結論:子どもの足音が聞こえたからといって、直ちに損害賠償が認められるわけではありません。
一方で、音の大きさだけでなく、発生する時間帯・頻度・継続期間、建物の遮音性能、被害の内容、当事者同士の対応などが重なると、深刻な紛争になることがあります。実際に、マンション上階の子どもの音をめぐり、慰謝料等の支払いが命じられた裁判例もあります。
この記事では、裁判所が公表している判決文を確認しながら、判例の事実関係と、購入前・居住中にできる現実的な対策を整理します。判例の金額や結論を、そのまま別の家庭に当てはめる記事ではありません。
マンション住まいでの代表的な心配ごとの1つに、「騒音問題」があります。
内見時には気づかなかった周囲からの騒音により、生活に支障をきたしてしまうことも。反対に、自分自身が騒音元となってしまい、周辺世帯とトラブルになることもありえます。
とくに生活時間の違いや、床に伝わる衝撃音は、同じ音量でも受け止め方が変わりやすいものです。お子さんがいる家庭では、日常生活を送りながら周囲への配慮も必要になり、気を遣う場面が少なくありません。
過去にはマンション上階からの子どもの騒音に対し、下階住民からの慰謝料請求が認められた判例もありました。
本記事では、どのような事情が争点となり、どのような判断が示されたのかを紹介します。あわせて、騒音の相談を受けた側・相談する側の双方が、問題を大きくしないための順番も確認します。
- 判例「マンション上階の幼児による騒音問題」のポイント
- マンションの騒音トラブルを回避する方法

目次
判例「マンション上階の子どもによる騒音問題」のポイントを解説!

今回ご紹介する判例は、平成19年10月3日に東京地裁で判決が下った事案です。
判例の読み方
この裁判例では、騒音の測定値だけでなく、発生の継続性、時間帯、健康への影響、当事者間のやり取りなどが検討されています。裁判例は個別の事実関係に対する判断であり、「子どもの足音が何dBなら必ず違法」「慰謝料は必ずこの金額」といった全国共通の基準を示すものではありません。
裁判所が公開している判決文(平成19年10月3日判決)も確認できます。
事案の概要
本件の舞台は、昭和63年6月頃に建築されたマンション。日本建築学会による「建築物の遮音性能基準」においてはLH-60に該当し、やや遮音性能に劣る構造とされています。 原告Aは、平成8年7月29日より妻と共に当該マンションに居住。被告Bが当該マンションに平成16年2月頃に転居して以来、A家の直上にあるB家から子どもが跳んだり跳ねたりする音が聞こえてくるようになりました。 Bの転居前にも別世帯が居住していましたが、その間Aが騒音に悩まされることはありませんでした。A世帯付近の暗騒音(バスや飛行機などの騒音を発する対象の影響が無い場合の騒音)は27~29dBと、一般的なレベルに留まっていたようです。 しかしB世帯の入居以来は昼夜を問わず50~65dBの騒音が発生。60dBはファミリーレストランにおける音量レベル程度に相当するため、夜間には相当な騒音であったことと思われます。 この騒音が長期にわたったことで、A夫人は咽頭異常感及び不眠症といった身体的な異常が発生。AはBに対し、不法行為による損害賠償権に基づき、慰謝料および弁護士費用の合計240万円の支払いを求める訴えを起こしました。争点:被告の主張
騒音の元となっていたB長男に音を生じさせないよう、床にマットやカーペットを敷くといった対策を実施。長男と同居を開始した平成16年4月当初は深夜1時程度まで起きていたものの、それ以降は午後10時には就寝させたと主張しました。 Aの苦情に対しBからの言い分も伝えましたが、A側が一切聞く耳を持たないため、B家におけるこれ以上の対策はできないと述べています。判決と裁判所の判断
