連帯債務で住宅ローンを組むときの注意点!持分や夫婦の役割はどうなるの?

共働き夫婦が住宅を購入する場合、連帯債務で住宅ローンを組まれる方がいらっしゃいます。連帯債務で住宅ローンを組むと、夫婦どちらかが単独で組むよりも、借入額を増やせて希望の物件を購入しやすくなるためです。

しかし、連帯債務のメリットばかりに着目して借り入れると、後悔したりトラブルに発展したりする恐れがあります

そこで本記事では、連帯債務の仕組みやメリット、借り入れる前に知っておくべき注意点などを幅広く解説します。

この記事でわかること
  • 住宅ローンの連帯債務とは
  • 住宅ローンを連帯債務で組んだ場合のメリット
  • 住宅ローンを連帯債務で組む前に知っておくべき注意点
執筆者 丹拓也
執筆者 丹拓也株式会社イエツグ代表取締役
不動産業界の活性化・透明化を目指し、2018年仲介手数料定額制の不動産会社「イエツグ」を設立。お客様の「心底信頼し合えるパートナー」になることを目標に、良質なサービスと情報を提供している。
保有資格:宅地建物取引士・2級ファイナンシャルプランナー技能士・住宅ローンアドバイザー・既存住宅アドバイザー・防災士

連帯債務で住宅ローンを借り入れるメリット

住宅ローンの連帯債務とは、夫婦または親子などの複数人で返済債務を負う借入方法です。簡単にいうと「住宅ローンを、夫婦2人で協力して返してくださいね」という住宅ローン契約です。

夫婦で住宅ローンを連帯債務で借り入れる場合、どちらかが主たる債務者、もう1人が連帯債務者となり、それぞれが借入額の全てに対して返済義務を負います。

連帯債務で住宅ローンを借り入れるメリットは、以下の3点です。

連帯債務で住宅ローンを借り入れる3つのメリット
  1. 多額の借り入れが可能
  2. 債務者それぞれが住宅ローン控除を適用できる
  3. 債務者それぞれがすまい給付金を受け取れる

多額の借り入れが可能

連帯債務では、住宅ローンの審査時に債務者の年収が合算されて借入可能額が計算されます。夫婦のどちらかが単独で住宅ローンを組んだときよりも、多額の借り入れができるため、手が届かなかった物件を購入しやすくなるのです。

ただし連帯債務で住宅ローンを組む場合、夫婦それぞれが返済義務を負うため、連帯債務者にも安定した収入が求められます。また、妻が連帯債務者となった場合、育休や産休を取り、世帯の収入が減っても返済をし続けなければなりません

住宅ローン控除を債務者それぞれが適用できる

住宅ローン控除とは、住宅ローンを借り入れた人が利用できる、税負担の軽減制度です。年末時点における借入残高の1%分が、所得税から控除され、引ききれなかった金額は住民税から控除されます。

住宅ローン控除を受けられる期間は、最大で10年間ですが、所定の条件を満たすと控除期間が13年に延長されます。

連帯債務で借り入れた場合、夫婦それぞれが持つ住宅の所有権の割合(持分割合)に応じて、住宅ローン控除を受けられます

たとえば、共働きの夫婦が、住宅ローンを半分ずつ負担する連帯債務で住宅を購入し、住宅の持分割合も1/2ずつであったとしましょう。年末時点の借入残高が3,000万円であった場合、夫と妻がそれぞれ15万円(1,500万円×1%)の減税を受けられます。

ただし住宅ローン控除の対象となる借入残高は、頭金を負担した割合や借入金を負担する割合、持分割合などによって変わります

夫婦それぞれがすまい給付金を受けられる

すまい給付金とは、住宅ローン控除による節税効果があまり得られない所得の方向けに実施されている支援制度です。給付額は、住宅ローンを組んだ人の収入額(都道府県民税の所得割額)で決まる給付基礎額に、持分割合をかけて計算されます。

※画像引用:国土交通省「すまい給付金

すまい給付金を受給できる年収の目安と、給付基礎額は以下の通りです。

  • 年収の目安:775万円以下
  • 給付基礎額:10万〜50万円

※消費税10%が適用される住宅を購入した場合

たとえば、給付基礎額が夫40万円、妻30万円で、持分割合が夫婦それぞれ1/2であった場合、(40万円×1/2)+(30万円×1/2)=35万円のすまい給付金を受給できます。

「連帯債務」「連帯保証」「ペアローン」の違いと夫婦の役割

夫婦の収入を合算して住宅ローンを借り入れる場合、連帯債務の他にペアローンや連帯保証といった選択肢があります。

ペアローンとは、夫婦それぞれで住宅ローン契約を結ぶ借入方法。連帯保証とは、夫婦どちらか1人が住宅ローンの債務者となり、もう1人は連帯保証人となる借入方法です。

ペアローンは、夫婦それぞれの借入額に対して返済義務を負います。一方で連帯保証人は、債務者が返済不能となったときに返済義務を負う点が異なります。

夫を主たる債務者とする場合、契約形態による違いは以下の通りです。

連帯債務 連帯保証 ペアローン
位置づけ 主債務者 連帯債務者 主債務者 連帯保証人 主債務者 主債務者
契約 1本 2本
住宅ローン控除
団体信用生命保険 △※
所有権

