不動産売買の手続きは、拘束時間の長さなどから、所有者本人による対応が難しい場合があります。
もし不動産売買の手続きが不安だったり、手続きに立ち合うのが難しい場合には、手続きを代行してくれる「代理人」を擁立することを考えましょう。
代理人による手続きを行うためには、法的な手続きによる「委任」が必要です。今回は代理人制度の解説と、信頼できる代理人に依頼するための注意点についてご紹介します。
- 「代理人」ってなにをする人?
- どんなときに代理人は必要?
- 代理人を立てるための委任状の書き方
不動産売買手続きを代行してくれる代理人。
どんなとき、どうやって依頼するものなんだろう?
不動産業界の活性化・透明化を目指し、2018年仲介手数料定額制の不動産会社「イエツグ」を設立。お客様の「心底信頼し合えるパートナー」になることを目標に、良質なサービスと情報を提供している。
保有資格:宅地建物取引士・2級ファイナンシャルプランナー技能士・住宅ローンアドバイザー・既存住宅アドバイザー・防災士
目次
不動産売買における「代理人」とは所有者に委任された人
不動産売買における代理人とは、「所有者から不動産の売買契約を行う権利を与えられた人」です。
不動産の所有者は「委任状」によって代理人に代理権を与え、代理人は委任状に指定された範囲における売買取引が可能になります。
委任状には、主に以下の項目が記載され、代理権の範囲を明確に指定されます。
- 売買物件(土地、建物など)に関する情報
- 委任する売買契約の範囲
- 委任状の有効期限
- 委任者(不動産の所有者)および代理人の住所氏名 など
委任状書く際の注意点については、後述で詳しく解説いたします。
不動産売買で代理人が必要となるケース
不動産売買契約は、所有者本人による手続きが原則です。
代理人を立てるケースは、法的な制約が多い場合や、所有者本人が手続きに立ち合えない場合など、一部のケースに限定されます。
ケース1.所有者の移動が困難なとき
不動産の売買手続きには、基本的に売主・買主双方が同席しなければなりません。
しかし物件が遠方にある場合や、所有者が高齢のため移動が難しい場合などには、選任された代理人が手続きを代行できます。
なお、現在インターネット上で不動産売買に関する重要事項説明を行う「IT重説」の社会実験が実施中です。
売買におけるIT重説は、限られた実験登録事業者にのみ実施が認められており、登録事業者が仲介する売買取引なら、遠方からでも売主・買主本人が手続きを行えます。
弊社イエツグは、本社会実験に開始当初から参加している59事業者のひとつ。遠方の物件売買のご予定がございましたら、ぜひ一度ご相談ください。
ケース2.複数人の共同名義
夫婦での共同購入や相続などによって、1つの不動産に対する所有権者が複数人である場合も、売買時には共有者全員の立ち合いが必要です。
しかし権利者の人数が多ければ多いほど、全員が同時に立ち合うのは困難になっていきます。こうしたケースの場合には、全員が1人もしくは数人の所有者に委任できれば、所有権者が一同に集まる必要なくなり、手続きを進められます。
ケース3.所有者が未成年・成年被後見人
不動産の所有者が未成年である場合、自らの意思で意思決定する能力がないと見なされ、所有権者単独での売買手続きは行えません。この場合の不動産売買には「親権者」または「未成年後見人」の法廷代理人が連署する、あるいは代理人による署名・捺印で手続きを行います。
また成人でも「成年後被後見人」「被保佐人」「被補助人」との審判を受けている場合には、同様に意思決定能力が十分でないと判断されます。この場合も本人による手続きは行えず「成年後後見人」「補佐人」「補助人」による代理が必要です。
「法定代理」…難しい言葉がでてきたね。代理人によって、立場や役割もさまざま。どんな基準で選んだらいいんだろう?
不動産売買における代理人の種類
代理人の選出は、その過程によって「任意代理」と「法定代理」に分類されます。
任意代理
多くの不動産取引においては、所有者が任意で代理人を選べます。
- 遠方に住んでいるから息子に契約を委任したい
- 怪我をして入院中だから共有者の1人に委任したい
このようなケースでは、任意代理となります。
権利関係が複雑な物件では、弁護士や司法書士といった専門家、遠方の物件なら地域の事情に精通した不動産会社など、物件に応じた代理人を選出するとよいでしょう。なお、代理人は外部の人間から選出する義務はありません。複数人が権利を所有している不動産の売買では、所有権者のうちの一人を代理人とするケースもあります。
法定代理
所有権者が未成年または成年後被後見人の場合、法律行為である売買を行うためには法定代理人の同意が必要です。
この法定代理人は未成年なら親権者または未成年後見人、成年後被後見人なら成年後後見人が家庭裁判所によりに指定されます。
- 認知症によって代理人を選任する意志が確認できない
- 婚姻していない未成年者なので単独で売買契約できない
- 精神障害により判断能力が不十分
このような状況で選任されるのが、法定代理人です。
なお、法定代理人による代理は不動産売買に限らず、対象者の法律行為全般が対象です。もし法定代理人本人が不動産売買を行うのが難しい場合には、法定代理人の権限において任意代理人を選出できます。
「任意代理」で代理人を選任するには委任状が必要だよ!
