空き家は売却するべき?首都圏も例外ではない!増税のリスクと節税のポイント

全国的に深刻化しており社会問題となっている、「空き家問題」。使わない空き家は、資産価値の減少や税金などの損失が生まれるだけでなく、犯罪やトラブルに巻き込まれるリスクもあります。

空き家は有意義に活用するだけでなく、適切な方法で処分できれば利益を生んでくれることも。今回は空き家を所有することのメリット・デメリットと、空き家をお得に処分できる控除制度についてご紹介します。

この記事でわかること
  • 全国および首都圏の空き家状況
  • 空き家を持ち続けるメリット・デメリット
  • 空き家売却で節税できる「3000万円特別控除」
イエツグくん
空き家問題はいつ自分の身に降りかかってくるかわからない問題。お得に処分できる制度は知っておいて損はないよ!
執筆者 丹拓也
執筆者 丹拓也株式会社イエツグ代表取締役
不動産業界の活性化・透明化を目指し、2018年仲介手数料定額制の不動産会社「イエツグ」を設立。お客様の「心底信頼し合えるパートナー」になることを目標に、良質なサービスと情報を提供している。
保有資格:宅地建物取引士・2級ファイナンシャルプランナー技能士・住宅ローンアドバイザー・既存住宅アドバイザー・防災士

【空き家の現状】首都圏ではマンションの空き家が多い

空き家問題は地方だけでなく、人が集まりやすい首都圏にも発生。地方とは違う住宅構成の都心部や近隣県においては、主にマンションが空き家の多くを占めています。

首都圏の空き家数は微増、空き家率は微減傾向

総戸数 空き家数 空き家率
平成30年 平成25年 平成30年 平成25年 平成30年 平成25年
全国 62,420 60,629 8,476 8,196 13.6% 13.5%
首都圏 22,221 21,344 2,623 2,597 11.8% 12.2%
茨城県 1,331 1,268 196 185 14.7% 14.6%
栃木県 928 879 161 143 17.3% 16.3%
群馬県 948 903 157 150 16.6% 16.6%
埼玉県 3,389 3,266 346 355 10.2% 10.9%
千葉県 3,033 2,896 381 367 12.6% 12.7%
東京都 7,667 7,359 809 817 10.6% 11.1%
神奈川県 4,502 4,351 483 487 10.7% 11.2%
山梨県 423 422 90 93 21.3% 22.0%

※単位:千戸
※総務省統計局「平成30年住宅・土地統計調査」のデータを元に筆者作成

総務省統計局がまとめた「平成30年住宅・土地統計調査」によると、平成30年の全国における空き家率は13.6%と、平成25年の13.5%から大きな変化はありません。

このうち首都圏に限定すると、平成30年の空き家率は11.8%と全国平均を下回り、また平成25年の12.2%からも減少傾向となっています。

一方で総戸数は、平成25年の2,134万戸から2,222万戸に増加。それに伴い、空き家数も平成25年の260万戸から262万戸と、微増しています。

東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県の都心部を中心とする1都3県は空き家数においても減少していますが、北関東3県は空き家数、空き家率ともに増加。山梨県は空き家数、空き家率ともに減少しているものの、首都圏内で唯一20%超の高い空き家率となっています。

首都圏の空き家の半分はマンション

※画像引用:総務省統計局「平成30年住宅・土地統計調査

全国の住宅において、マンション・アパートといった共同住宅が43.5%を占める一方、一戸建は53.6%と半数以上を占めています

建て方の割合 建て方別空き家数
一戸建 長屋建 共同住宅 その他 総戸数 一戸建て 長屋建て 共同住宅 その他
全国 53.6% 2.6% 43.5% 0.3% 1,151 617 30 501 3
首都圏 45.1% 2.1% 52.6% 0.3% 310 140 6 163 1
茨城県 72.1% 2.9% 24.8% 0.1% 29 21 1 7 0
栃木県 71.6% 2.4% 25.8% 0.1% 28 20 1 7 0
群馬県 73.8% 2.1% 24.0% 0.1% 26 19 1 6 0
埼玉県 54.8% 1.6% 43.4% 0.2% 35 19 1 15 0
千葉県 53.2% 2.1% 44.6% 0.2% 48 25 1 21 0
東京都 26.8% 1.8% 71.0% 0.4% 85 23 2 61 0
神奈川県 41.4% 2.5% 55.9% 0.3% 52 21 1 29 0
山梨県 73.5% 1.6% 24.5% 0.4% 19 14 0 5 0

※単位:千戸
※総務省統計局「平成30年住宅・土地統計調査」のデータを元に筆者作成

首都圏においては共同住宅が52.6%、一戸建てが45.1%と、比率が逆転とくに東京都における共同住宅率は71.0%と、集合住宅が非常に高い割合を占めています。

これに総戸数、空き家数のデータを当てはめたところ、首都圏の空き家31万戸のうち、共同住宅はおよそ16万戸。東京都においては8.5万戸のうち共同住宅が6.1万戸と、マンションを含む共同住宅が大きな割合を占めることが推測されます。

