南海トラフ巨大地震や、首都直下地震が話題になっています。
東日本大震災から10年が経ちました。当時私は消防士として、救助活動をしておりました。
あの時も無事だった建物や、一方で全壊、半壊してしまった建物がありました。
実際に地震が起きたときに築年数の古い住宅に住んでいるのは、とても不安になると思います。
築年数何年の住宅なら、安心して住めるのでしょうか?
また、築何年の中古住宅なら安心して購入できるのでしょうか?
この記事を読めば、不動産の耐震基準とはなにか?
そして、安心して購入できる中古住宅の築年数の目安が分かります。
2022年(令和4年)の税制改正により、中古住宅の住宅ローン控除適用要件が大幅に緩和されたことにより、築年数がある程度経過している中古住宅の需要が拡大することが予想されます。
中古住宅を購入する際に、どのような住宅を購入すると住宅ローン控除の適用を受けることができるかは、下記記事を合わせてご参照していただけますと幸いです。
この記事はこれから中古住宅の購入を検討されている方に特におすすめの内容となっております。
ぜひ最後までお読みいただき、中古住宅購入時の参考にしていただければ幸いです。
- 耐震基準の歴史
- 耐震基準に対する正しい考え方
- 中古住宅選びのポイント
目次
倒壊する可能性がある建物の割合
2021年3月4日に木造住宅の耐震に関する驚愕の調査結果が、日本木造住宅耐震補強事業者協同組合から発表されました。
対象となる住宅は1950年から2000年5月に着工された、木造在来工法の木造住宅で、2階建て以下の27,929棟を調査しました。
その中で1950年から1980年築の旧耐震基準住宅は13,705件で、以下が内訳になります。
倒壊しない:27件(0.2%)
一応倒壊しない:342件(2.5%)
倒壊する可能性がある:1,638件(12%)
倒壊する可能性が高い:11,698件(85.4%)
調査の結果、
旧耐震基準の住宅のうちほとんどの物件が、「倒壊する可能性がある、または高い」という事になっていました。
次に1981年から2000年築の新耐震基準住宅は14,224件で、以下が内訳になります。
倒壊しない:341件(2.4%)
一応倒壊しない:1,660件(11.7%)
倒壊する可能性がある:3,077件(21.6%)
倒壊する可能性が高い:9,146件(64.3%)
このデータからは、新耐震基準の住宅でも60%以上は倒壊する可能性が非常に高いという結果が出てしまいました。
不動産の営業マンから「この物件は1981年6月以降に建築確認申請をした住宅なので新耐震基準で安心です」と言われた事がある人も多いのではないでしょうか。
今回のデータからこの言葉は嘘だと言う事が分かります。
「新耐震基準だから安心」という言葉は中古住宅を販売する営業マンのセールストークに過ぎません。
厳密に言うと新耐震基準は、旧耐震基準と比べると確かに安心かもしれませんが、絶対に安全とは言えません。
では築何年以降の住宅であれば安心と言えるのでしょうか。
この記事を読みながら考えていきましょう。
耐震基準の歴史
建築基準法は、改正に次ぐ改正を重ねて今の住宅市場があります。
耐震基準という言葉を聞いた事はあるかと思いますが、具体的に内容を説明できる方は少ないかと思います。
法律全般に言えることですが、何かの事件をきっかけに法改正が行われる事が多く建築基準法も例外なく、地震というきっかけがあり法改正が行われました。
旧耐震基準から新耐震基準へ
まず、
旧耐震基準から新耐震基準に移り変わる少し前の話しですが、1978年に宮城県沖大地震が起きました。
最大震度は5で強震、1996年に震度階級の見直しがあり、今の震度階級でいう震度5強の地震です。
この地震で全半壊となった住宅は、4,385戸で人口50万人以上の大都市が経験した初めての都市型地震の典型とも言われています。
地震の震度は、震度階級が見直される前の1996年3月以前、人間の体感、その周辺の被害状況に応じて震度が判断されていました。
「今の地震は4かな?5かな?」となかなかアバウトに決められていたんですね。
今は体感ではなく、震度計で測定しています。
耐震基準はこの宮城県沖地震をきっかけに旧耐震基準から新耐震基準へと移行しました。
それが1981年の6月以降に建物を建てると計画された住宅となっています。
建築日ではなく、建築確認申請の日付に注意
1つ注意点ですが、
1981年6月以降に建物を建てると申請された住宅が新耐震基準になると遠回しな表現をしたのには理由があります。
