緊急事態宣言の解除から、早いもので4ヶ月あまりが経過しました。
コロナ禍で落ち込んだ中古住宅流通ですが、緊急事態宣言解除後には中古マンション・中古戸建ともに成約数と成約価格が上昇傾向にあります。
2020年9月のマーケット速報では、「不動産の売り出し件数」が大きく減少傾向にあるということです。
需要が高まり、供給が減っている今、不動産は「売り時」にあるとも判断できます。この売り時は、2021年以降も継続するのでしょうか?
- 2020年9月中古マンションの成約状況
- 2020年9月中古戸建の成約状況
- 2021年は不動産の売り時になるのか?
【動画目次】
00:00 はじめに
01:10 ①2020年9月中古マンション・中古戸建の成約状況
03:02 ②「需要と供給」のバランスが需要に傾いている背景
05:59 ③2021年も不動産の売り時は継続するのか?
09:39 まとめ

不動産業界の活性化・透明化を目指し、2018年仲介手数料定額制の不動産会社「イエツグ」を設立。お客様の「心底信頼し合えるパートナー」になることを目標に、良質なサービスと情報を提供している。
保有資格:宅地建物取引士・2級ファイナンシャルプランナー技能士・住宅ローンアドバイザー・既存住宅アドバイザー・防災士
目次
2020年9月首都圏中古住宅の成約状況

まずは、2020年9月の首都圏中古住宅の成約数や成約価格を見ていきましょう。
中古マンション
成約数

(出典:東日本レインズ)
上記グラフは、首都圏中古マンションの「成約件数」を示したものです。
赤線のグラフが成約数ですが、2020年4月に大きく落ち込み、8月に向かって急上昇しています。緊急事態宣言が発令された4月には、前年同月比「-50%」以上と大きく成約数が落ちましたが、8月には「+20%」近くと大きくV字回復したのです。
しかし、2020年9月はやや下降傾向にあります。とはいえ、上記グラフは「前年同月比」を表したものであり、成約件数自体は、8月の「3,053件」から「3,328件」と数を伸ばしています。
価格

(出典:東日本レインズ)
こちらのグラフは、中古マンションの「価格」の推移を表したものです。2020年9月の成約平米単価は「55.98万円/㎡」と、前年同月比で「+4.1%」となっています。
価格についても、緊急事態宣言下で大きく落ちましたが、現在はほぼコロナ前の水準に戻ったといえるでしょう。
中古戸建
成約数

(出典:東日本レインズ)
中古戸建についても、4月に大きく成約数を落とし、8月までに一気にV字回復。9月に来てやや失速感が見られる状況です。
価格

(出典:東日本レインズ)
2020年9月、首都圏の中古戸建の価格の平均は「3,168万円」と、前年同月比「+2.5%」となっています。
在庫数減少の今は不動産の売り時

2020年9月は、中古マンション・中古戸建ともに、成約数、成約価格に、緊急事態宣言の落ち込み後のV字回復から一定の失速が見られましたが、いずれもコロナ前の水準に戻ったといえるでしょう。
成約数・成約価格以外に注目なのは、「在庫件数」の推移です。
新規登録物件は減少傾向に


上記は、先ほどと同じグラフですが、赤線ではなく、紫の「在庫件数(左目盛)」と緑の棒グラフ「新規登録件数(左目盛)」をご覧ください。
中古マンションも中古戸建も、2020年9月にかけて減少傾向にありますよね。
「在庫件数」というのは現在、売り出されている物件の数で、「新規登録件数」というのは、新規に売り出しを開始した物件の数です。
成約数が伸びている中、「在庫件数」と「新規登録件数」が減ってるということは、需要と供給のバランスが、やや需要に傾き始めているということです。
2020年9月の新規登録件数は、中古マンションが前年同月比「-14.7%」、中古戸建が「-17.5%」。売り出される物件数は、ここ数ヶ月、減少傾向にあります。
不動産は、需要と供給のバランスによって価格が変動するものです。当然ながら、需要が上回れば、価格は高騰し、売れやすさは上昇するのが基本。つまり、昨今の需給バランスを見れば、今は不動産の売り時だと判断できるわけです。
新築物件の高騰も追い風に
中古住宅の供給数が減っているのは、新型コロナウイルスの影響もあるでしょう。
緊急事態宣言下では営業を自粛した不動産会社が多くあり、売りたくても売れない人も多かったものと推察されます。さらに、不況が忍び寄る今の状況で、不動産を手放す選択ができない人も一定数いらっしゃることでしょう。
また、中古住宅の需要が伸びている背景には、新築物件の高騰があげられます。