※夫婦連生団信に加入できる場合のみ

団体信用生命保険(団信)とは、住宅ローンの債務者が死亡または所定の高度障害状態となった場合に、保険金によって完済される保険です。

連帯債務者は、連帯保証人と同じく通常の団信には加入できません。連帯債務者が加入できるのは、夫婦のどちらかが亡くなった場合に残債が0円となる夫婦連生型団信のみです。

ペアローンであれば、夫婦それぞれが団信に加入できますが、住宅ローン契約を夫婦それぞれで1本ずつ結ぶため、事務手数料や印紙税などの諸費用が2本分かかります。

連帯債務を取り扱っている金融機関は少ないため、共働き夫婦が住宅ローンを借り入れる場合は、連帯保証やペアローンも検討してみると良いでしょう。

住宅ローンを連帯債務で借りるときは「持分割合」「離婚」「死亡」に要注意

住宅ローンを連帯債務で借り入れるときは、いくつか把握しておくべき注意点があります。もし注意点を確認せずに、連帯債務で住宅ローンを借り入れてしまうと、余分な税負担やトラブルが発生しかねません。

連帯債務で住宅ローンを借り入れる際の3つの注意点
  1. 住宅の持分割合次第で贈与税が発生する
  2. 団信に加入できるのは主たる債務者だけ
  3. 夫婦が離婚をしても引き続き返済が必要
それぞれについて、解説していきます。

住宅の持分割合次第で贈与税が発生する

連帯債務で住宅ローンを組んで住宅を購入した場合、夫婦それぞれが所有権を持ちます。夫と妻が出資した割合と、住宅の所有権を登記する際の持分割合が異なると、贈与税が発生することがあるのです。

たとえば、以下のケースにおいて連帯債務で住宅ローンを組み、マイホームを購入したとしましょう。

  • 住宅の購入価格:3,000万円
  • 持分割合:夫1/2・妻1/2
  • 頭金:500万円
  • 住宅ローン:2,500万円(夫:1,500万円、妻:1,000万円)
頭金を夫の貯蓄ですべて支払った場合、夫婦それぞれの出資金額と出資割合は以下の通りです。

出資金額 頭金500万円+1,500万円
=2,000万円
1,000万円
出資割合 2,000万円/3,000万円
=2/3
1,000万円/3,000万円
=1/3

このように、持分割合が夫1/2、妻1/2にもかかわらず、出資割合が夫2/3、妻1/3となっている場合、夫が妻に1/6を贈与したことになり贈与税が課せられる可能性があります

連帯債務者が死亡しても団信による保障は受けられない

連帯債務で団信に加入できるのは、主たる債務者のみです。連帯債務者が亡くなった場合、主たる債務者は引き続き借り入れた全額を返済していかなければなりません

連帯債務者に万一のことがあった場合の返済が心配であれば、夫婦連生型団信に加入する必要があります。しかし連帯債務と夫婦連生型団信の両方を取り扱う金融機関は少ないため、住宅ローンの選択肢が狭まってしまいます。

住宅ローンを連帯債務で借り入たあとに離婚をしても引き続き返済が必要

連帯債務で住宅ローンを借り入れた場合、夫婦が離婚をしても連帯債務者の返済義務はなくなりません

たとえば、主たる債務者が夫、連帯債務者が妻であったとしましょう。住宅を売却しないかぎり、元夫は離婚したあとも引き続き住宅ローンを返済していかなければなりません。もし元夫が返済を滞納すれば、戸籍上は他人となったはずの元妻に返済の義務が生じます

「離婚したら住宅ローンの名義変更をすれば良いのではないか」と思う方もいらっしゃるでしょう。しかし、住宅ローンの名義変更は、金融機関からの承認が必要であるため、困難であるケースが多いのです。

離婚したあとの住宅や住宅ローンの取り扱いについては多くの注意点があるため、以下の記事も併せてご確認ください。

まとめ:住宅ローンを連帯債務で組む場合は慎重に検討する

連帯債務は、1人で組むよりも多額の借り入れが可能です。また、夫婦それぞれが住宅ローン控除やすまい給付金を利用できる可能性がある点もメリットといえます。

しかし、連帯債務には「贈与税が発生する場合がある」「団信は主たる債務者しか加入できない」「離婚しても引き続き返済が必要」といった注意点があります。

欲しい物件の価格や夫婦の収入にかかわらず、住宅を購入するときは、資金計画を慎重に立てることが非常に大切です。

イエツグには、FP住宅ローンアドバイザーといった有資格者が在籍しています。無料でキャッシュフロー表も作成いたしますので、安心できる資金計画を立てたいと考えている方は、ぜひ弊社までお気軽にご相談ください。

イエツグは、住宅とともに想いを”人から人に継ぐ”という願いから付けた社名です。仲介手数料を格安・定額にすることで、節約できた費用を住宅の質を向上させるために使っていただきたいと考えております。住まいを”継ぐ”には、耐震性や価値を向上することが不可欠だと思うからです。 イエツグ代表の私、丹は、元消防士。東日本大震災で多くの家屋が倒壊し、大切なものを失った方々を目の当たりにしたことにより、既存住宅の価値を上げ、良質な住宅を流通させることがこの国の急務なのではないかと考えるようになりました。小さな会社ではありますが、社員一同、同じ志を持って対応させていただいております。ぜひ一度ご相談ください。
監修者 品木彰
監修者 小林だいさく金融ライター、ファイナンシャルプランナー。
大手保険会社で培った知識と経験から、保険、不動産、税金、住宅ローンなど幅広いジャンルの記事を執筆・監修。

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