利(基準金利)から優遇金利(引き下げ幅)を差し引いて算出されます。
金融機関によっては、金利の固定期間が終了すると優遇金利が引き下げられて、利息計算時に適用される金利が上昇する場合があるのです。
また、固定期間選択型の変動金利には、通常の変動金利型とは異なり「5年ルール」や「125%ルール」が設けられていません。
5年ルールとは、返済額の見直しが5年ごとに行われるというルール
125%ルールとは、見直し後の返済額が見直し前の1.25倍以上には増えないというルール
5年ルールや125%ルールがないと、金利が上昇したタイミングで毎月の返済額も増えてしまうリスクや、返済負担が急激に増えて家計を圧迫するリスクが高まります。
10年固定金利住宅ローンを借り入れた場合の返済負担をシミュレーション
では金利の固定期間が終了すると、返済負担はどのように変わるのでしょうか?以下の条件でシミュレーションをして確認しましょう。
- 借入額:4,000万円
- 返済期間:35年
- 返済方式:元利均等方式(毎月の返済額が一定である返済方式)
- 借入時の金利:0.54%
固定期間が終了したあとに変動金利に移行した場合と、再び金利を固定させた場合とで返済額がどのように変わるのか確認してみましょう。
固定期間終了後に変動金利へ移行した場合
固定期間が終了すると金利の引き下げ幅が0.800%になるため、適用される金利は変動タイプの基準金利2.341%から0.8%を差し引いた1.541%です。よって毎月の返済額は、返済10年目までと返済11年目以降で、以下のように異なります。
返済10年目まで | 返済11年目以降 | |
毎月の返済額 | 104,543円 | 117,874円 |
変動金利に移行すると、返済負担が毎月13,332円上昇する結果となりました。
「毎月1.3万円の差であれば返済負担はそこまで変わらないな」と感じた方もいらっしゃるでしょう。しかし変動金利には、金利が上昇するリスクがあるため、将来的に返済額がさらに増える恐れがあります。
また固定期間が終了したときの金利で返済額が再計算されるため、10年後の金利が借入時よりも上昇していると返済負担はさらに増える恐れがあるのです。
金利を再び固定させた場合
固定期間終了後に金利を再び10年間固定させた場合、借入時の適用金利は、基準金利2.460%から引き下げ幅0.800%を差し引いた1.66%です。よって返済11年目以降の毎月の返済額は、以下のように増加します。
返済10年目まで | 返済11年目以降 | |
毎月の返済額 | 104,543円 | 119,526円 |
毎月の返済額が、14,984円増えていますね。金融機関によっては、さらに特約設定手数料の支払いが必要です。
金利を再び固定させると、変動金利に移行した場合よりも返済負担が増える代わりに、以後10年間は金利が変動する心配はありません。返済21年目になると、再び変動金利に移行するか金利を固定させるかを選択する必要があります。
このように10年固定金利の住宅ローンは、返済途中で金利選択が発生します。借り入れを検討するときは、返済当初の返済額だけでなく、固定期間が終了したあとの返済額も返済シミュレーションで入念に確認しましょう。
10年固定金利住宅ローンの推移
ここで、10年固定金利住宅ローンの金利の推移を見てみましょう。
※出典:フラット35
固定期間選択型の金利は、変動金利型とは異なり細かく変動しているのがわかりますね。これは、固定期間選択型が決まる際の指標である「新発10年物国債」の金利が、日々上下しているためです。
この数年は、大きな変動が無いように見えます。しかし実際は、金融機関が優遇金利を毎年引き上げているため、借入時に適用される金利は年々下がっています。
10年固定金利がおすすめなのは10年後に残債のすべてを繰り上げ返済できる人
10年固定金利の住宅ローンの借り入れがおすすめなのは、金利の固定期間終了後に残債を一括返済できる可能性がある人です。
固定期間選択型は、金利の固定期間終了後に変動金利と固定金利のどちらを選んでも、毎月の返済負担は基本的に増えます。しかし10年後に残債を一括返済してしまえば、返済負担の増加を心配する必要はありません。
また借り入れから10年間は住宅ローン控除によって、所得税の還付や住民税の軽減を受けられます。住宅ローン控除で軽減できた税額分を、一括返済の資金に充てるために貯蓄しておくのも1つの方法でしょう。
もし借り入れから10年後に一括返済できない場合は、返済負担を下げるために繰り上げ返済をして、残高を減らすのも選択肢の1つです。
固定期間の終了後に、他の金融機関が取り扱う住宅ローンに借り換える方法もあります。ただし借り換えには諸費用がかかるため、メリットがあるとは限りません。固定期間終了後に借り換えることを前提に、10年固定金利を選ぶのは避けた方が懸命でしょう。
まとめ:10年固定金利は将来の返済額も確認して慎重に選ぶと後悔しない
10年固定金利の住宅ローンでは、借り入れから10年間は金利の上昇を心配することなく、変動金利なみの低金利によって効率的に元本を返済していけます。
しかし金利の固定期間が終了すると、利息計算に適用される金利が上昇して返済負担が増えるケースがほとんどです。「将来、返済負担が増えても返していけるのか」「固定期間終了後に一括返済ができる見込みはあるのか」などを踏まえて慎重に検討しましょう。
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大手保険会社で培った知識と経験から、保険、不動産、税金、住宅ローンなど幅広いジャンルの記事を執筆・監修。