不動産売却時に確定申告しないとどうなる?控除特例や必要書類についても解説!

不動産を売却した場合、税金の支払いが必要になるケースとならないケースがあります。そして税金が課税される場合には、確定申告の手続きが必要となります。

ただ、これまで確定申告の経験がほとんどないという方も多いはず。ご想像通り…不動産売却時の税金の計算は容易ではありません。

そこで本記事では、不動産売却時の確定申告について解説していきます。

この記事でわかること
  • 確定申告ってそもそもなんのためにするの?
  • 不動産売却で確定申告が必要になるケース
  • 課税額を抑えるための特例
確定申告が必須ではない状況においても、申告によって税金が安くできる場合があります。課税対象ではない方も、これから不動産売却をお考えの方も、ぜひ参考にしてみてくださいね!
執筆者 丹拓也
執筆者 丹拓也株式会社イエツグ代表取締役
不動産業界の活性化・透明化を目指し、2018年仲介手数料定額制の不動産会社「イエツグ」を設立。お客様の「心底信頼し合えるパートナー」になることを目標に、良質なサービスと情報を提供している。
保有資格:宅地建物取引士・2級ファイナンシャルプランナー技能士・住宅ローンアドバイザー・既存住宅アドバイザー・防災士

確定申告とは所得税の申告手続き

一般的に、確定申告とは、所得税の申告手続きのことをいいます。

1年間で得た所得金額を合計し、納税する所得税額を計算しますが、納める税金は所得金額によって異なります。

確定申告の手続きは翌年2月16日から3月15日

確定申告の計算期間は1月1日から12月31日までの1年間で、申告時期は翌年2月16日から3月15日までです。(※2020年の確定申告は、コロナウィルスの影響で1カ月間延長)

対象期間中に得た収入や経費の計算し、申告期限までに申告書と添付書類を揃えて税務署に提出する必要があります。
また納税額が発生する人が、申告をしなかった場合にはペナルティが発生しますので、ご注意ください。

確定申告が必要な人

確定申告が必要な人は、1年間で収入を得て、所得金額が発生する人です。

また所得の種類は全部で10個あり、確定申告ではすべての所得を合計した金額に対し所得税が課されます。

所得の種類】

  • 事業所得(自営業の収入など)不動産
  • 所得(不動産賃貸収入など)
  • 給与所得(会社員の給料など)
  • 譲渡所得(不動産・株式・金地金等の売却)
  • 配当所得(株式の配当金など)
  • 退職所得(退職金など)
  • 一時所得(的中馬券や満期保険金など)
  • 利子所得
  • 山林所得
  • 雑所得(年金や仮想通貨の利益など)

確定申告が不要な人

確定申告は、納める所得税額が発生する人が行います。

そのため、収入のない学生や専業主婦(主夫)は、基本的に確定申告は不要です。

また会社員として給料をもらっている人でも、会社で年末調整が完了している場合には、確定申告を省略できます。
なお、年末調整済みの会社員の方が他の所得を得ている場合でも、給与所得以外の所得が合計20万円以下であれば、確定申告をしなくても構いません。

不動産を売却した際の所得の種類と税金の支払い方法

不動産を売却した金額は、「譲渡所得」の対象です。

しかし『不動産売却金額=譲渡所得』ではないため、不動産の売却状況によっては譲渡所得税を支払う必要がありません。

譲渡所得税は不動産売却益に対して課税する

譲渡所得は、税金の計算上の売却益です。

不動産の売却益とは、不動産売却金額から不動産を当時購入した金額と売買にかかった費用、減価償却費相当額を差し引いた金額をいい、赤字の場合には譲渡所得税は課されません。

<譲渡所得の計算式>
売却金額-必要経費(取得費+売却経費)-特別控除額=譲渡所得
※建物の取得には、所有期間中の減価償却費相当額を差し引く

たとえば3,000万円で購入した土地を4,000万円で売却した場合、売買にかかった費用を指しい引いた利益が譲渡所得となります。

譲渡所得がマイナスとなったときには「譲渡損失」となり、譲渡所得税は非課税です。

確定申告は譲渡所得益が発生する場合に必要

確定申告は所得税を計算するため手続きですので、譲渡所得が出る場合には、必ず確定申告をしなければなりません。

しかし、譲渡損失の場合には譲渡所得税を支払う必要がありませんので、不動産売却の申告は不要となります。
(譲渡所得以外の所得で確定申告が必要な場合を除く)

