収入印紙は見たことがあると思いますが、貼付(てんぷ)した経験はあまりないという方が多いのではないでしょうか?収入印紙は一定金額以上でないと貼る必要がありませんし、普段の生活で貼る機会もありません。
不動産売買契約書には、収入印紙を貼付する必要があります。もし収入印紙を貼らないと、罰金を支払わなければならない可能性も。収入印紙代金は決して安くなく、貼付しなかった場合の罰則についても軽くはありません。この機会に、収入印紙についての知識を深めていきましょう。
不動産業界の活性化・透明化を目指し、2018年仲介手数料定額制の不動産会社「イエツグ」を設立。お客様の「心底信頼し合えるパートナー」になることを目標に、良質なサービスと情報を提供している。
保有資格:宅地建物取引士・2級ファイナンシャルプランナー技能士・住宅ローンアドバイザー・既存住宅アドバイザー・防災士
目次
収入印紙は税金
収入印紙とは、印紙税を支払った証票(証明書)です。なぜ印紙を貼る必要があるかというと、社会のルール作りのためです。収入印紙は税金。
課税文書の作成や発行した際に、その文章に貼付し消印するという方法で納税します。
契約書を作成すると、取引内容が明確になりますよね。取引の証拠が残ればズルする人は減りますので、トラブルも少なくなり、法律を守る人が増えます。
取引が活発になれば経済が活性・安定化に繋がります。つまり、印紙税は経済の活性化に必要な法律を守るために、存在するのです。
不動産売買契約書に貼る収入印紙の金額
収入印紙は、不動産の売買契約書を作成するタイミングで貼ることになります。
印紙の金額は契約書の種類や記載されている金額によって異なり、時期によっては軽減税率が適用になるので、印紙の金額を間違わないようにしなければなりません。
印紙を貼る書類について
印紙を貼る必要(課税対象)となる書類は、全部で20種類あります。
不動産売買の契約書に関しては、上記表の「1」に該当します。
収入印紙代の軽減措置
不動産の売買契約書の収入印紙は、売買契約書に記載されている金額によって変わります。
売買代金が1万円未満であれば、印紙は非課税ですが、現実的に1万円未満の不動産はほとんど存在しません。そのため、不動産売買の契約書には印紙を貼るという認識を持っていて問題ありません。
また、令和4年(2023年)3月31日までに作成する契約書に関しては、印紙税の軽減措置があります。軽減措置は、上記の図の※部分で、売買契約書に記載された金額によって軽減率は異なります。
たとえば、2000万円の不動産売買の場合、通常だと2万円の印紙ですが、軽減期間中であれば、半額の1万円の印紙を貼ることになります。軽減措置の期間は延長される場合もありますので、契約書を作成する際には、国税庁ホームページで最新情報を確認してください。
誰が負担する?不動産売買契約書に貼る収入印紙の注意点
次に、印紙を実際に貼る際の注意点を説明します。
注意点は2つです。
・誰が印紙代を支払うのか
・複数契約書を作成した場合に印紙は何枚貼ればいいのか
収入印紙は契約書を作成した双方に負担する義務がある
印紙税の支払い義務者は、契約書を作成した人(または法人)です。
会社など大人数での飲み会の場合、居酒屋の領収書に印紙が貼ってあることがありますよね。飲み会代の領収書を作成するのは居酒屋ですので、居酒屋側が印紙税を支払う義務者となります。
不動産の売買契約書の場合どうなるのかというと、契約書はお互いが合意して1つの契約書を作成します。となると、印紙税の支払い義務は売主・買主両方なので、印紙税は双方で負担することになります。実際の支払いについては、折半でも片方が全額負担しても問題ありません。
契約書の原本1通ごとに収入印紙を貼る必要がある
作成する契約書が1通のみであれば、貼る印紙も1枚で大丈夫です。
ただ、契約書が1通しかない場合、のちに問題になった際に原本を持っていない側が非常に不利になります。そのためお互いが不利益を受けたいために、契約書の原本は2通作成するのが一般的です。
ただし、印紙は契約書として有効な書類にはすべてに貼る必要がありますので、契約書を2通作成すれば、2通ともに印紙を貼付しなければなりません。
収入印紙を貼らなかった場合の罰則について
収入印紙は税金です。そのため印紙を貼らない行為は、税金の未払いと同じ扱いに。税金が未払いの場合、ぺナルティが発生しますが、印紙税の罰金(過怠税)は非常に重いものです。
印紙税未納の場合で税務調査を受けて発覚した場合
税務調査により印紙税の未納が確認された場合には、納付すべき印紙税額の3倍相当額の過怠税を支払うことになります。
所得税の罰金である重加算税でも本税額の35%や40%ですので、3倍の数字がいかに重い罰則かがわかります。ちなみに、税務調査を受ける前に自主的に納付した場合には、過怠税が1.1倍に軽減されます。
印紙を貼るのを忘れてしまった場合
印紙を貼るのを忘れてしまった場合も、罰金の対象です。
過怠税の金額は、本来貼付すべき額の1.1倍。所得税のローン控除などで、売買契約書を税務署に見せる機会もありますので、必ず印紙は貼りましょう。
売買契約書に貼付したが消印をしなかった場合
印紙は、貼っただけで終わりではありません。消印(割印)をすることで、初めて有効となります。
消印をしていない場合でも、貼付した収入印紙の額に相当する過怠税を支払うことになります。
よくある収入印紙の疑問Q&A
ここまで、印紙についての概要を説明しました。ここからは、収入印紙でよくある疑問についてお答えします。
不動産売買に貼る印紙代金どこで買えるの?
