「IT重説」とは、インターネットを使ったテレビ通話で、不動産取引時に必要な重要事項説明を行う手続き方法です。人との直接接触を避けたいコロナ時代において、安全性の高い手続き方法して注目されています。
一方でIT重説は、対面での説明にはないデメリットもいくつか抱えています。十分にそのデメリットを理解しないままIT重説に臨んでしまうと、思わぬトラブルにもつながってしまいかねません。。
意外とやり方が難しいIT重説。今回はIT重説ならではのデメリットとその対策についてご紹介します。
- IT重説をスマホで受けるときのデメリット
- IT重説に活用できるアプリごとのデメリット
- IT重説で起きるトラブルの回避方法
不動産業界の活性化・透明化を目指し、2018年仲介手数料定額制の不動産会社「イエツグ」を設立。お客様の「心底信頼し合えるパートナー」になることを目標に、良質なサービスと情報を提供している。
保有資格:宅地建物取引士・2級ファイナンシャルプランナー技能士・住宅ローンアドバイザー・既存住宅アドバイザー・防災士
目次
トラブル回避のためにはまず「IT重説」を知ろう
IT重説とは、IT(インターネット)と重説(重要事項説明)を組み合わせた造語であり、インターネットを使ったテレビ通話による、不動産の契約に必要な重要事項説明の実施を指しています。
従来では対面した宅建士から重要事項説明を受ける必要がありましたが、2017年10月より全不動産会社に対し、賃貸物件の重要事項説明をIT重説に置き換えることが認められるようになりました。
売買取引時のIT重説は、2019年10月より社会実験として一部の不動産売買事業者に導入開始。全国に存在する694の登録事業者のみが売買契約時のIT重説を行っています。
いつでも誰でも簡単にとはいかない面もあるんだ。
スマホでIT重説を受けるときのデメリット
IT重説は、不動産会社に出向いて重要事項説明を受けなくてよいメリットがある一方、直接対面での取引時には生まれないIT重説ならではのデメリットがあります。
IT重説のための環境作りや手続き手順など、デメリットは多方面におよぶため、対面での手続きとは違った注意点を意識しないといけません。
高品質の画質・音声の回線が必要
IT重説の実施には、宅建士と契約者がお互いの姿と声をインターネット通信を通じて認識できる環境が不可欠です。
顔を写すためには通信に対応したカメラが必要です。その際にスマホやパソコンのカメラの画質が悪いと、宅建士が提示する宅建士証や契約書の内容がよく見えず、正常にIT重説を行えない問題が発生します。
また、回線状態によっては、説明の途中で音や映像が途切れ、説明の内容がわからなくなることもあります。IT重説中に通信が悪化し、説明内容が十分に伝わらないと、重要事項説明を行ったことにはなりません。
賃貸契約時の重要事項説明は1時間程度で終わるのに対し、売買契約時の重要事項説明は長ければ2~3時間ほどにもおよびます。説明時間が長くなればその分通信トラブルが発生するリスクも高まります。
周囲に人がいない環境が必要
周囲に人がいない環境を作らなければならない点もデメリットのひとつです。
IT重説はインターネットのテレビ通話を利用して会話するため、少なからず話し声が発生し、周囲の迷惑になる場合があります。
宅建士からの説明は、ヘッドホンやイヤホンを利用し、周囲に声が聞こえないように対策できますが、契約者が回答する声を周囲に広がらないようにするのは非常に困難です。
宅建士への回答の一部には契約者の個人情報が含まれるため、不特定多数の人に聞かせてはいけません。また話し声そのものが周囲に迷惑になってしまう場合もあるため、IT重説実施時には、可能な限り周囲に誰もいない環境が求められます。
契約は書面が必要
IT重説を受けるためには「契約書」「重要事項説明書」といった書類を手元に置いておく必要があります。この書類は原則的にインターネット上でやりとりできないため、契約者は前もって不動産会社から書類を受け取らなければなりません。
また重要事項説明を聞いた後は、これらの書類に署名押印し、不動産会社へ返送します。この手続きのために書類を往復させる必要があり、対面での契約に比べて時間がかかる原因となっています。
売買契約と手付金支払いにタイムラグが
署名押印した書類が不動産会社に到着後、手続きは買主が手付金を支払う段階に進みます。
対面で手続きを行う際には、書類に署名押印したその場で、買主から手付金が支払われるのが一般的です。
しかしIT重説では、署名押印から不動産会社の確認まで書類の移動があります。不動産会社が書類を確認してから契約者が手付金を振り込む手順となるため、対面契約時には不要な待ち時間が生まれます。
手付金は解約時の損害賠償や違約金として扱われるお金のため、不動産会社からすれば一刻も早く振り込んで欲しいところです。
しかしIT重説においては買主が能動的に振り込むのを待たなくてはならず、支払いが遅れることでトラブルになりやすいという側面も生まれます。
IT重説にチャレンジするときには、使う通話用のアプリにも気をつけてみよう!
