不動産を購入したら「登記」をする必要があります。不動産の登記の際、所有者の氏名・住所も登録しますが、その時に登録する住所が新住所なのか旧住所(現住所)なのかは、税金や手続きの効率化に影響するのでとても重要です。
万一、間違った住所で登記をすると、数十万円~数百万円のお金が一瞬で無駄になることも。不動産購入には大きなお金が動きますので、登記する際には新住所登記と旧住所登記のどちらがいいか、しっかり見極めましょう!
(追記 2022年1月16日)
令和4年度の住宅ローン控除については適用要件など大幅に改正となっております。
最新の住宅ローン控除制度については下記記事をご参照ください。
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本編の内容は「3:02」からお話させていただいています。
目次
不動産登記の重要性
不動産は、自分が所有者であることを証明する必要があります。
登記には不動産の所有者が誰であるかを証明する役割があるので、売買などで所有者が変更した際には必ず登記変更をしなければなりません。
不動産所有者の住所・氏名は法務局で誰でも確認できる
不動産登記は、所有者を証明するものなので、登記情報を調べれば誰でも不動産の名義人を確認できます。
また、不動産登記情報は、登記事項証明書として取得することが可能。登記事項証明書の『甲区(権利者のその他の事項)』には、歴代の所有者の住所・氏名が表示されます。
不動産登記の住所は所有者になった時点の住所を登録
不動産登記で登録する住所は、不動産を取得する時点の住所です。
登記上の所有者の情報は常に新しくなければならず、登録以降に住所を変更した場合には、登記に登録した住所の変更手続きをする必要があります。
ただし、不動産登記の住所変更には法的拘束力はありませんので、放置しても罰則はありません。
とはいえ、不動産の権利を主張するためには正しい情報を登記している必要があるので、住所変更をしないと後々問題になるケースも出てきます。
不動産を取得する場合の新住所登記のメリット・デメリット
ここからは、新住所で登記する場合のメリット・デメリットについて説明します。
・登記費用の節約
・住宅ローン控除を適用する場合の条件が厳しくなる
詳しく見ていきましょう。
メリット1.登録免許税の軽減措置に必要な手続きが削減できる
不動産を購入して登記をする際には、登録免許税を支払う必要があります。
購入したのが自宅(居住用)であれば、登録免許税の軽減対象に。軽減措置を受けるためには、市町村が発行する「住宅用家屋証明書」の提出が必要になります。
ただ、そこで問題になるのが登記上の住所です。
市区町村は、登記上の所有者と実際に住んでいる人が同一人物であることを確認できないと住宅用家屋証明書を発行しません。
つまり、登記上の住所が旧住所である場合に家屋証明書を取得するには、新住所への登記変更する必要があるということです。
最初から新住所で登記をしていれば登記変更は不要なので、速やかに住宅用家屋証明書を発行してもらえます。
メリット2.将来支払う登記費用が節約できる
不動産を所有している以上、不動産を手放す可能性は誰にでもあります。
・相続
・離婚
・転勤
・介護
当然ながら、不動産手放すと所有権は購入した相手に移ります。このときの住所は、手放した時点の住所でなければなりません。
不動産を売却する場合、買い手側は契約している本人が不動産所有者なのかが心配になるもの。もし登記上の住所と現住所が違っていたら、住民票などを取得して所有者であることを証明する必要性がでてきます。
また登記の住所変更する場合にはお金がかかるので、売却時の費用が増えることにも。不動産を購入した時点から新住所にしておけば、住所変更をする必要がないので登記費用を節約することができるということです。
デメリット1.不動産を購入するまでに新住所登記が間に合わない可能性が
住宅ローンを借り入れるには、ローン審査の承認後に銀行と金銭消費貸借契約を締結します。
もし新住所で登記をする場合、金銭消費貸借契約する時点で住民票や印鑑証明書に記載のある住所を新住所にしなければなりません。
つまり、ローン契約以前に新住所の手続きをすべて完了させることが必要となるということです。
