【FP解説】住宅ローンの団信にがん保障は不要?保険会社のがん保険との違いも解説

住宅ローンを組むときに加入する団体信用生命保険(以下、団信)は、借り入れた人が亡くなったときや重い障害状態になったときに、保険金でローンが完済される保険です。

団信には、さまざまな種類があります。代表的なのが、死亡時と高度障害時だけでなく、がんと診断された場合も保障する「がん団信です。

本記事では、がん団信を検討するときの注意点やがん保険との違いを、わかりやすく解説します。

この記事でわかること
  • 住宅ローンに付帯できるがん団信とは
  • がん団信の検討時に比較すべきこと
  • がん団信と保険会社のがん保険の違い
執筆者 丹拓也
株式会社イエツグ代表取締役
不動産業界の活性化・透明化を目指し、2018年仲介手数料定額制の不動産会社「イエツグ」を設立。お客様の「心底信頼し合えるパートナー」になることを目標に、良質なサービスと情報を提供している。
保有資格:宅地建物取引士・2級ファイナンシャルプランナー技能士・住宅ローンアドバイザー・既存住宅アドバイザー・防災士

住宅ローンの団信にはがん保険を付帯できる!若いから不要とは限らない

がん団信に加入すると、借り入れた人ががんと診断された場合に住宅ローンの残債が0円となります。残債が0円となり毎月の住居費が下がることで、がんになったときの医療費の支払いや収入の減少に対処しやすくなります

がんの主な治療法は、外科手術、抗がん剤を用いた薬物療法、放射線治療の3種類です。医療技術の発達に伴い、がんは不治の病ではなくなったものの、長期間にわたって通院による抗がん剤治療や放射線治療を受ける人が増えてきました

がんの治療を受けると、かかった医療費のうちのいくらかを自己負担しなければなりません。また長期にわたる検査や通院治療が原因で、以前と同じように働けなくなり収入が減少することもあります。

医療費の支払いや収入の減少が発生している状況で、住宅ローンを返済していくのは困難でしょう。がん団信に加入していると、がんと診断されたときにローンの返済が免除されるため、経済的な負担を緩和できます。

がんに罹患する確率

「がんは高齢者がかかる病気」と思われている方もいらっしゃるでしょう。たしかに、がんは年齢の上昇とともに罹患率が上がるため、間違いではありません。

しかし、若い方でもがんに罹患する可能性があります。国立がん研究センターの統計によると、30歳の人が10年後や20年後にがんと診断される確率は、以下のように0%ではありません。

◯30歳の男女のがん罹患リスク

男性 女性
10年後 0.6% 1.6%
20年後 2.2% 5.6%
30年後 7.4% 11.8%
40年後 21.7% 20.7%

※出典:国立がん研究センター「最新がん統計

たとえば、30歳の男性が10年後の40歳になるまでに、がんと診断される確率は0.6%。約17人に1人が、30〜40歳のあいだにがんと診断されるのです。

可能性が0%でない以上、リスクに対処する方法を考えなければなりません。住宅を購入したときに、がん団信に加入し、所定のがんと診断された場合に住宅ローンの返済がなくなるようにしておくのも有効なリスク対策の1つです。

住宅ローンのがん団信を選ぶ際は上乗せ金利や支払要件の比較が必要

がん団信の保険料や支払要件は、金融機関によって異なるため、比較したうえで検討しましょう。

がん団信は、住宅ローン金利に0.2%ほどを上乗せする形で保険料を支払って付帯させるのが一般的です。一方で、auじぶん銀行やソニー銀行が取り扱う住宅ローンには、所定のがんと診断された場合に、住宅ローンの残債が半額となる保障が無料で付帯されています。

また、3大疾病保障団信や8大疾病保障団信、全疾病保障団信などに付帯されているがん保障は、金融機関によって残債が0円となる要件が異なります

たとえば、住信SBIネット銀行の団信に付帯されている全疾病保障は、がんと診断された場合ではなく、12ヶ月以上働けない状態が続かなければ残債は0円となりません。

団信の種類は、住宅ローンを組んだあとに変更できないため、契約時に保険料や支払要件を確認して選ぶ必要があります。

がん団信の保障対象外であるがんも存在する

がん団信に加入しても、すべてのがんに備えられるわけではありません。

がん団信の保障の対象となるのは、原則として「悪性新生物」です。上皮内新生物」は保障の対象とならないケースがほとんど。また、悪性新生物であっても悪性黒色腫以外の皮膚がん」などは、保障の対象外となります。

