2020年4月、新型コロナウイルスの影響が拡大していくなか、不動産ディベロッパーの方から「週ごとに買取金額の目線が5%ほど下がっている」と連絡を受けました。
つまり、1週間前は5,000万円で購入できていた不動産が、1週間後には買取金額が4,750万円に下がってしまっているのです。
今、不動産市場では何が起こっているのでしょうか?
本記事では、新型コロナウイルスにより不動産価格が下落している理由、および今後は日本経済や不動産市場がどのように変化していくのかご説明します。
特に、不動産の購入・売却を迷っている人は、本記事を読むことで「具体的にどう行動すれば良いのか」のヒントを得られるはずです。
無計画に行動を起こして大切な資産を失わないよう、ぜひご参照ください。
- 不動産価格が下落している理由
- 日本経済のこれから
- 1年後、不動産価格はどうなっていくのか
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目次
不動産価格はなぜ下落しているのか
不動産や金は、実体経済の影響を受けづらい安全資産だと言われています。
事実、金が40年ぶりに最高値を更新し、2020年4月14日には1g6,582円を記録しました。
一方、金と同じく安全資産だと言われる不動産は、どうして価格が下がっているのでしょうか。
不動産価格の低迷は1年ほど続く見込み
不動産価格の下落は、コロナショックによる先行きが不透明であるため、市場のなかに「早めに売りたい」という心理が働いていることで引き起こされています。
ただし、不動産の下落が一時的なものとなる可能性は高く、短く見積もって半年先の2020年10月、長引けば翌年4月ごろには価格を戻すといったシナリオが私の見解です。
その後、不動産価格が高騰するシナリオも想定しており、現段階において私は「今こそが不動産の買い時だ」と考えています。
また、上記の予想がどのようなものなのか、何を根拠にしているのかについて、下記ページにて解説しています。不動産の購入を検討している方は、ぜひチェックしてみてください。
▼2020年後半の中古住宅流通予測を解説!
では、コロナショックにより不動産価格が下落している今、どうして不動産は買い時だと言えるのかをご説明します。
今後の不動産市場を見極めるためのポイントは3つ
不動産を買うべきなのか、売るべきなのか、その答えは日本経済の動向にあります。
結論から言えば、今後の日本経済はハイパーインフレを迎える懸念があり、日本円の価値は大幅に下落する未来が想定されます。その結果、相対的に不動産価格は高騰し、購入が困難となる可能性が高いのです。
今回は、今後の不動産市場を読み解くにあたり重要となる、以下3つのポイントに触れていきます。
- 日本の愚策と実体経済の歪
- 日本の政策による重たい副作用
- ハイパーインフレがもたらす不動産への影響
今、日本はどのような政策を施行しており、結果として不動産市場はどうなっていくのか一緒に予想していきましょう。
日本の愚策と実体経済の歪
日本経済を語るとき重要となる、日経平均株価をご存知でしょうか。
日経平均株価は、いわば日本経済のバロメーターです。日経平均株価の価格が高いほど景気が良く、価格が低ければ景気は悪いと判断してください。本記事を読み進めるにあたっては、このレベルの理解があれば十分です。
1989年、バブル絶頂期の日経平均株価は、令和2年4月時点の倍近くに相当する約38,000円でした。間もなく、1990年にバブル崩壊が起こり、そこから日本は「失われた20年」と呼ばれる経済停滞期に突入するのです。
その後はITバブルやリーマンショックによる株価の乱高下を経験しつつ、日本政府はなんとか不景気から脱却を目指すということで、金融市場に対して資金供給を行う量的緩和金融政策を2013年に開始。量的緩和金融政策は、アベノミクスのうち最も重要な政策となっています。
日本はこうして景気後退、いわゆるデフレの脱却を目指し、日本銀行による国債と株式*¹の爆買いを実施しました。ただし、実はこの政策は世界から見ると異例、かつ禁じ手と言われるような取り組みなのです。
*¹厳密には「株式」ではなく、株価指数連動型上場投資信託(ETF)
国債と株の爆買いによる自由市場の崩壊
本来、株価は自由市場の原理に基づき価格が決まるものであり、政府が権力を行使し、意図的に取引をすることによって調整してはいけないのです。
このことは財政法第5条にも定められており、「すべて、公債の発行については、日本銀行にこれを引き受けさせ、又、借入金の借入については、日本銀行からこれを借り入れてはならない。」と明言されています。
こうした背景から、日本が行っている量的緩和金融政策は、健全な財政政策ではないと非難されています。
コロナショックにより日経平均株価は一時期16,000円台に大幅下落したものの、その裏では日本銀行が上場企業の株を爆買いし、現在は19,000円まで価格を戻しています。