イエツグくん
全国的に増えている空き家。必ずしも持ち続けることがデメリットになるとは限らないんだ。

空き家を売却するメリット・デメリット

空き家は普段使っていないとはいえ、立派な不動産であり資産のひとつ。売却にはいくつかのメリットとデメリットをともないます。

処分を検討するなら、どんなメリット・デメリットがあるか、じゅうぶんに理解した上で売却を考えるとよいでしょう。

メリット1.現金が手に入る

空き家の売却により、現金を手に入れられる点は最大のメリットといえるでしょう。普段使っていない空き家をそのまま所持していても、得られるものはありません。

とくに家屋やマンションは、経年によってどんどん売りにくくなっていくものです。不要なら、早期の売却がオススメです。

メリット2.管理の手間やトラブルがなくなる

誰も住んでいない家屋は、犯罪被害や放火被害の危険性が高くなります。また老朽化や自然災害などにより倒壊してしまえば、周囲に対する損害賠償問題へ発展しまうことも考えられます。

使用していない不動産を売却すれば、トラブルに巻き込まれる恐れはなくなり、万が一の場合の費用負担もありません。また管理の必要もなくなるため、物理的な手間や精神的なプレッシャーからも解放されます。

メリット3.固定資産税の増税が避けられる

放置が続き、倒壊の恐れや保安上の危険が考えられる建物は「特定空き家」に指定され、敷地部分の固定資産税が最大6分の1となる「固定資産税の軽減措置対象」の対象外となります。

特定空き家に指定され、行政による指導を受ければ、これまで支払っていた固定資産税が大幅に増額されてしまいますが、指定前に空き家を売却できればその恐れがなくなります

同時に固定資産税の支払いからも解放されるので、経済面・精神面ともに大きなメリットがあるといえるでしょう。

イエツグくん
空き家は早めに売却すればいいことたくさん!でも売れば必ず得をするというわけでもないんだ。

ここからは空き家を売却するデメリットを解説していくよ!

デメリット1.空き家が利用できなくなる

売却した空き家は自分の所有物ではなくなりますので、今後利用はできなくなります

今は使っていなくても将来は移住を検討している場合や、親族の別荘として利用する場合など、物件の活用方法を検討しているならあわてて売却しないように注意しましょう。

デメリット2.売却費用が必要

不動産を売却すれば、その代金を入手できるのと同時に、さまざまな費用が発生します。

仲介を依頼した不動産会社への手数料や登記費用、司法書士への報酬、譲渡所得税などの税金といった各所への支払いが発生。売却額によっては、ほとんど手元に残らない場合も考えられます。

デメリット3.住宅ローンだけが残る場合がある

住宅ローンが完済されていない不動産を売却する際、ローンの残債額によっては、売却額で返済しきれない場合があります。

住宅ローン残債を下回る金額でしか売れない見込みであれば、基本的には売却ができません。それは、不動産にかかる「抵当権」が抹消できないためです。

抵当権とは、金融機関がローンを貸し出す代わりに設定する担保権。抵当権を抹消する条件は、原則的に住宅ローンの完済です。

ただし、「任意売却」によって金融機関に売却の許可を得ることができれば、住宅ローンが完済できない不動産の売却も可能です。弊社は一般的な不動産会社では扱っていない「任意売却」にも対応していますので、住宅ローンが完済できそうもない方もお気軽にご相談ください。

イエツグくん
使わない空き家を売る前にちょっと待って!不動産の売買に関係するいろいろな税金に注意しよう!

空き家売却で税金はかかるの?

空き家を売却すれば、売却に成功した額に応じた現金を得られます。この現金は税法上収入と見なされ、売却にかかった経費を差し引いた利益に対し、一定の税金が課されます。

譲与所得税、住民税、復興特別所得税が発生

不動産の売却に伴い発生した利益に対しては「譲与所得税」「住民税」「復興特別所得税」の3種の税金が発生します。

これらの税金のうち譲与所得税と住民税は、不動産を所有していた期間によって税率が異なります

対象の不動産を5年以上保有していた場合、譲与所得税は15%、住民税は5%の税率。5年未満なら譲与所得税は30%、住民税は9%となります。

さらに、平成25年から令和19年=西暦2037年までの間「復興特別所得税」として、基準所得税額の2.1%が加算。これを合計すると、5年以上保有した物件なら20.315%、5年未満なら30.63%の所得税率となります。

不動産の保有期間 譲与所得税 復興特別所得税
※基準所得税額の2.1%
住民税 合計
5年以上 15.000% 0.315% 5.000% 20.315%
5年未満 30.000% 0.630% 9.000% 39.630%

所有し続けても固定資産税、都市計画税がかかる

不動産は金銭的価値を持った財産であると同時に、保有していると税金が発生し続ける金食い虫でもあります。

不動産を保有している間は「固定資産税」に加え「都市計画税」が課税されつづけ、毎年一定額を納税しなければなりません。

固定資産税および都市計画税は、固定資産税評価額に特例を適用した「課税標準」に対し、税率をかけて算出されます。固定資産税の税率は1.4%。都市計画税は地域によって異なりますが、最大税率0.3%の納税が必要です。