ただ住民票や印鑑証明書の住所変更は、役所での手続きなので時間がかかるもの。さらに新築物件の場合には完成後ではないと住所変更できない場合があるので、新住所で登記したくてもローン契約に間に合わないことも考えられるのです。
デメリット2.中古物件に住宅ローン控除を適用する場合には要注意
中古物件の住宅ローン控除の適用をする場合、耐震補強工事が必要な場合があります。
昭和56年12月31日以前に建築された建物
ローン控除の対象となる耐震補強工事には、耐震基準適合証明書が必要です。
また、耐震基準適合証明書は入居開始までに取得しなければ、ローン控除の対象となりません。
新住所への変更は入居した後にするものなので、先に新住所に変更すると入居扱いとなって住宅ローン控除の対象外となってしまいます。
住宅ローン控除は通算で数百万円に及ぶ還付金が受けられる可能性がある制度。登記のミスで控除の対象外となってしまったら非常にもったいないので、注意するようにしてください。
中古住宅の購入を検討されている方は、耐震基準適合証明書について詳しく説明しておりますので下記記事も合わせて参照してください。
不動産を取得する場合の旧(現)住所登記のメリット・デメリット
次に、旧住所登記(現住所登記)をした場合のメリット・デメリットについて説明します。
基本的には、新住所登記のメリットがデメリットに、新住所登記のデメリットがメリットになりますが、一部注意点もあります。
・売却時に登記費用がかかる
メリット1.登記時点での役所への手続き回数が最小限で済む
旧住所で登記する場合、銀行とのローン契約までに住所変更をする必要がありません。
そのため住宅ローンの本審査の申請の際に住民票と印鑑証明書を登記の分まで予め取得が可能であり、役所に行く手間を最小限にできます。
デメリット1.特例申請時には新住所に変更する必要がある
登録免許税の軽減措置の適用を受けるためには、住宅用家屋証明書の取得が必要です。
住宅用家屋証明書が申請できるのは、居住用の不動産に限定されますので、購入した物件の証明書(登記事項証明書や住民票)が必要になります。
証明書の住所は新住所であることが条件ですので、旧住所から新住所へ変更をする必要があります。
ちなみに、住宅用家屋証明書の申請の際には、申請時点で住んでいる物件(賃貸物件を含む)の処分方法の提示も必要です。
・現自宅を売却する場合⇒売却の売買契約書などを提示
・現物件が賃貸住宅の場合⇒賃貸借契約書などを提示
デメリット2.売却時に登記上の住所を統一する必要がある
将来自宅を売却する際に、現在住んでいる住所の記載がある印鑑証明書を法務局へ提出する必要があります。
その際、印鑑証明書に記載のある住所と不動産登記簿謄本に記載のある住所が一致していなければ、新しい所有者に対して所有権の移転登記ができません。
登記を司法書士に依頼した場合、住所変更登記として2万円程度の経費が発生しますのでご注意ください。
なお、司法書士に手続きを依頼する場合も、印鑑証明書や前に住んでいた住所と、今住んでいる住所と繋がりを証明するために住民票を提出が必要です。
何回も引っ越しをしている場合は、登記上の記載のある住所から今現在までの住所履歴が必要になります。
住民票では確認しきれない場合もありますので、その場合は戸籍の附票を取得する必要があります。
(戸籍の附票は本籍地のある市区町村で取得します。)
新住所登記と旧住所登記の良し悪しは何を優先するかで変わる
不動産登記をする場合の住所で、新住所と旧住所(現住所)どちらがいいかは状況によって異なります。
新住所登記と旧住所登記(現住所登記)のメリット・デメリットを一覧にまとめましたのでご覧ください。
メリット | デメリット | |
新住所登記 | 1.新住所登記だと、登録免許税の軽減税率を受けるために購入物件を住居として専ら使用するという証明書(専用住宅証明書や住宅用家屋証明書)が不要になるため、用意する書類が少なくなる。
2.購入物件を将来的に売却するとき、住所変更登記が不要になるため、登記費用約2万円を節約できる。 | 1.金消契約までに住所を変更する必要があるため、売買契約から引き渡しまでの期間が短い場合は手続きが間に合わなくなる。