また、がん団信の保障が開始されてから90日に以内に発覚したがんについては、保障の対象外です。

がん団信と保険会社のがん保険は保障の趣旨が異なる

「団信にがんの保障を付けるから、がん保険を解約しよう」「がん保険に加入しているから、がん団信への加入を見送ろう」と考えている人もいらっしゃるかもしれません。

しかし、がん団信と民間保険会社のがん保険は、同じがんに対する保障であっても趣旨が異なります

がん団信でカバーできるのは、がんと診断されたときの住居費です。一方で、民間保険会社のがん保険に加入すると、がんの治療費や収入の減少備えられます。

がん団信とがん保険では、カバーできる範囲が異なるため、どちらか一方に加入しても、がんに対する備えが万全になるわけではありません。

がん団信やがん保険でどこまで備えるのかは、ご自身が住宅を購入したあとにがんと診断されると、どのような経済的負担が発生するのかを考えることが大切です。

公的医療保険でカバーされる範囲

日本は「国民皆保険」を導入しているため、所定の要件を満たす人は公的医療保険(健康保険)に加入し、健康保険証を所持しています。

病気やケガになり、医療機関で治療を受けたときに健康保険証を窓口に提示すると、かかった医療費のうち3割の負担で済みます※年齢によっては1割負担または2割負担

また、ひと月(毎月1日〜月末)に同じ医療機関で支払った医療費のうち、一定の上限額を超えた部分は、自己負担をする必要はありません高額療養費によって、上限額を超過した分が払い戻されるためです。

公的保険制度の対象である診療を、保険診療といいます。がん治療の際に実施される手術や抗がん剤治療、放射線治療の多くが保険診療です。がんの治療を受けても、公的医療保険制度によって医療費の自己負担はある程度緩和されます

がんになると経済的に大きな負担が発生することがある

では、公的医療保険制度があるにもかかわらず、なぜがん保険は販売されているのでしょうか?それは、がんと診断されると、公的医療保険制度を利用しても経済的に大きな負担が発生する恐れがあるためです。

がんに限らず、入院したときの差額ベッド代や食事代などは全額自己負担となります。差額ベッド代とは、他の患者との相部屋を避けて個室に入った場合に徴収される費用です。

また、国内未承認の抗がん剤治療を用いた薬物治療は「自由診療」扱い。自由診療を受けると、保険診療分も含めた医療費の全額が自己負担となります。患者申出療養制度を申請すると、保険診療のみ3割負担にできますが、自由診療が全額自己負担である点は変わりません。

重粒子線治療や陽子線治療などの「先進医療」を受けた場合の、技術料も全額自己負担。陽子線治療の技術料は約270万円、重粒子線治療は約300万円と高額です。※出典:厚生労働省「第81回先進医療会議

がんの入院治療や通院治療が長期化した場合、治療費の自己負担が膨らんだり、収入の減少が続いたりします。医療費の支払いや収入の減少によって毎月の生活が赤字となり貯蓄が減ると、今後の家族の生活や子どもの進学などに影響が出るかもしれません

がん保険に加入すると医療費の自己負担や収入の減少に備えられる

がん保険では、がんと診断された場合や、がん治療で入院・手術をした場合、先進医療を受けた場合などに給付金を受け取れます

また、がんと診断されたときに受け取れる給付金は、再発や転移が発覚した場合も所定の条件を満たすと、複数回受け取れるタイプがあります。放射線治療や抗がん剤治療を受けた月ごとに、給付金を受け取れるがん保険も増えてきました。

がん保険の給付金と世帯の収入だけでは、住宅ローンの返済が厳しい場合、がん団信に加入する必要があります。がん団信とがん保険の両方に加入している人は、珍しくありません。

もし、がん保険の給付金と世帯の収入で返済できるのであれば、無理にがん団信に加入する必要はないといえます。

このように、がん団信とがん保険は、保障内容が大きく異なります。がん団信とがん保険のどちらか一方に加入しても、もう片方が不要になるわけではありません

まとめ:住宅ローンの団信に付帯できるがん保険の必要性は人それぞれ

がん団信に加入すると、住宅ローンの返済を開始したあとに、がんと診断されると残債が0円になります。ただし、がん団信に加入する際は、一般的に保険料の支払いが必要で、金融機関によって支払要件が異なるため、よく比較して選ぶことが大切です。

また、がん団信でカバーできるのは、がん診断時の住居費のみ。治療費や収入の減少には、貯蓄やがん保険、医療保険で備えなければなりません。がん団信やがん保険に加入するかどうかは、ご自身の状況や希望に合った選択をすることがもっとも大切です。

がん団信がご自身にとって必要かわからない場合は、ファイナンシャルプランナーに相談してみてはいかがでしょうか。

弊社イエツグには、ファイナンシャルプランナーが在籍しており、家族構成や家計の収支、資産状況などから、がん団信・がん保険の必要性をわかりやすく説明いたします。住宅購入の資金計画なども一緒に考えますので、お気軽にご相談ください。

イエツグは、住宅とともに想いを”人から人に継ぐ”という願いから付けた社名です。仲介手数料を格安・定額にすることで、節約できた費用を住宅の質を向上させるために使っていただきたいと考えております。住まいを”継ぐ”には、耐震性や価値を向上することが不可欠だと思うからです。 イエツグ代表の私、丹は、元消防士。東日本大震災で多くの家屋が倒壊し、大切なものを失った方々を目の当たりにしたことにより、既存住宅の価値を上げ、良質な住宅を流通させることがこの国の急務なのではないかと考えるようになりました。小さな会社ではありますが、社員一同、同じ志を持って対応させていただいております。ぜひ一度ご相談ください。
監修者 品木彰
金融ライター、ファイナンシャルプランナー。
大手保険会社で培った知識と経験から、保険、不動産、税金、住宅ローンなど幅広いジャンルの記事を執筆・監修。

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