コロナショックにより経済は停滞しているので、本来であれば日本経済のバロメーターである日経平均株価は低下するはず。しかし、日本銀行が金融市場に介入し、自由市場の原理を無視して株価の下支えを実施してしまっているのです。
見方によっては、「日本経済の崩壊を支えている」として良い策のように思えるこの行為こそ、実は大きな副作用をともなう愚策なのです。
日本の政策による重たい副作用
ここまで、日本銀行により行われる過剰な量的緩和、いわゆる買いオペレーションにより株式が買われて株価が支えられているというお話をしました。
その過程で取得した株式の平均取得単価は、日経平均株価にすると19,500円程度。日本銀行が買いオペレーションを行っていなければ、日経平均株価は12,000円前後だと言われているため、実質的に日本銀行は40%前後の含み損を抱えていることとなります。
しかし、含み損の拡大を阻止するため買いオペレーションを止めると公表すれば、日経平均株価は高確率で暴落すると予想されており、量的緩和をストップすることは極めて困難だと考えられます。
このような行き過ぎた量的緩和がもたらす結果は、第一次世界大戦後のドイツが参考となるはずです。
量的緩和が招いたハイパーインフレの一例
第一次世界大戦後、ドイツは戦勝国に対する賠償金として、膨大な支払いを要求されました。
こういった背景があり、ドイツの中央銀行は貨幣を大量に発行したのです。結果的に、ドイツの貨幣であるマルクは急速に価値を失い、財政破綻を招きました。
「当時のドイツでは、パンを購入するために紙幣を手押し車で運んでいた」という話は、ハイパーインフレを語るときに使われるエピソードの代名詞です。
しかし、このエピソードは決して他人事ではなく、これから日本に同じような事態が起ころうとしていることを認識しなければなりません。
日本経済を苦しめる少子高齢化と消費増税
現行の量的緩和に加えて、日本は少子高齢化と消費増税による物価上昇という、2つの大きな問題を抱えています。
少子高齢化は加速の一途をたどり、労働人口の減少は免れないため、モノの供給は減ります。モノの供給が減ることで物価の上昇につながることは、新型コロナウイルスの影響によりトイレットペーパーが高騰する現状を見れば、容易に想像できるでしょう。
また、少子高齢化による物価上昇に先立って、2019年10月に施行された消費増税により物価の上昇はすでに起こっています。こうして、少子高齢化による緩やかな物価上昇に備える猶予もないまま、消費増税による物価上昇によって日本経済は縮小を余儀なくされました。
そして、この流れを加速させる決定打が、先ほど述べた新型コロナウイルスに起因する日本銀行の過剰な量的緩和なのです。
ハイパーインフレがもたらす不動産への影響
ここまでに説明した未来が現実となれば、ハイパーインフレにより日本円は紙くずとなります。その結果、不動産の価格は相対的に高騰し、一部の資産家を除いて購入することが困難となるはずです。
一方、ハイパーインフレが起こるまえに不動産を購入している人は、保有している不動産の価値が日本円に対して値上がりし、インフレが進むほど資産価値は上昇していきます。
つまり、ハイパーインフレが起こることを前提として行動するなら、一時的に値下がりしている不動産を購入することが望ましいのです。
日本経済を盛り上げる頼みの綱であるオリンピックも、1年後に延期する形で開催が予定されてはいるものの、新型コロナウイルスによる感染拡大が開催時期までに落ち着いている保証はありません。
もしも、オリンピックが中止となれば、日本はオリンピック特需がないまま更なる景気後退期に突入し、日本経済は回復することなく日本銀行には大量の債権のみ残されます。
日本の株式市場にある資金のうち、2/3を担っている海外投資家が日本市場から手を引き、いよいよ日本銀行の量的緩和では株価下落を止められない状態になるでしょう。
そうなれば、ここまでに解説したようなシナリオを描くことになるのです。
まとめ
日本経済が低迷しているにもかかわらず、量的緩和により日経平均株価を維持している現状が、いつまでも問題を起こすことなく続くわけではありません。
本記事で解説したように、量的緩和による日経平均株価の買支えは止められず、かつてのドイツのようなハイパーインフレが起こるシナリオは現実的なものとなりつつあるのです。
もし、最悪のシナリオが現実になった場合、多くの人にとって不動産は「購入できない高価な資産」となるほか、家賃は従来の何倍、何十倍にまで跳ね上がります。インフレにともなって、一緒に生活保護も手厚くなるとは考えづらいため、支払い能力のない人は住む家がなくなってしまう懸念もあるのです。
国も企業も頼れない時代を迎えつつあるため、そういった未来に備えて早々に行動を起こす意識が大切です。もしも、不動産の購入を検討しているなら、この1年が勝負どころとなります。不動産を買うなら、今すぐ行動を起こしましょう!