なお、住宅用地に対する固定資産税および都市計画税には、それぞれ税額の減免措置が適用されます。

固定資産税においては、課税標準を200㎡以下の部分は6分の1、200㎡以上の部分は3分の1。都市計画税は200㎡以下の部分を3分の1、200㎡以上の部分を3分の2として、それぞれ税額を計算します。

しかし前述の通り、倒壊の恐れや保安上の危険が考えられる建物は「特定空き家」に指定される恐れがあります。特定空き家は、固定資産税の減免措置対象外となるため、固定資産税の納税額が最大6倍になる点には注意が必要です。

イエツグくん
不動産売買には税金がいっぱいかかるね…。
でも空き家の売買に限っては、税金をぐっと安く出来る特別な制度があるんだよ。

空き家売却で節税できる?「3000万円特別控除」とは

売っても持っていても税金がかかる空き家ですが、一定の条件を満たした空き家の売却には、税金を大きく減免できる措置が適用されます。

「空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例」は最大3,000万円

不動産のうち、相続まだは遺贈により取得した建物・土地を売却する際、一定の条件を満たした場合には「空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例」が適用されます。

この特例は、不動産を売却して得た譲与所得から最大3,000万円を控除できるというもの。仮に空き家を売却し2,500万円の譲与所得があっても、この売却にかかる譲渡所得税は一切発生しません。

この特例が適用される対象は、相続または遺贈により取得した「被相続人居住用家屋」または「被相続人居住用家屋の敷地等」と指定されています。

控除対象(1) 被相続人居住用家屋

特別控除特例の対象となる「被相続人居住用家屋」とは、相続が開始される直前に被相続人の居住用とされていた家屋のうち、以下の3要件を満たした建物を指しています。

被相続人居住用家屋の3要件
  1. 昭和56年5月31日以前に建築されたこと
  2. 区分所有建物登記がされている建物でないこと
  3. 相続開始の直前において被相続人以外に居住をしていた人がいなかったこと

区分所有建物登記とは、1棟の建物が複数に区切られ、それぞれが別々の所有権者のものを示す登記です。

マンションや共同ビルのように、部屋や階層の区切りごとに所有権が分割されている建物は、特別控除の対象にはなりません。

また、要介護認定などにより老人ホームに入所していた場合など、相続開始直前に被相続人が住んでいなかった場合があります。

そういった場合、有料老人ホームや障害者施設への入居、被相続人の物品保管に利用されていたなど、いくつかの条件を満たすことで「従前居住用家屋」とされ、被相続人居住用家屋と同等に扱われます。

なお、被相続人が所有権をもつ建物だとしても、

特別控除特例の対象となる物件
  • マンションなどの集合住宅の一部屋
  • 商業用ビル
  • 息子夫婦と同居している家

上記1~3の要件をひとつでも満たさない建物は、特別控除特例の対象とはなりません。

控除対象(2) 被相続人居住用家屋の敷地等

特別控除特例の対象となる「被相続人居住用家屋の敷地等」は、被相続人居住用家屋の条件を満たした建物の敷地として利用されていた土地、またはその土地の上にある権利を指します。

なお、被相続人居住用家屋が建っている敷地内に2つ以上の建物がある場合は、敷地の全てが特例の対象とはなりません。敷地内に建っている建物の床面積合計のうち、被相続人居住用家屋が占める割合により、被相続人居住用家屋の範囲が決められます

例として、800㎡の土地に床面積300㎡の母屋と、床面積200㎡の離れが建っているとします。

このうち、主な住居として使われていた母屋が被相続人居住用家屋に認定。それに伴い800㎡の土地のうち480㎡のみ被相続人居住用家屋の敷地等として、特別控除特例の対象と認められます。

※画像引用:国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例

まとめ:空き家売却の手続きは複雑……首都圏の空き家売却はご相談を

相続などにより、普段住んでいない土地の不動産を入手した場合、なかなか有効な活用方法もなく、ある日突然税金が上がるといったリスクを抱えることになります。

取得時の金額が安く、譲渡所得が高額になりそうな空き家は、3,000万円の特別控除を活用して売却することで、大幅な節税効果も見込めます

弊社イエツグでは、不動産売買に関わる複雑な手続きのご相談も承ります。少しでも多くのお金が手元に残るよう、さまざまな制度を利用したベストな売却をご提案いたします。

首都圏の空き家、空きマンションのご売却は、ぜひイエツグにご相談ください。

イエツグは、住宅とともに想いを”人から人に継ぐ”という願いから付けた社名です。仲介手数料を格安・定額にすることで、節約できた費用を住宅の質を向上させるために使っていただきたいと考えております。住まいを”継ぐ”には、耐震性や価値を向上することが不可欠だと思うからです。 イエツグ代表の私、丹は、元消防士。東日本大震災で多くの家屋が倒壊し、大切なものを失った方々を目の当たりにしたことにより、既存住宅の価値を上げ、良質な住宅を流通させることがこの国の急務なのではないかと考えるようになりました。小さな会社ではありますが、社員一同、同じ志を持って対応させていただいております。ぜひ一度ご相談ください。

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