なお自宅の売却場合など、一定の条件を満たした場合には、譲渡損失を他の所得と相殺できる特例制度があります。

ただ特例制度を適用する際は、譲渡損失となった場合でも確定申告の手続きが必要となりますので、ご注意ください。

譲渡所得税の税率

所得税は課税対象となる金額が大きいほど、適用する税率が高くなります。(総合課税方式)

一方、不動産譲渡所得税は所得金額の大小ではなく、所有期間によって税率が変動。そのため同じ譲渡所得の金額でも、売却した不動産の所有期間が短い場合には、納める税金が多くなります。(分離課税方式)

<譲渡所得税の税率>
〇短期譲渡所得(※所有期間5年以下)
所得税30.63%、地方税9%

〇長期譲渡所得(※所有期間5年超)
所得税15.315%、地方税5%
※ 所有期間は売却した年の1月1日時点で判断します。

不動産売却時の譲渡所得税を安く抑えるための特例制度

譲渡所得税は、不動産売却益に対しての税金ですので、売却利益が多ければ支払う税金も多くなります。

ただ自宅を売却した場合には、利益が控除される特例制度がありますので、利益が発生しても節税できたり、課税額をゼロとしたりすることが可能です。

自宅を売却した場合の3000万円の特別控除

自宅を売却した場合、譲渡所得3,000万円まで控除できる特例があります。(通称:3,000万円特別控除

3,000万円特別控除は、自分が住んでいた物件を家族以外の人に売却した場合に適用できる特例で、特例要件は比較的緩いです。

特例を適用する際の注意点は、自宅を売却し新しい自宅を購入するケース。新居に対して住宅ローン控除を適用する場合、3,000万円控除は適用できません。
そのため、3,000万円特別控除か住宅ローン控除の両方適用できるケースについては、どちらか特例を利用した方がいいかシミュレーションする必要があります。

譲渡所得税の税率が下がる10年超所有軽減税率の特例

譲渡所得税は所有期間が5年を超えている場合には、20.315%の税金を支払うことになります。

しかし、10年を超えて所有している自宅を売却した場合には、軽減税率の適用が可能となるため、支払う税金を抑えられます。

<自宅を売却した際の軽減税率の特例>
〇譲渡所得6,000万円まで
所得税10.21%、住民税4%

軽減税率の特例は、3,000万円控除の特例との併用適用が可能です。そのため、3,000万円控除してもなお利益が発生する場合に、軽減税率を適用するのが一般的です。

譲渡損失がある場合の特例制度

譲渡損失が発生する場合には納める税金はゼロですが、譲渡損失の金額を給与所得など、他の所得と損益通算できる特例が2種類あります。

一つ目は、10年以上の住宅ローンを組んで新居を購入する場合の買い替えで適用となる特例です。

マイホームの買い替えで、旧居の売却時に譲渡損失が出た場合、給与などその他の所得と損益通算することができます。また、損益通算を行っても控除しきれなかった譲渡損失は、譲渡の年の翌年以後3年内に繰り越して控除(繰越控除)することができます。

一方、買い替えでなくとも、売却金額で不動産の借入金残高を完済できなかった場合にも、同様の控除が受けられます。

(出典:国税庁

このような場合には、マイホームの売買契約日の前日における住宅ローンの残高から売却価額を差し引いた残りの金額が、損益通算の限度額です。控除しきれなかった損失は、譲渡の翌年以後3年以内に繰越控除できます。

なお、損益通算及び繰越控除の特例は、住宅ローン控除と併用が可能です。ただし、損益通算によって控除する所得税等がゼロになった場合には、その年の住宅ローン控除額はゼロとなりますのでご注意ください。

不動産売却時の確定申告に必要な書類とは?