(不動産経済研究所の指数より筆者が作成)
現在の首都圏新築マンション価格の平均は、6,000万円以上。コロナ禍でも大きく値が落ちることはなかったため、これからの収入になにかと不安がある昨今のような状況では、価格が高い新築住宅ではなく、中古住宅を選択する人が増えつつあるのかもしれませんね。
住宅ローン金利も売り時を後押し
不動産の売り時を占う上では、住宅ローン金利も無視できません。
マイホームを購入する人のほとんどが住宅ローンを利用する中、金利水準の推移は、不動産の売れ行きに大きく関わることです。
近年では、過去最低水準ともいえるほどの低金利状態で住宅ローン金利は推移しています。

(出典:ARUHI)
上記は、固定金利の推移を表したものですが、ご覧の通り、金利水準はここ15年ほど下がり続けています。2020年10月現在の変動型の住宅ローン金利は0.5%を下回る金融機関も出てきており、不動産の買主、売主、両者を後押ししている状況です。
2021年不動産の売り時は継続する?

気になるのは、不動産の売り時が継続するのかということではないでしょうか?
結論からいえば、売り時が継続する要素は多いといえます。
中古住宅の需要は高まっている
コロナ後により顕著になりましたが、ここ数年、中古住宅の需要は高まっています。
その理由はいくつか考えられますが、やはり新築住宅が高騰していることが大きいでしょう。また、中古住宅の価値を高めるための仕組みが構築され始めてきたことも挙げられます。
- 住宅診断(ホームインスペクション)
- 既存住宅瑕疵保険
- 耐震基準適合証明書
- リノベーション
中古住宅は、新築住宅と比較して「不安」があるものです。しかし上記のような施策を行うことで、「安心」を付加することができます。
また中古住宅の築年数によっては住宅ローン控除が受けられない物件もありますが、上記の施策によって住宅ローン控除の適用要件を満たすことも可能です。
弊社仲介の物件には「住宅診断(ホームインスペクション)」と診断後の「既存住宅瑕疵保険」の加入を、無料で行っております。このことにより、「安心」と「税制上の優遇」を物件に付帯できますので、ぜひご利用くださいませ。
さらに、弊社仲介物件は、ご売却前のリノベーションを無償で実施させていただいております。ハウスクリーニングはもちろん、クロスの張替えやキッチン/浴室の交換も対象ですので、「安心」のみならず、物件の価値向上も見込めます。
2021年の住宅ローン金利は「現状維持」か

(出典:国土交通省)
上記グラフは、不動産の価格を指数化したものです。こちらは2010年の価格を「100」としています。
緑の折れ線グラフ=マンション価格を筆頭に、2013年ころから価格が上昇していることがわかりますね。
2013年こそ、金融緩和政策が始まった年。つまり、近年の不動産価格の高騰は、金融緩和政策に大きく影響を受けているということです。
気になる金融緩和政策の動向ですが、日銀の黒田総裁は、「2021年、2022年も継続する」といった趣旨の見解を示しており、2021年についても大幅に住宅ローン金利が上昇する見込みはないと見られています。
2021年税制改正にも期待
2020年10月時点では検討段階ですが、2021年度の税制改正で、住宅購入者への複数の優遇措置が検討されています。
- 最大200万円相当の「新しい生活様式ポイント制度仮称」の創設
- 住宅ローン減税の延長
- ZEH補助制度の拡充
- 住宅取得資金等に係る贈与税非課税枠の拡大
これらの経済政策もまた、2021年の不動産の買い時、そして売り時を後押しするものとして期待されています。
まとめ:2020年9月の中古住宅の成約状況はやや失速感があるものの、2021年にも売り時が継続する要素は多い
2020年9月の首都圏中古住宅の流通状況は、緊急事態宣言解除後、V字回復だった成約数がやや失速したものの、価格はいまだ高騰傾向にあるといえます。
在庫物件数や新規登録数は減少傾向にあるため、「需要>供給」のバランスとなり、不動産の売り時とも判断できるでしょう。
気になるのは「2021年も売り時は続くのか?」ということですが、中古住宅の人気・住宅ローン金利・税制改正など、継続する要素は多いといえます。
2008年のリーマンショック当時もそうでしたが、不況の折には、高額な新築不動産の需要は下がりますが、中古住宅の需要は上がるものです。2009年の首都圏新築マンション価格は10%ほどの下落が見られましたが、中古住宅の価格は大きく変わりませんでした。2021年についても、同様のことが見られる可能性は高いといえるでしょう。
