住宅ローン控除制度終了?!見直しで2022年以降「1%控除」じゃなくなる可能性が

日本経済新聞は、2020年12月3日、2022年度の税制改正で、住宅ローン控除の控除額が見直される可能性があると報じました。もし、報道通りに住宅ローン控除制度が見直された場合、節税効果が減少してしまうかもしれません。

政府・与党は住宅ローンの控除額について、2022年度にも見直すとの方針を税制改正大綱に明記する方向で調整する (2020/12/3日経新聞

本記事では、2022年度の税制改正で住宅ローン控除制度がどのように見直される見通しなのかわかりやすく解説していきます。

この記事でわかること
  • 住宅ローン控除が見直される内容
  • 住宅ローン控除の控除額が見直されると税負担がどうなるか
  • 現時点で判明している住宅ローン控除の改正案
執筆者 丹拓也
執筆者 丹拓也株式会社イエツグ代表取締役
不動産業界の活性化・透明化を目指し、2018年仲介手数料定額制の不動産会社「イエツグ」を設立。お客様の「心底信頼し合えるパートナー」になることを目標に、良質なサービスと情報を提供している。
保有資格:宅地建物取引士・2級ファイナンシャルプランナー技能士・住宅ローンアドバイザー・既存住宅アドバイザー・防災士

2022年以降、住宅ローン控除の「計算方法」が見直しされる可能性

住宅ローン控除とは、住宅ローンを組んだ人が受けられる税負担の軽減制度です。年末時点における借入残高の1%を、所得税や住民税から控除してもらえます。

現行の住宅ローン控除制度

住宅ローン控除の控除期間は最大で10年ですが、消費税10%が適用される住宅を購入し、所定の期日までに入居すると控除期間が13年に延長されます。控除額の計算方法は、以下の通りです。

〜10年目
11~13年目
下記①②③のうちもっとも小さい額

住宅ローン残高の1%
②最大控除額:40万円
※長期優良住宅は50万円
③所得税+住民税額

下記①②③④のうちもっとも小さい額

住宅ローン残高の1%
②最大控除額:40万円
※長期優良住宅は50万円
③所得税+住民税額
④建物の取得価格(上限4,000万円)の2%÷3

仮に、返済3年目の年末時点における借入残高が2,500万円であった場合、残高の1%である25万円が所得税や住民税から控除されます。

2022年度に変更される可能性がある点

2022年度の税制改正では、住宅ローン控除の控除額が「年末時点の借入残高の1%」と「年間の利息負担」のどちらか少ないほうになるといわれています。よって、年間で支払った利息を超える控除は受けられません。

なお、11~13年目の控除額について、これまで同様に「建物の取得価格(上限4,000万円)の2%÷3」が考慮されるのかは不明です

また、税制改正時に住宅ローン控除の適用をすでに受けていた場合、控除額は控除期間が終了するまで従来通りの方法で計算されます。途中で控除額の計算方法が変更されることはないでしょう。

控除額が見直しされる背景

住宅ローン控除の控除額が見直されるのは、2020年現在も続く低金利が主な要因です。

2020年12月現在、住宅ローン金利は変動金利0.38%が最小値です。メガバンクでさえも、変動金利を0.5%を割る値で提供しています。

ひと昔前の住宅ローン金利は、3%や4%台が当たり前であり、住宅購入者の利息負担は高額でした。住宅ローン控除制度は、もともと住宅を購入する人の金利負担を軽減する目的で開始されたのです。

しかし低金利の現在は、控除率よりも借入金利のほうが低いため、1年間で支払った利息総額が住宅ローン控除による節税額を下回るケースも珍しくありません。

手元に現金があるにもかかわらず住宅ローンを借り入れたり、繰り上げ返済をせずに借り続けたりする人の増加が懸念されているため、住宅ローン控除の見直しが検討されているのです。

2022年に住宅ローン控除制度が見直しされた場合の控除額をシミュレーション

では、住宅ローン控除の控除率が見直されると控除額はどのように変わるのでしょうか?モデルケースを用いたシミュレーションで確認してみましょう。

シミュレーションに用いる借入条件は、以下の通りです。

  • 借入額:4,000万円
  • 金利:0.475%(変動金利)
  • 借入期間:35年(元利均等方式)
  • 返済開始月:1月
上記の条件で、年末時点における借入残高の1%と年間利息総額を計算すると、結果はそれぞれ以下の通りとなりました。

返済1年目 10年間合計
年末時点の借入残高の1% 389,470円 3,412,497円
年間利息総額 187,709円 1,648,637円
差額 201,760円 1,763,860円

返済1年目における年間利息総額は、年末残高の1%の半分未満です。返済期間が10年経過すると、年間利息総額と年末残高の1%の差額は、約176万円となります。よって、住宅ローン控除制度が見直されると、控除額が大幅に減額となる恐れがあるのです。