その理由とは、
築1981年6月以降の物件が新耐震基準ではないからです。
耐震基準は、住宅を建てると申請した段階の建築基準法が適用されます。
日本全国共通ではないのですが、都心部では建築確認申請をしなければ、住宅を建てることができません。
都心部において何の制限もなく、色々な住宅が建ってしまったら、弊害が起こりますし、ある一定の建築基準で建築しなければ、身体・生命・財産に影響がでる場合があるからです。
そのため、
都心部では住宅を建設する場合には、自治体の建築事務所などに「建築確認申請」を提出する必要があるのです。
「建築確認申請」とは、今の建築基準法に適合している住宅の計画になっているかを第三者が確認をすることです。
以上の事から、
1981年6月以降に建築された物件が新耐震基準なのではなく、1981年6月以降に建築確認申請を提出して、第三者機関により法的に建築しても問題が無いか確認されている物件が新耐震基準に該当していると言えるのです。
家を建てるという計画から、実際に家が建つまでには時間が掛かります。
そのため、
いつの耐震基準で建てられた住宅なのかを判断する際には、家が完成した築年数を確認するのではなく、建築確認申請の日付が1981年6月以降なのかを確認をする必要があります。
ちなみに新耐震基準は、震度7の地震があっても崩壊しないように作るといったものです。
一方、
旧耐震基準は震度5の地震がきても問題ないように作るといったもので、旧耐震基準から新耐震基準に変わった時に耐震基準は飛躍的に上がりました。
そのため、
不動産の営業マンから「新耐震基準なので安全ですよ」と言ったセリフが出てくるのです。
新耐震基準から新・新耐震基準へ
しかし、
新耐震基準で建てられた住宅でも、先ほどのデータでは60%以上が倒壊の危険がありました。
そして、
1995年の阪神淡路大震災では震度7の地震が起こり、全半壊で249,180戸、東日本大震災が起こる前は戦後最大の大震災と言われていました。
実際この時に旧耐震基準の物件に比べて、新耐震基準物件の有効性は立証されました。
木造住宅の7割強は無被害、もしくはその損害が軽微なものでした。
しかし、
その一方で新耐震基準の物件でも2割程度の建物の被害は甚大なものでした。
この阪神淡路大震災を契機に、
新たな耐震基準に改正されて、「新・新耐震基準」もしくは「2000年基準」へと遷移しました。
ということは、この2000年基準の物件なら安心なのでしょうか。
話はまだまだ続きます。
まだ記憶に新しい2016年の熊本地震です。
この熊本地震では、新耐震基準で建築された住宅のうち5分の1は大破し、2000年基準の住宅も含まれています。
最新の建築基準で建てられた住宅にもかかわらず、驚きの結果になってしまい、住宅関連の専門家も考えを改めさせられた大地震だったのは間違いありません。
確かに阪神淡路大震災では、新耐震基準の住宅の有効性が認められていましたが、熊本地震は特殊だったのです。
2016年4月14日M6.4の地震があり、この地震は本震だと思われていましたが、その2日後4月16日M7.3の本震が発生したのです。
新耐震基準や2000年基準で建てられてはいましたが、震度7の地震が2回も起こることを誰しもが想像していませんでした。
結論として、
築何年の物件が安心なのかの答えですが、極端な話新耐震基準であろうが、2000年基準であろうが、新築であろうが倒壊する危険性は0ではありません。
それでは、
木造住宅を購入する時には耐震基準をどのように考えていけば良いのか説明していきます。
耐震基準に関する正しい考え方
まず1番大事な考え方ですが、築何年の建物であろうが、地震に対して安心安全であるとは言えません。
もちろん旧耐震基準よりは新耐震基準、新耐震基準よりは2000年基準の方が安全であるとは言えます。
しかし、
地震大国の日本にとってはあくまで目安の基準にしかなりません。
次のキャプチャーでは各耐震基準についての考え方について解説していきます。
なお、旧耐震基準の住宅については、そもそも建て替えを検討しなければならないため、今回のブログ記事では説明を省略させていただきます。
新耐震基準
新耐震基準の住宅と言われていたり表記があったりしても、実際には新耐震基準で建てられていない物件があります。
建築確認申請は建築をスタートする時に、第三者機関にチェックしてもらうものです。
しかし、
果たして完成した時にその計画通りに建てられているのでしょうか。