希望の形で取引にするために、委任状の内容にも注意しておこう。
不動産売買で代理人を立てるための委任状の書き方における注意点
所有者本人に代わり不動産売買を代行してくれる代理人は、ときに所有者の大きな助けとなります。
しかしその一方で、高額な不動産を扱うことからトラブルにもつながりやすいため、委任状の内容には十分に注意する必要があります。
登記事項証明書、登記済権利証の内容と合致しているか確認
委任状の紙面上の物件情報は、登記事項証明書や登記済権利書といった書類と売却を行う不動産の表示項目に違いがないように記述しましょう。
内容が合致していない場合、委任が無効となってしまいます。
委任内容を明記する
委任状に基づいた取引は、所有者本人が行った取引と同じ効力を持ちます。代理人が不当な内容での取引を行わないよう、委任内容を限定して明記しておきましょう。
委任内容を限定し、必要な内容にのみ代理権を設定しておくことで、所有者が知らないうちに望まない取引が進められることを防ぎます。
白紙委任をしない
委任事項が空欄である「白紙委任」は、所有者以外の他者が自由に内容を書き加えられます。所有者にとってどんなに不利益な内容であっても、所有者の署名押印があればすべて有効です。
信頼できる代理人への委任だとしても、第三者に不要な項目を書き加えられるリスクを抱えてしまいますので、白紙委任は行わないようにしましょう。
有効期限も明確に
有効期限が明記されていない委任状を持った代理人は、委任状で指定された物件の売買権をずっと持ち続けてしまいます。
所有者に売る気が無くなった物件をいつの間にか売られてしまったり、買う気が無くなった物件を買われてしまうといったトラブルにつながるため、有効期限を設けて代理人の権利を制限しておきましょう。
最後を「以上」で締めくくる
第三者が委任状に追記してしまった内容だとしても、不動産の所有者による署名押印がされていれば、その内容も有効とされてしまいます。
追記を防止するためにも、委任事項の最後は「以上」で締めくくっておきましょう。
最後に代理人選びのポイントをチェックしておこう!
不動産売買で代理人を選ぶ際の注意
不動産は高額なだけでなく、法的な権利や義務が伴うものです。
その不動産の売買を委任する代理人の選定は、次のポイントをおさえながら進めましょう。
信頼できる人を選ぶ
不動産所有者と同等の権利をもって取引を行う代理人は、なによりも信頼できる相手であることが大切です。
代理人の選出には法的に定められた基準はないため、誰でも代理人に選出はできます。しかし、大きな資産の取引を任せる代理人ですから、弁護士や司法書士といった法律に詳しい専門家や、普段から交流があり信頼をおける親族に任せるのがいいでしょう。
常に連絡できるようにしておく
代理人が委任される権限は委任状によって定められており、その記載内容の範囲内でのみ代行が可能です。
しかし時には委任状によって取り決められていない事項に対し、所有者と代理人の間で確認を行う必要性が生じます。たとえば、売り出し中には、予期していなかった物件の価格の変更や内覧方法の変更などが必要になるケースもあるかもしれません。
スムーズな確認のためには、所有者と代理人の双方が常に連絡を取り合える環境が必要です。些細なことでもすぐに確認できるよう、複数の連絡方法を確保しておきましょう。
まとめ:不動産売買の代理人擁立は慎重に
不動産売買は高額になりやすく、法的な制限も受けやすい取引です。代理人制度は物理的、法的に不動産取引が難しい人にとっては大変便利なものですが、適切な形で委任し、代理人を擁立しなければ、思わぬトラブルにも発展しかねません。
弊社イエツグでは、ご所有者様と代理人の方がスムーズなお取引ができるよう、最大限サポートさせていただきます。また対面手続きが不要な「IT重説」を活用した売買も対応可能です。
なんらかの制約によって売買手続きが難しいという方も、どうぞ弊社イエツグまでご相談ください。