本件において裁判所は、被告Bに対し原告Aへ慰謝料・弁護士費用含め合計36万円の支払いを命じる判決を下しました。 本件はB家からの騒音が、一般社会生活上A家が受忍すべき限度を超えていたかが争点になりました。本件では、測定された音の大きさだけでなく、騒音が長期間続いたこと、健康への影響が生じたこと、申し入れ後の対応などが総合的に考慮されています。dBの数値や自治体の基準値だけで、別のマンションのトラブルを一律に判断することはできません。 B家の入居以降、上記の規制を超えた騒音が発生したため、Aは管理会社を通じてB家に対策を依頼。また直接話し合いの場を持とうとしましたが、B家からの回答は「これ以上の対策はできない」というものでした。 Aからは問題解決のための調停を求めるも、Bが応じなかったため不成立に。止む無く弁護士へ委任せざるを得ない状況が生まれています。 B家の住まい方は周囲環境に配慮したものとはいえず、長期間に渡ってA家は騒音に苦しめられました。またAからの申し入れに対し真摯に対応せず、乱暴に突っぱねるといった行動は、極めて不誠実なものと判断されています。 これにより、原告Aの苦痛に対する慰謝料として30万円、弁護士費用を発生させざるを得なかった損害賠償として6万円の支払いを命ずる判決が下り、Aの勝訴で決着しています。マンションの騒音トラブルを回避するには

遮音性能の事前確認
マンションを購入する際には、管理規約内に記載されている遮音性能を確認しましょう。 日本建築学会では床の遮音等級をL値で表現しており、数字が小さいほど遮音性能が高いことを表しています。 遮音等級は参考になりますが、数値だけで実際の聞こえ方を決めることはできません。床の構造や仕上げ、間取り、音の種類、建物の劣化状況、生活時間帯によっても印象は変わります。購入前は、販売資料だけでなく、管理規約・使用細則・修繕履歴なども確認し、可能であれば時間帯を変えて内見しましょう。
(参考: 日本建築学会)
管理組合・管理会社に相談
居住中のマンションで騒音被害に遭ってしまった場合には、管理組合・管理会社に相談し、対応をお願いするのがよいでしょう。 掲示板への配慮のお願いを掲載、同じ階全体へのお願いの手紙を投函、対象の家へ直接お願いなど、段階を踏んで騒音問題に取り組んでくれることが期待できます。 騒音への対処は、可能な限り、騒音元に対して直接交渉を持ちかけないことが1つのポイントです。騒音を出している本人は自分自身が騒音の元になっていると気づいていないことも多く、直接指摘されることで「怒鳴り込まれた」と感情的になってしまう恐れもあります。 間に管理組合・管理会社を挟む交渉は遠回りに思えるかもしれませんが、問題を穏便に解決する一番の近道であると考えましょう。自身も遮音対策を講じる
騒音問題は自分が被害者であることばかりでなく、加害者側になってしまうこともあります。少しくらいの音なら大丈夫だろうと思っていても、音は下に響きやすい性質があるため、知らない間に騒音による迷惑をかけていることもあります。 マンションのような集合住宅に住む際には、周囲にさまざまな生活スタイルの家庭が集まっていることを頭に置き、周囲の迷惑にならない生活を心がけましょう。 一方で、どんなに気をつかっていても騒音の苦情を受ける対象になってしまうこともあります。自分自身では問題がない音量だと思っていても、音を受け取る周囲によっては、問題視されてしまう恐れは常につきまといます。 もし騒音の指摘を受けてしまった時には、上記判例の被告Bのように対立せず、誠意ある対応を心がけましょう。住み替えるという選択肢も
周囲の騒音に対して苦情を訴えてもまったく改善しない状態が続いてしまうと、騒音による体調の悪化などの問題につながる恐れもあります。 健康上の問題悪化は取り返しが付かない問題になってしまうことも。どうしても問題が改善しない場合には、非常に残念ですが住み替えの検討も視野にいれましょう。騒音トラブルが起きたときの実務的な順番
騒音が気になったとき、いきなり相手の玄関へ行くと、問題が「音」から「感情の対立」に変わることがあります。次の順番で、事実と相談先を整理しましょう。
