住宅ローンを組むにあたり、「どの団信に加入すれば良いのだろう」「健康診断で異常を指摘されたけれど団信に加入できるのだろうか?」といった悩みを抱えていませんか?
団体信用生命保険は、金融機関によって商品内容が異なるため、入念に比較して選ぶことが大切です。また健康診断で異常を指摘された方でも、団信に加入する方法はあります。
ただし団信の選択によっては、住宅ローンに上乗せ金利を生じて、返済負担が増える可能性があるため慎重に判断しなければなりません。そこで今回は、住宅ローンの団信について保障内容や告知事項、選び方などをわかりやすく解説します。
- 団体信用生命保険の保障内容
- 団信に特約を付加した場合の保障と保険料
- 健康状態に不安のある人が団信に加入する方法
不動産業界の活性化・透明化を目指し、2018年仲介手数料定額制の不動産会社「イエツグ」を設立。お客様の「心底信頼し合えるパートナー」になることを目標に、良質なサービスと情報を提供している。
保有資格:宅地建物取引士・2級ファイナンシャルプランナー技能士・住宅ローンアドバイザー・既存住宅アドバイザー・防災士
健康状態に不安のある人が団信に加入する方法
目次
団信に加入すると死亡時に住宅ローンの返済が免除される
団体信用生命保険(団信)とは、借り入れた人が万一の場合に、住宅ローン残債と同額の保険金が支払われる保険です。保険金は、住宅ローンを借り入れた人ではなく、借入先の金融機関に支払われます。
団信で保障されるのは、借り入れた人が死亡した場合や、所定の高度障害状態に該当した場合です。高度障害状態とは「両眼の視力を全く永久に失った」「言語またはそしゃくの機能を全く永久に失った」などが挙げられます。
ただし、借り入れた人が団信の保障開始から1年以内に自殺した場合や、故意に高度障害状態となった場合、保険金は支払われず住宅ローンの残債は0円となりません。
また団信の保険金額は、住宅ローンの残債と同額であるため、住宅ローンの返済が進むにつれて保障額が減ります。残された家族の生活費や子供の教育費に備えるためには、生命保険へ加入する必要がある点にご注意ください。
多くの住宅ローンは団信への加入が融資条件
多くの金融機関は、団信への加入を住宅ローンの融資条件にしています。借り入れた人が亡くなった場合に、金融機関が融資したお金を回収できず、不良債権を抱えるリスクを防ぐためです。
住宅ローンの完済時の年齢を80歳に制限している金融機関が多いのは、団信に加入できる年齢が多くの場合で80歳までだからです。
また団信への加入が融資条件となっている場合、保険料は金融機関が負担してくれます。一方で団信への加入が必須でないフラット35は、「新機構団信」を付帯する場合、金利に0.2%の上乗せが必要です。
団信に加入するためには健康状態の告知が必要
団信に加入する際は、住宅ローンを借り入れる人の健康状態を告知しなければなりません。たとえば死亡・高度障害を保障する団信に加入する場合、以下のような項目の告知が必要です。
- 告知日より最近3ヶ月以内に受けた医師の治療や投薬
- 告知日より過去3年以内の特定の疾病による手術や治療・投薬の状況
- 告知日時点での身体障害の有無
告知した健康状態が、保険会社の引受基準に当てはまらず審査に落ちた場合、団信に加入できません。つまり団信の加入を融資条件としている金融機関で、保険会社の審査に落ちると住宅ローンが組めなくなってしまいます。
一方で健康診断で異常が見つかった方や、過去に大病を患った経験のある方でも、告知項目に該当しなければ、団信へ加入できます。
告知義務違反をすると保険金が支払われない
告知書に虚偽のことを記載した場合や、告知すべき病気があったにもかかわらず意図的に告知しなかった場合は、告知義務違反となります。
告知義務違反となると、支払条件に該当しても保険金が支払われず、住宅ローンの残債はなくなりません。そうなると困るのは、あなた自身やご家族です。
そのため告知書に記入する際は、真実を正直に記入しましょう。
特約は必要?団信の保障内容を比較
団信には、死亡・高度障害を保障するものの他に、以下のような種類があります。
内容・特徴 | |
一般団信 | 死亡・高度障害 |
がん保障 | 死亡・高度障害に加えてがん(悪性新生物)も保障する団信 |
3大疾病保障 | 死亡・高度障害に加えて3大疾病(がん・心疾患・脳血管疾患)も保障する団信 |
7大疾病保障 | 死亡・高度障害と3大疾病に加えて高血圧性疾患・糖尿病・慢性腎不全・肝硬変も保障する団信 |