IT重説する上でのアプリごとのデメリット
IT重説で利用するテレビ通話は、不動産会社が指定するアプリを利用するのが一般的です。通話用のアプリはいくつも種類があり、それぞれにデメリットを抱えています。
LINE
通話アプリとして有名な「LINE」は利用者が多く、使い方を理解しやすいのは大きなメリットです。
一方で他のアプリと比べ通信品質が悪化しやすい傾向があり、IT重説中に何度も質問しなければならなくなる恐れがあります。
また通話のためには「友だち」になることが必須なため、不用意に友だちを増やしたくない人にとっては大きなデメリットとなります。
Google Meet
Googleが提供している「Google Meet」は、パソコンではブラウザから利用できますが、スマホ環境ではアプリを用意する必要があります。
また利用にはGoogleアカウントが必要であるため、事前にアカウントを作成しておかなければなりません。
Zoom
ビデオ会議アプリとして利用者が拡大している「Zoom」は、スマホだけで無くPCでの利用にも、専用アプリのインストールが必要です。
またチャット機能が充実しておらず、IT重説中にテキストチャットで残したメッセージは、後から確認できません。
Skype
テレビ通話用のサービスとして長い歴史をもつ「Skype」は、利用者も多くチャット機能も充実しています。
利用にはパソコン・スマホともにアプリのインストールが必要な上、アカウント作成も必須であるため準備に手間がかかります。また先にあげたアプリに比べ通信の品質が低く、比較的トラブルが起きやすい傾向が強めです。
いろいろデメリットはあるけれど、それでも便利なIT重説。
いくつかのポイントを注意しておけば、トラブル発生のリスクをぐっと抑えられるよ!
IT重説のデメリットを回避するための対策
IT重説にはデメリットといえるいくつかのポイントがありますが、事前に対策をしておくことで大きなトラブルを避けられます。
機器・回線の準備
テレビ通話時にトラブルを起こさないように、性能がよい機器、通信状態のよい回線を用意しておきましょう。
もし新しい機器の購入費用、回線の契約費用が高額であると感じるなら、IT重説を受ける日に合わせてレンタル機器やレンタルWi-Fiを活用するのもオススメです。
無人の環境を用意
IT重説で会話をしても周囲に迷惑がかからないよう、無人の環境を用意しましょう。できれば遮音性の高い自宅の部屋が望ましいです。
家庭の事情などで自宅を使うのが難しいようなら、カラオケルームやネットカフェの防音ルームのような防音設備が整っている部屋、または時間内は誰も入ってこないレンタルスペースの利用などを検討しましょう。
担当者と連絡を密に取り合う
不動産会社の担当者と直接顔を合わせる機会が少ない分、連絡は密に取り合うように心がけましょう。
IT重説当日に書類が無くて慌てないよう、担当者と書類の到着日を確認。また書類の返送予定日や手付金の支払予定日も確認する必要があります。
IT重説は、関係者それぞれが着実に手続きを進めることで成り立つ取引です。予定されたスケジュール通りに進行することで双方に信頼が生まれ、よい取引につながるでしょう。
まとめ:IT重説を活用した不動産売買はイエツグにおまかせ
IT重説は一般的な対面の不動産売買契約にはないデメリットをもつ手続き方法ですが、一方で無駄な移動の削減や新型コロナウイルスへの感染リスク防止など、多くの可能性を持っています。
弊社イエツグは社会実験開始当初から参加している59社の登録事業者のひとつとして、IT重説へ積極的に取り入れております。
インターネット技術の進歩により、今後ネットワーク上で完結する不動産取引が一般的になっていくことでしょう。リスクを負わない最先端の不動産取引をご希望の方は、ぜひイエツグまでご相談ください。