建築をする段階では、建築基準法に則って家を建てると申請しているのにも関わらず、工事が始まって全然違う住宅を建てている可能性もあります。
例えば、
筋交いを入れなければいけない部分に、実際には筋交いを入れていなかったなどです。
構造の部分では、外観を見ただけでは分かりませんからね。
そういった事がないように、今の建築基準法では、住宅が完成したら必ず検査しないといけないという事が義務付けられています。
しかし、
この検査は昔、義務ではありませんでした。
1998年の完了検査の実施率は38%しかなく、6割以上の物件が、建築基準法に適合するように建築確認申請はしているが完成した時に検査はしていない事になります。
そのため、
2000年基準前の新耐震基準の建物では震度7クラスの地震があっても、一応倒壊しないという基準に満たしていない可能性があります。
検査されているかの確認方法ですが、不動産会社へ
「この物件の検査済証が発行されているかどうか」
を教えてもらい、検査済証があれば書類をもらう事をオススメします。
ただし、繰り返しになりますが最新の建築基準に適合していたとしても、安心安全とは言い切れないことに注意してください。
詳細については後述しますので、もうしばらくお付き合いください。
2000年基準
次に2000年基準の住宅に関してですが、先ほど出てきた建築確認申請後の検査の実施率は2000年以降に上昇していきました。
2003年には国土交通省より各金融機関に「完了検査に基づく検査済証が発行されていない物件は融資を控えるように」という通達がありました。
2000年基準の建物でも、2003年以降急速に検査が実施されていったため、なかには2000年基準の物件なのに、検査済証が発行されていない物件もあります。
上記で説明した内容と重複しますが、2000年基準の住宅の購入を検討する場合、検査済証の発行履歴については必ず確認をしましょう。
さらに、
2000年基準の物件であっても、熊本地震のように震度7の地震に複数遭うと倒壊する可能性があります。
今の建築基準法で建てられた住宅は耐震等級1相当にあたります。
耐震等級1とは、建築基準法で
「数百年に1度程度の地震(震度6強から7程度)に対して倒壊や崩壊しない」
「数十年に1度発生する地震(震度5程度)に対しては住宅が損傷しない」
ことが目安になっており、震度7の地震が起こっても倒壊しないという指標になっています。
建売住宅では数が少ないですが、耐震等級3という物件も中には増えてきています。
耐震等級3とは、耐震等級1の1.5倍の地震力に耐えられるだけの性能・耐震強度水準です。
住宅性能表示制度で定められた耐震性の中でも、最も高いレベルであり1度大きな地震を受けてもダメージが少ないため、強震が襲った後でも住み続けられ、大きな余震が来てもより安全と言えるでしょう。
実際に数は少ないものの、耐震基準3で建てられた住宅について熊本地震で倒壊件数は0でした。
<耐震基準3>
無被害87.5%(14棟)
軽微・小破12.5%(2棟)
<建築基準法レベル(耐震基準1相当)
無被害60.1%(181棟)
軽微・小破・中破33.6%(101棟)
大破4%(12棟)
倒壊2.3%(7棟)
では、
耐震等級2の建物はどうだったのでしょうか。
小学校や中学校などは耐震等級2以上の建物で建築しなければいけない義務があります。
先ほども取り上げた熊本地震においては、余震が700回以上もあり、熊本市内のだけで小学校16校、中学校8校で破損が見つかっており、倒壊の危険性もあったため一部施設を閉鎖したところもありました。
これらのデータにより、2000年基準以降の住宅であっても、耐震基準1よりも2、2よりも3を取得した住宅の有用性が確認できました。
しかしながらここから最も私の言いたいところですが、いくら耐震基準が2だからと言っても、いくら耐震基準3だからと言っても、今後倒壊しないとは言い切れません。
確かに耐震基準3を取得した住宅が大地震に対して強いことは客観的に分かりましたが、今後熊本地震のような大地震が複数回発生する特殊な地震が増えていくことも考えられます。
熊本地震では度重なる強震で住宅が劣化し、2000年基準の建物に大きな被害が出ました。
そう考えると、耐震基準3の建物であっても度重なる強震が襲えば、軽微な損害で済んでいたものの、中破や大破に移行する可能性も十分にあると言えます。
一口に耐震基準が上位であれば安心とする考えは、早計であると私は考えます。
耐震対策
では具体的にどう対策すれば良いのか、主観ではありますが1つずつ説明していきます。
年々劣化していく