2.住宅ローン控除のため耐震補強工事を行う場合、入居開始までに改修工事を実施し耐震基準適合証明書を取得する必要がある。新住所登記をしてしまうとこの制度の対象外となり、住宅ローン控除は受けられなくなる。 |
旧住所登記 | 1.金銭契約までに住所変更する必要がないため、住宅ローンの本審査の申請時に必要となる住民票と印鑑証明書を登記用を含めあらかじめ取得することができ、役所に行く手間が1回省ける。 | 1.登録免許税の軽減措置を受けるためには、住宅用家屋証明書を取得する必要がある。賃貸住宅に居住の場合は賃貸借契約書を、持ち家の場合は売却する自宅の売買契約書、もしくは媒介契約書を用意する必要がある。また引き渡し後2週間以内に住所を変更しなければならない。
2.購入物件を将来的に売却するとき、新しい所有者に所有権を移転するためには、購入物件の前に居住していた登記上住所から現在の住所に変更する必要がある。そのため、住所変更登記費用の約2万円が余計にかかる。 |
次の事項に該当する方は、旧住所登記(現住所登記)のメリットが大きいといえるでしょう。
・売却するときの住所変更登記は自分で行う
・手続き費用は惜しまず、一日でも早く引き渡しを受けたい
・契約から引き渡しまでの期間が短く、住所変更をしていると引渡日までに住宅ローンが間に合わないと想定される
逆に上記に該当されない方は、新住所登記の方が無難だといえます。
登記上の住所は、現時点の所有者の住所を表示することが必要。新住所登記をする方が、将来、住所変更の手続き回数や費用が少なく済むのです。
(追記 2022年1月17日)
引越しをしてもいないのに、新しい住所に引越ししていることにする新住所登記を勧めるのは悪徳業者だ!
と解説するブログがいくつか散見されます。
その根拠は住民基本台帳法に定める下記法律になります。
住民基本台帳法 第23条
転居をした者は、転居をした日から14日以内に市町村長に届け出なければならない
そうすると、居住実態が無いのにもかかわらず、住所変更をすることは法律違反ということです。
しかしながら、司法と行政のギャップと言われており、役所も新住所登記の存在を承知の上で住所変更の手続きを進めてもらえます。
もちろん、何が何でも新住所登記してくださいというのは幇助にあたりますが、金融機関から新住所登記をしてくださいと言われれば致し方ないことですし、法律に厳しい銀行が求めてくるわけですので、暗黙の了解といった理解で良いかと思います。
余談にはなりますが、2021年に不動産登記法が改正され、住所変更登記が義務化されました。猶予期間は2026年4月頃までとされており、今後住民基本台帳法もそれに合わせて改正があるのではないかと個人的に考えております。
居住実態のない転居が法律的に認められれば、心置きなく新住所登記を選択することができ、所有者不明土地問題解決の手助けになるのではと思料しております。
まとめ
今回は、新住所で登記をするときと、旧住所で登記をするときのそれぞれのメリットとデメリットについてお話をしました。
登記は税金に関係しているので、登記までの準備によっては十万円前後の節税効果を期待できる場合があります。
しかし、不動産の営業マンは不動産のプロですが、税務や登記のプロではありません。
一方、司法書士は登記のプロではありますが、不動産のプロではありません。
残念ながら、不動産の営業マンや司法書士は登記による節税対策を教えてくれないことが多いのです。
もしかしたら既に住宅を購入した方の中には、知らずのうちに節税対策をできたのにされなかった方が大勢いらっしゃると思います。
そのため不動産と税金、登記について相談したいときは、不動産のプロと登記のプロが提携した仲介業者に依頼することがおすすめです。
弊社イエツグは司法書士事務所と提携しておりますので、お客様の状況に合わせた最適な登記の方法のアドバイスをさせていただきます。
更に、弊社にてご紹介できる物件であった場合、諸費用として不動産購入時にかかる仲介手数料は無料+売主報酬55%プレゼント(キャッシュバック)もしくは仲介手数料定額18万2,900円(税抜)にてお手伝いしております。
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