不動産を売買する際、売主・買主は不動産会社へ仲介を依頼するのが一般的です。また依頼先の不動産会社は、手続き途中で変更しても問題ありません。
しかし媒介契約の内容や、会社変更までの過程などに問題がある場合には法的な責任を問われ、不動産会社から損害賠償を請求されてしまう場合もあります。
スムーズに不動産会社を変更するにはどうすればいいのでしょうか?
今回は、不動産会社の変更にともなう法的責任とトラブルにならない会社変更について解説します。
- 不動産会社変更はできるか
- 変更時に仲介手数料はどうなるか
- 媒介契約後の会社変更の注意点
- スムーズに会社を変更するコツ
不動産業界の活性化・透明化を目指し、2018年仲介手数料定額制の不動産会社「イエツグ」を設立。お客様の「心底信頼し合えるパートナー」になることを目標に、良質なサービスと情報を提供している。
保有資格:宅地建物取引士・2級ファイナンシャルプランナー技能士・住宅ローンアドバイザー・既存住宅アドバイザー・防災士
仲介を任せる不動産会社の変更はできるのかな?
目次
マンション・戸建て・土地の売却で不動産会社の変更は可能!
結論としては、仲介を依頼している不動産会社から別の不動産会社への変更は可能です。
不動産会社に支払う仲介手数料は、原則として成功報酬です。マンション・戸建て・土地といった不動産の売買が成立してはじめて発生する費用であるため、売買成立前なら、売主は費用面の負担なく仲介の不動産会社を変更できます。
ただし手続きの進行段階によっては、元の不動産会社も多くのコストをかけていることから、スムーズな変更に同意してもらえない場合があります。
仲介手数料は変更前と後の両方に払わないといけないのかな?
不動産会社の変更で「仲介手数料」はどうなる?
原則として仲介手数料は成功報酬であるため、取引成立前の会社変更を理由とした支払い義務はありません。
しかし、それまでに行ってきた取引内容によっては、不動産会社から損害賠償責任を問われる可能性があります。
仲介手数料は成功報酬
仲介手数料は「成功報酬」であるため、売買契約が成立していないうちは、報酬の発生はなし。そのため途中で手続きを解除しても報酬を支払う必要はありません。
もし売買が成立していないにもかかわらず不動産会社側から仲介手数料の請求があるなら、宅地建物取引業法違反として不動産会社が罰せられます。
「媒介契約前」なら変更は自由
不動産会社に物件売買の仲介を依頼する際には、媒介契約が必要です。
媒介契約後は交渉相手を制限するといった制約が生まれますが、媒介契約を結ぶ前ならどれだけ他社と交渉しようと、仲介を依頼する不動産会社を変更しようと、売主の自由です。
悪質な解約には損害賠償請求の恐れあり
ただし、仲介手数料が成功報酬であることを逆手に取り、不動産会社を悪用してはいけません。
不動産会社に仲介を依頼するつもりがないのに手続き関連業務を依頼、また雑務を押しつけるなどした場合は、悪質な売主と見なされる恐れがあります。
仲介手数料そのものの請求は違法ですが、不当な依頼で不動産会社に損害を出したと見なされ、民法上における損害賠償請求の対象になる場合があります。
媒介契約を結んじゃった後でも変更できるのかな?
媒介契約締結後の不動産会社の変更は注意!変更できないケースも
媒介契約を結ぶ前の不動産会社変更は簡単ですが、媒介契約を結んだ後の変更には注意。
一切変更できないわけではありませんが、不動産会社、ひいては業界とのトラブルになりやすいリスクには注意しておきましょう。
「媒介期間満了時」に変更可能
もっともスムーズに不動産会社を変更できるタイミングは、媒介契約期間の満了時です。
専属専任媒介契約および専任媒介契約は、3ヶ月を上限に期限が設定されます。この契約期間中は他社との交渉はできませんが、期間満了時に更新手続きしなければ契約解除となるため、他社への変更が可能となります。
もし不動産会社からしつこく迫られてもそれは媒介契約を結ぶための営業活動にすぎません。法的な拘束力はありませんので、希望の不動産会社への変更を進めましょう。
専属専任媒介・専任媒介での途中解約は注意
専属専任媒介契約または専任媒介契約を結んでいる場合、契約期間中の解約が認められないケースがあります。
ただし専属的な媒介契約を結んだ不動産会社が、積極的に営業活動を行っていない場合には、事実上の契約不履行として解約が認められることも。もし媒介契約期間中に他社へ変更したいなら、変更が認められるだけの材料をもって不動産会社と交渉し、媒介契約の解約を認める書面やメールを受け取っておきましょう。
すでに売買が合意されている場合は不動産会社の変更はできない
すでに売主・買主間で売買が合意し、契約を結ぶ段階まで手続きが進んでいるならば、不動産会社の変更は難しいでしょう。
契約書への署名押印および手付金の授受がなされたならば、売買が合意されていると判断されます。裏を返せば、契約書の作成と手付金の授受が行われていないうちなら、不動産会社の変更は可能です。
ただし、リフォームや転居準備など、契約を前提とした出費が発生している場合には、費用を発生させた側が損害賠償請求を行う場合があります。
またそこまでの問題にはならなくても、契約直前に不動産会社を変更する不誠実な要注意人物として、不動産業界からマークされる恐れもあるでしょう。
スムーズに乗り換えるにはどんなポイントに注意すればいいのかな?
スムーズに不動産会社の変更する方法
さまざまな事情によりどうしても不動産会社を変更したい場合には、できるだけトラブルにならないよう、慎重かつ誠実に対応しましょう。
基本的には正直に理由を伝える
不動産会社を変更する際、まずは解約を申し出、正直に理由を説明しましょう。手続きが大詰めの段階でもない限り、多くの不動産会社は変更を認めてくれるでしょう。
下手に不動産会社の小さな落ち度を理由にするような小細工を使ってしまうと、不動産会社側も態度を硬化させ、変更の交渉が難航しかねません。
不当な請求には「宅建指導班」へ相談
一方でどんなに誠実に理由を伝えても、簡単に納得してくれない不動産会社もあります。もし中途解約にもかかわらず仲介手数料を請求されるようなら、各都道府県に設置された不動産の相談窓口(宅建指導班)へ相談しましょう。
なお中途解約にともなう仲介手数料の請求は違法ですが、解約までの経緯によっては、前述の通り不動産会社への損害賠償が認められる場合はあります。
解約時トラブルの多くは、取引中における不動産会社・依頼人どちらかの不誠実な行いが原因となっています。解約予定の有無に関わらず、お互いを信頼し合えるよう、取引は誠実に進めるように心がけましょう。
まとめ:不動産会社の変更はタイミングに注意
不動産売買を仲介する不動産会社は、必ず最初に相談した会社にしなければいけない決まりはありません。仲介手数料が安い、サービスが好みなど、本当にお付き合いしたい不動産会社が見つかったなら、適切な手順を踏んで会社を変更しましょう。
不動産売買の手続きはいくつもの段階があり、先に進めば進むほど変更しにくくなります。もし今仲介を依頼している会社に違和感があるようなら、タイミングに注意しながら早期に会社変更の手続きを進めましょう。