いくら耐震性が高い住宅であれど、例えば耐震基準2や3を取得した住宅であっても、その後のメンテナンスを怠ればその耐震性は脆く崩れていってしまいます。
定期的に外壁塗装をしたり、屋根の葺き替えをしたりと基本的なメンテナンスを必ず実施していくことです。
当たり前の話になりますが、なかなかできている人は少ないです。
今の日本は超低金利時代で自己資金が全くなくても、全額ローンを組んで住宅を購入できてしまいます。
しかし10年後、20年後にその耐震性を維持していきたければメンテナンスが必ず必要となってきます。
そのため、
メンテナンスの費用を見越して自己資金を貯めてから物件を購入する。
定期的に1~2万円程度の修繕積立金を貯めておくといったように資金に余裕を持つことが大切です。
対策工事が必要
地震に対しての対策工事を行うこともとても有効です。
耐震
揺れに耐えることで、耐震補強工事が具体的な例です。
例えば、
旧耐震物件を新耐震物件にするためには耐震補強工事が必要となってきます。
耐震補強工事の目的は、耐震等級1相当を獲得するためのもので、震度7の地震があっても一応は倒壊しないような建物にする事です。
しかし、
これだけでも充分とは言えません。
制震
耐震だけでは足りない部分を補うことができる、揺れを吸収する技術です。
制震ダンパーがその1つです。
新耐震基準や2000年基準で建てられた建物が倒壊したのは、1度の地震に耐えたが2度の地震に耐えきれなかった事が1つの要因です。
実際に新耐震基準で建築された建物が、震度7の地震を複数回に渡ってどれくらい耐えられるかといった実験も行われました。
結果は1回目の地震に関してはもちろん倒壊はしませんでしたが、筋交いに損傷がみられ、2回目、3回目の地震実験では筋交いの部分から、家が崩壊していきました。
そのため、
耐震のみですと限界があります。
それに対して制震というのは家の揺れに対してそれを抑える事ができるので、家に対してのダメージが軽減できます。
制震ダンパーはおよそ50~100万円で実施が可能です。
もし実施をしたいということであれば弊社宛にご相談いただければご提案させていただきます。
免震
揺れをそもそも建物に伝えないことです。
最近マンションでは免震マンションというものが流行ってきています。
免震装置は費用が高額になるので、ご予算と相談の上、決定する事をオススメします。
まとめ
新耐震基準の物件であっても、60%以上の物件が倒壊する可能性が高く「新耐震基準だから安心」は嘘です。
住宅、特に木造住宅を購入する場合は「築何年以内であれば安全」といった考えは完全に捨てましょう。
耐震以外にも「制震」「免震」という考えを持ち、日々メンテナンスすることを心がけましょう。
不動産会社はそのようなアドバイスはしません。
しかし、
過去に地震が起こって建物が崩壊したことは事実であり、耐震は非常に重要です。
私が消防士として救助活動をしていた時、まだ真新しい建物が倒壊してしまっている現場をいくつも見てきました。
日本は地震大国であり、近年地球温暖化の影響もあり、今まで安全と言われてきた基準、常識は幾度となく覆ってきました。
今の基準も明日には安全ではなくなるかもしれません。
今ある基準はあくまで参考程度にして、自分自身家族を守るために先を見据えて考えていくことが大切です。
弊社イエツグでは中古住宅を購入する人が安心・安全に暮らしていけるよう応援しております。
弊社の「定額制・格安仲介手数料サービス」や「無料リフォーム付き売却サービス」は、既存住宅が安全で綺麗であると周知することができ、従来の「中古よりも新築」というイメージを払拭し、「新築よりも中古」というニーズに変えることができると信じております。
然すれば、長期的には、次のような副産物にも期待できると考えています。
- 新築時に建て替えを前提としていた耐久性の建築物が永く住めるよう設計される
- 放置され倒壊の危険に瀕した空き家がメンテナンスをすると同時に内装も綺麗にされ活用される
- 解体後の廃棄物処理に伴う温室効果ガスの排出量が減少される
弊社は小さな会社ではありますが、不動産流通という分野から社会貢献し、人々の役に立ちたいと強く団結しております。住宅に加え、お客様の“想い”をも守るべく、社員一同が同じ目標に向かって日々成長し、お客様の喜ぶ声を糧に精力的に活動しております。
私の思いに賛同していただき、仲介手数料という高い費用を払うのではなく、安くなった住宅購入費用を、住宅そのものの質向上に使っていきたい!と考える方は是非、お気軽にお問合せ下さい。