主に印紙を購入できる場所はこちらになります。
・法務局
・市役所・区役所
・郵便局
・コンビニ(少額印紙)
コンビニに関しては、店舗によって販売している種類に差があります。
また、印紙は税務署が管轄する税金ですが、税務署で印紙は販売していません。
上記以外の場所でも印紙を販売している店もありますが、確実に手に入るのは法務局と郵便局です。
不動産売買契約書に貼付する印紙は、不動産会社側が用意してくれることがあります。この場合には、不動産会社に印紙代金を支払います。
収入印紙の貼り方と割印について
収入印紙を貼る場合、割印を押す必要があります。
割印を押すことで、印紙の再利用を防ぎます。
ちなみに、収入印紙の図柄は一定期間ごとに変更しています。
最新の印紙は平成30年7月から使用されていますが、改正前の印紙も使用することは可能です。
参考:収入印紙の形式改正について(国税庁)
契約書のどこに収入印紙を貼ればいいの?
法律上、印紙を貼る場所の規定はありません。契約書のいずれかの場所に貼っていれば問題ありません。
不動産売買契約書の場合には、題目の脇か契約書の余白に貼ることが多いです。
不動産の売買契約書に貼る収入印紙の枚数に制限はあるの?
収入印紙は切手と同じように金額が印字されていますので、複数枚の印紙を組み合わせて貼っても問題ありません。
なお、印紙の種類は合計31券種あります。
1円から10万円まで存在し、200円から10万円の印紙(19券種)が平成30年7月に新しくなりました。
契約書のコピーに収入印紙を貼る必要はあるの?
コピーした契約書に印紙貼る必要はありません。
ただし、コピーされた契約書は原本ではありませんので、ご注意ください。
手付金には収入印紙を貼る必要があるの?
手付金の領収書を支払う場合にも、印紙を貼る必要があります。
ただし、領収書の印紙は、領収書を作成する手付金をもらった側が貼付義務者です。
たとえば、不動産仲介業者に手付金を支払う場合には、不動産業者が印紙を貼ることになります。
不動産仲介手数料には収入印紙を貼る必要があるの?
不動産仲介手数料の領収書にも印紙を貼る必要があります。
こちらも手付金と同様で、領収書を発行する不動産仲介業者が印紙を貼ります。
収入印紙は個人間の契約でも貼る必要があるの?
印紙は、個人間で行う契約書であっても貼る必要があります。
ただし口頭契約であれば、契約書は存在しないので印紙を貼る必要はありません。とはいえ、契約書が無いと後々問題になることもありますので、保険代として契約書を作成するのをおすすめします。
弊社では、売買契約書の作成のみであれば5万円(税別)にて承らせていただいております。
印紙の貼っていない契約書の法的効力はあるの?
印紙が貼っていない契約書でも、契約書として有効です。
ただし、印紙漏れは税金の未払いと同じなので、必ず印紙は貼りましょう。
収入印紙を誤って貼付しまった場合
印紙を間違えて貼ってしまった場合には、還付請求をすることで印紙代金が戻ってきます。
還付請求期間は、対象となる文書を作成した日から5年以内です。
還付請求手続きについては、以下の通りです。
【還付請求手続きの流れ】
1.印紙税過誤納確認申請書に必要事項を記入
2.税務署へ申請書及び還付請求の対象となる文書を提出
3.書類等に不備が無ければ指定の銀行口座へご返金
【申請する場所】
最寄りの税務署(持参もしくは郵送)
【必要書類】
・印紙税過誤納確認申請書(税務署もしくは国税庁のウェブサイトから用紙をダウンロード)
・還付請求の対象となる現文書
・印鑑
まとめ
収入印紙の金額は不動産売買代金に比べれば少額ですが、売買代金によっては数万円支払うことになります。また、印紙の貼付漏れは過怠税の支払うことになりますので、忘れずに印紙を貼ることが大切です。
なお、弊社「イエツグ」では、契約書の作成から印紙を含めた相談まで対応しております。
購入・売却どちらの仲介手数料も、定額18万2,900円(税別)で承っております。印紙代を節約することはできませんが、印紙以外の部分での節約には貢献いたしますので、お気軽にお問い合わせください。
在籍時には、2,000件以上の税金相談に対応。専門分野は、相続・贈与・不動産売買に関する税金。