8大疾病保障 | 死亡・高度障害と7大疾病に加えて慢性膵(すい)炎を保障する団信 |
11疾病保障 | 死亡・高度障害とがんに加えて⾼⾎圧・糖尿病・腎疾患・肝疾患・慢性膵炎・脳⾎管疾患・⼼疾患・⼤動脈瘤解離・上⽪新⽣物・⽪膚がんを保障する団信 |
全疾病保障 | 精神障害を除くすべての病気やケガを保障する団信 |
ワイド団信 | 告知項目が少なく、健康状態に不安がある方でも申し込みやすい団信 |
死亡・高度障害以外を保障する団信は、住宅ローンの金利に0.1〜0.4%程度の上乗せが必要な場合もあれば、無料で付帯される場合もあります。
金利の上乗せが必要な場合、返済負担が増えることになります。また団信の特約は、住宅ローンの返済が始まったあとに付加できません。
そのため団信に特約を付加するかどうか判断するときは、住宅ローン契約時に返済シミュレーションで毎月の返済負担が問題ないか入念に確認しましょう。
団信を選ぶときは上乗せ金利と保険金の支払条件を確認する
団信を選ぶときは、上乗せ金利と保険金の支払条件の両方を確認しましょう。
たとえば楽天銀行の住宅ローンは、上乗せ金利なしで8大疾病保障が付帯されています。しかし、8大疾病のいずれかで12ヶ月以上の働けない状態が続かなければ、保険金は支払われません。
一方で、イオン銀行の住宅ローンに8大疾病保障を付帯するためには、金利に0.3%上乗せが必要です。その代わり保険金の支払条件は、以下のように楽天銀行の住宅ローンよりも緩くなっています。
- がん:診断時
- 急性心筋梗塞・脳卒中:所定の状態が60日以上継続した場合
- その他の5疾病:就業不能状態が12ヶ月以上継続した場合
このように団信の加入時には、上乗せ金利と保険金の支払条件の両方を必ず確認し、わからない点は金融機関や保険会社の担当者に問い合わせましょう。
通常の団信に入れない人はワイド団信への加入を検討しよう
もし健康状態に不安があり、通常の団信に加入できない可能性のある場合はワイド団信の加入を検討してみましょう。
ワイド団信とは、告知項目が少なく、高血圧や糖尿病など健康状態に不安がある方でも申し込みやすい団信です。健康状態が問題ある方でも、ワイド団信に加入できると住宅ローンを融資してもらえます。
ただしワイド団信に加入するためには、どの金融機関でも0.2%ほどの上乗せ金利が発生するため、返済シミュレーションで返済負担が問題ないか確認しましょう。
団信ではなく生命保険で備えるのもおすすめ
団信に特約を付加して保障を充実させるのではなく、保険会社が取り扱う生命保険に加入して備えるのも1つの方法です。
たとえば、働けなくなった場合の住宅ローンの返済負担に手厚く備えたい場合は、就業不能保険を検討してみましょう。就業不能保険とは、病気やケガで働けなくなった場合に、毎月一定額の保険金が、保険期間の満了もしくは働けるようになるまで支払われる保険です。
また、すでにがん保険や就業不能保険に加入している方は、特約を付加せず通常の団信に加入すると保障の重複を防げます。そのため団信を選ぶ際は、加入中の生命保険契約を必ず確認しましょう。
あえて団信に加入せず死亡保険に加入する方法もある
フラット35のような、通常の団信でも上乗せ保険料が必要な住宅ローンを契約する場合は、団信の代わりに収入保障保険に加入する方法があります。
収入保障保険とは、保険の対象となる人(被保険者)が、死亡・高度障害状態になった場合に、毎月一定額の保険金が保険期間の満了まで支払われる保険です。
収入保障保険に限らず生命保険は、若い人ほど保険料が割安です。さらに喫煙しない方や血圧・BMIが所定の範囲内である健康な方は、保険料が割り引かれる場合があります。そのため若い方や健康に自身のある方は、収入保障保険の方が保険料負担を抑えられる可能性があるのです。
まとめ:住宅ローンを組むときは団信も比較し最適なものを選ぼう
団信にはさまざまな種類があるため、保険金の支払条件や上乗せ金利を入念に比較して選びましょう。団信ではなく、保険会社の生命保険に加入する選択肢もあります。
また団信に加入する際は、健康状態を告知しなければなりません。告知書には、ご自身の状況を正直に記入しましょう。健康状態に不安がある方は、ワイド団信を検討するのも一つの方法です。
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大手保険会社で培った知識と経験から、保険、不動産、税金、住宅ローンなど幅広いジャンルの記事を執筆・監修。