不動産の売却時に必要な書類は、大きく分けて次の3種類です。

  • 譲渡所得の計算で必要な書類
  • 譲渡所得の特例適用で必要な書類
  • 譲渡所得以外の所得

譲渡所得の計算で必要な書類

譲渡所得の計算で必要な書類は、下記の通りです。

・売却時の売買契約書
・購入当時の売買契約書
・売却時の仲介手数料
・売却時に支払った経費の領収書
・購入時に支払った経費

売却時に支払った経費とは、収入印紙や交通費など売却の際に直接要した費用です。また、建物を取り壊して土地を売却した場合には、建物の取り壊し費用も経費に含まれます。

なお購入金額が不明の場合には売却金額の5%しか取得費として認められず、譲渡所得が跳ね上がる恐れがあるので購入した金額が確認できる書類はできるだけ探すようにしてください。

譲渡所得の特例適用で必要な書類

譲渡所得の特例適用で必要な書類は、適用する特例の種類で異なります。

そのためこちらでは、3,000万円特別控除と軽減税率の特例制度を利用する際に必要な書類をご紹介します。

<3,000万円控除特例の必要書類>
譲渡契約締結日の前日において、住民票に記載されていた住所と譲渡資産の所在地が異なる場合、下記の書類のいずれか。
・戸籍の附票の写し
・譲渡資産の所在地を管轄する、市区町村の住民票に登載されていなかった事情の詳細を明らかにする書類
・土地建物に居住していた事実を明らかにする書類で、譲渡者が譲渡資産を居住の用に供していたことを明らかにするもの
<自宅売却時の軽減税率特例>
・譲渡(売却)した家屋の登記事項証明書または、閉鎖に係る登記事項証明書
・譲渡(売却)した土地の登記事項証明書
(借地の場合には、土地賃貸借契約書など)

譲渡所得以外の所得がある場合

不動産を売却した年に、不動産売却以外の収入がある人は、譲渡所得と一緒に申告しなければなりません。

そのためこちらでは、年末調整が完了している会社員を例に、必要書類をご説明します。

<譲渡所得以外の必要書類>
・給与所得の源泉徴収票
・年末調整で間に合わなかった控除関係の書類
・医療費(原則10万円を超える場合)
・寄附金控除

不動産売却時に確定申告をしないとどうなるの?

不動産の譲渡所得益が発生する場合には確定申告が必要ですが、申告をしなかった場合や申告ミスをした場合には、本税以外に罰金を支払うことになります

申告をしなかった場合の無申告加算税

申告期限までに申告をしなかった場合には、無申告加算税が課されます。

無申告加算税は、本税額に対して15%課される税金で、納める税金が多い場合には加算税の税率が上乗せされます。
なお税務署が税務調査をする前に、期限後申告を提出した場合には、無申告加算税の税率は5%に減額します。

申告内容を間違えた場合の過少申告加算税

過少申告加算税は、過少に申告していた場合に課される税金です。

本税に対して10%課される税金で、過少に申告した金額が多かった場合には加算税の税率が上乗せされます。
なお、自主的に申告誤りを修正した場合には、過少申告加算税は賦課されません。

意図的に税金逃れをした場合の重加算税

重加算税は、意図的に税金逃れをした場合に課される税金です。

本税額に対して最低35%課される税金で、加算税の中では最も重いペナルティです。

なお普通に申告した人や、意図していない計算誤りに対して重加算税が賦課されることはありません。

納付が遅れたことに対する延滞税

延滞税は、申告期限までに税金を納めなかったことに対するペナルティです。

申告期限から実際に納める日までの期間を日割りで計算するため、納付が遅れるほど延滞税の金額も増加します。

確定申告の時間が取れない!忙しい人は税理士に相談

確定申告の手順は慣れていれば、そこまで時間がかかるものではありません。ただ、ほとんどの人は、譲渡所得税の申告は未経験。また不動産の売却金額は高額なので、申告ミスをした場合の罰金額を多いです。

そのため不動産売却の手続きについては、思い切って税理士に任せるのも選択肢となります。税理士に依頼した場合、必要書類を用意すればあとは税理士が計算をしてくれます。
また特例適用の可否判定も行ってくれるので、特例が適用できるか不明の場合でも安心です。

まとめ:不動産売却で必ず税金が課税されるとは限らないけど、確定申告しないと損することも!

不動産を売却しても、譲渡所得税が課税されない限り、確定申告は不要です。

しかし、税金が課税されるかどうかについては、計算してみないと判断ができませんので注意が必要です。また、譲渡損失が出た場合には確定申告が必須ではありませんが、本来受けられるはずの損益通算や繰越控除が受けられないことになれば非常にもったいないことです。

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監修者 平井拓
税務署勤務10年以上の税務ライター。
在籍時には、2,000件以上の税金相談に対応。専門分野は、相続・贈与・不動産売買に関する税金。

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