- 日時・時間帯・頻度・音の種類を記録する:感情的な評価だけでなく、いつ、どの程度、どんな音がしたかをメモします。体調への影響がある場合は、医療機関への相談記録も保管します。
- 管理規約と使用細則を確認する:生活音、工事、共用部分の使い方、相談窓口などのルールはマンションごとに異なります。
- 管理会社・管理組合へ相談する:掲示や全体への注意喚起など、相手を名指ししない方法から始められる場合があります。
- 改善状況を確認する:一度の申し入れで結論を急がず、記録を更新しながら状況を確認します。
- 改善しない場合は専門家へ相談する:弁護士や自治体の相談窓口など、事案に合う窓口を検討します。裁判を選ぶかどうかは、証拠・費用・時間・生活への影響を整理して判断します。
注意:録音や撮影は方法にも配慮が必要です
記録を残すことは大切ですが、相手を威圧したり、共用部を無断で撮影したりする行為は別のトラブルにつながることがあります。記録の扱いや法的手続きについては、必要に応じて専門家へ確認してください。
購入前に確認したい「音」のチェックポイント
購入前なら、内見時に室内の静かさだけでなく、隣接住戸との位置関係、窓の向き、共用廊下やエレベーターとの距離、床の構造、管理規約の内容を確認します。内見用の確認項目は、プロが作った内見チェックリストにも整理しています。
住み替えを検討している場合は、売却と購入の順番や資金計画も同時に確認が必要です。住み替えの売り先行・買い先行の違いもあわせて確認しておくと、騒音だけでなく住み替え全体の判断がしやすくなります。
国土交通省はマンション管理の参考資料としてマンション標準管理規約を公開しています。ただし、実際に適用される規約や使用細則は物件ごとに異なるため、購入候補のマンションの資料を確認してください。
マンション騒音の判例についてよくある質問
子どもの足音は何dBなら違法ですか?
全国一律に「この数値なら違法」と決まっているわけではありません。音の大きさに加えて、時間帯、頻度、継続期間、建物の状況、被害の内容、当事者の対応などが個別に検討されます。
騒音を受けたら、すぐ裁判を起こすべきですか?
通常は、記録を残し、管理会社や管理組合を通じた相談など、段階的な対応を検討します。体調への影響や身の危険がある場合は、無理に直接交渉せず、専門家や公的な相談窓口へ早めに相談してください。
子どもがいる家庭はマンションを購入できませんか?
そのようなことはありません。建物の仕様、管理規約、周辺環境、生活時間に合う住まいを選び、床への衝撃音を減らす工夫を重ねることが重要です。購入前に確認できる資料と、現地でしか分からない音の両方を見て判断しましょう。
まとめ:子どもがいるご家庭はとくに騒音トラブルに「なる前」の対処が大切
分譲マンションは多くの世帯が集まる集合住宅です。それぞれ異なる生活スタイルをもつため、小さな生活習慣の違いが思わぬ騒音トラブルにつながることもあります。 とくに子どもがいるご家庭では、騒音トラブルに「なる前」の対処を心掛けるようにしましょう。騒音を受ける側、発する側のどちらにもならずに済むよう、マンション選びの際には遮音性も十分に考慮したいところです。 弊社イエツグでは、お客様が希望されるマンション選びをさまざまな面からサポートいたします。築年数、構造といった面から、高い遮音性のマンションや長く安心して住めるマンション探しをお手伝いいたします。弊社の仲介手数料は、定額182,900円(税別)。また売主様より手数料を受領できる物件については、買主様は仲介手数料無料+キャッシュバックにて仲介させていただきます。子育て世帯の方も、遮音性や周辺環境を確認しながら住み替えを検討できます。購入前の物件選びで気になる点があれば、イエツグまでお気軽にご相談ください。


