控除額の見直しによって住宅ローンの借り方が変わる可能性がある

新しい住宅ローン控除制度は、低い金利で住宅ローンを借り入れると利息負担が減るため、節税効果が薄れてしまいます。

一方で控除期間中は、借入残高の1%を上限に利息を国が負担してくれます。そのため、金利よりも、サービスや商品内容を重視して住宅ローンを選ぶ人が増えるのではないでしょうか

たとえば、金利が高かったとしても、何かあったときすぐに相談できるように、窓口のある金融機関で住宅ローンを組む人が増えるかもしれません。

また、住宅ローン金利に上乗せして保証料を支払い住宅購入時の諸費用負担を抑える人や、金利を上乗せして団体信用生命保険の保障を手厚くする人が増える可能性もあります。

保証料とは
保証料とは、保証会社に支払う費用
住宅ローンの返済を滞納した場合、債務者に変わって保証会社が金融機関にローンを全額返済(代位弁済)してくれる。その後債務者は、保証会社にローンを返済しなければならない
団体信用生命保険とは
団体信用生命保険とは、借り入れた人が亡くなったり重い障害状態になったりしたときに、残債が免除される保険
住宅ローン金利に0.1〜0.4%を上乗せすると、保障の対象を死亡・高度障害だけでなく、がんや三大疾病(がん・心筋梗塞・脳卒中)などに拡大できる場合がある

とはいえ、住宅ローン控除の控除期間が10〜13年であるのに対し、返済期間は20年や30年と長いです。よく検討せずに高い金利で住宅ローンを借り入れると、控除期間が終わった後の返済負担が家計を圧迫する恐れがあります。

住宅ローン控除制度だけでなく、住宅を購入したあとのライフプランも考慮したうえで借り入れることが大切な点は、制度が見直されたあとも変わりません。

住宅ローン控除は2021年度も控除期間や要件が変更される見込み

見直しが検討されているのは、控除額の計算方法だけではありません。ここでは、2020年12月現在で、住宅ローン控除制度について変更される可能性がある点を解説します。

控除期間が13年に延長される特例措置の入居期限が2年延長

国土交通省と財務省は、2021年度税制改正にて、住宅ローン控除の控除期間が13年に延長されるための入居要件を2年間延長する方針です。

2019年10月の消費税増税の際に、住宅ローン控除の控除期間が最大で13年となる特例措置が実施されました。消費税増税の影響による住宅の買い控えを防ぐことが、特例措置の実施目的です。

特例措置を受けるためには、2020年末までに購入した住宅に入居する必要があります。それが2021年の税制改正では、入居期限が2022年末までに延長される予定です。

住宅ローン控除の適用要件が緩和

2021年度の税制改正では、住宅ローン控除の床面積の要件が「50㎡以上」から「40㎡以上」に緩和される可能性があります。

床面積の要件が緩和される理由は、夫婦2人世帯や単身者などが住宅を購入した場合でも、住宅ローン控除を利用できるようにするためです。

ただし床面積の要件が緩和される一方で、1,000万円程度の所得制限を設ける案も議論されているため、今後の動向に注目が必要でしょう。

まとめ:制度終了ではないが、2020年住宅ローン控除の控除額が減額となる見通し

住宅ローン控除制度は、住宅を購入する人の金利負担を軽減する目的で開始された制度。住宅ローン金利が1%を切るのが当たり前となった現在では、控除率が見直されても不自然ではありません。

住宅ローン控除の控除額が見直されるのは、2022年度の税制改正が実施されるときです。住宅ローン控除制度が今後どのように変更されるのか、新しい情報が入り次第お届けする予定です。

住宅ローン控除の要件や控除額は、住宅ローンを組むタイミングによって変わるため、よく理解できない方は多いのではないでしょうか。

弊社イエツグには、FP住宅ローンアドバイザーといった有資格者が在籍しております。住宅ローン控除制度についてわかりやすく説明するだけでなく、キャッシュフロー表も無料で作成させて頂ますので、住宅を購入するタイミングが判断しやすくなります。

住宅の購入を検討されている方は、弊社イエツグまでお気軽にご相談ください。

イエツグは、住宅とともに想いを”人から人に継ぐ”という願いから付けた社名です。仲介手数料を格安・定額にすることで、節約できた費用を住宅の質を向上させるために使っていただきたいと考えております。住まいを”継ぐ”には、耐震性や価値を向上することが不可欠だと思うからです。 イエツグ代表の私、丹は、元消防士。東日本大震災で多くの家屋が倒壊し、大切なものを失った方々を目の当たりにしたことにより、既存住宅の価値を上げ、良質な住宅を流通させることがこの国の急務なのではないかと考えるようになりました。小さな会社ではありますが、社員一同、同じ志を持って対応させていただいております。ぜひ一度ご相談ください。
監修者 品木彰
監修者 小林だいさく金融ライター、ファイナンシャルプランナー。
大手保険会社で培った知識と経験から、保険、不動産、税金、住宅ローンなど幅広いジャンルの記事を執筆・監修。

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