毎年5〜6月は、住民税や固定資産税、自動車税などの税金を支払う時期です。しかし新型コロナウイルスの影響による収入減少で、生活が苦しくなり「とても税金なんて払えない!」という状況の方も少なくないのではないでしょうか?
税金の支払いが難しい場合は、所定の条件を満たすと納税を猶予・減免してもらえることがあります。とくに、新型コロナウイルスの影響によって収入が一定以上低下した人は、従来の納税猶予制度より優遇されている「徴収猶予の特例制度」が利用可能です。
そこで本記事では、税金の支払いを猶予・減免してもらう方法だけでなく、今後の税金負担が家計に重くのしかからなくなるように、税額を下げる方法についてわかりやすく解説していきます。
- 住民税や固定資産税などを払えない人が増えている理由
- 納税を猶予してもらう方法
- withコロナ時代で税金の負担を下げる方法
不動産業界の活性化・透明化を目指し、2018年仲介手数料定額制の不動産会社「イエツグ」を設立。お客様の「心底信頼し合えるパートナー」になることを目標に、良質なサービスと情報を提供している。
保有資格:宅地建物取引士・2級ファイナンシャルプランナー技能士・住宅ローンアドバイザー・既存住宅アドバイザー・防災士
目次
コロナ禍で住民税や固定資産税などの税金を払えない人が急増中
新型コロナウイルスの影響で、収入が減った人や失業した人が相次いでいます。
経済的な不安を抱えている状態で、住民税や固定資産税、自動車税のような数万円あるいは数十万円と高額な税金を支払うのは困難でしょう。とくに住民税の税額は、前年度の所得をもとに計算されています。つまり、今年の収入が減ったりなくなったりしても、今年納める住民税額は変わりません。
また、会社員の方で「収入は変わっていないのに住民税の金額が昨年より増えていない・・・?」と疑問に思われた方もいらっしゃるはずです。その理由は、昨年2019年4月の税制改正により、給与所得控除の上限額が引き下げられたためです。
給与所得控除とは、年収に応じた一定額を必要経費とみなして、所得税や住民税の課税対象となる所得から差し引いてくれるものです。税制改正によって、給与所得控除の上限額が従来の220万円(年収1,000万円超)から、195万円(年収850万円超)に引き下げられました。そのため、給与収入が多い人ほど、住民税の負担が昨年よりも増えているのです。
このように税負担が重く感じるのは、コロナの影響だけでなく税金の計算方法や税制の改正も関係していると考えられます。
コロナによる収入減少で税金を払えない人は納税を猶予してもらえます!
コロナの影響で、住民税や固定資産税、自動車税などが払えない場合は、支払いを猶予・減免してもらいましょう。税金を払えないからといって、決してそのまま放置してはいけません。
税金の支払いを滞納すると、高額な延滞金の支払いが必要になったり、給与や自宅が差し押さえられたりする可能性があります。そのため税金を支払えない人は、税金の猶予や減免が受けられないか必ず確認してみましょう。
新型コロナウイルスの影響で住民税や固定資産税などの地方税を支払えない方は、以下の条件に当てはまると「徴収猶予の特例制度」によって納税を1年間猶予してもらえます。
- 1.新型コロナウイルスの影響により、令和2年2月以降の任意の期間(1か月以上)において、事業等に係る収入が前年同期に比べて概ね20%以上減少していること。
- 2.一時に納付し、又は納入を行うことが困難であること。
(注)「一時に納付し、又は納入を行うことが困難」かの判断については、少なくとも向こう半年間の事業資金を考慮に入れるなど、申請される方の置かれた状況に配慮し適切に対応します
事業等に係る収入とは、事業の売上や給与収入、不動産賃料収入、法人の売上高などのことです。生命保険の満期保険金のような一時所得は、事業等に係る収入に含まれません。
徴収猶予の特例制度の適用が認められるのは、例えば以下のようなケースです。
- 会社員Aさんの昨年4月以降の給与は毎月40万円であった
- しかし新型コロナウイルスの影響でAさんの今年の給与は4月が31万円、5月が29万円に減った
- 給与が減ったために生活が苦しくなり住民税や固定資産税を1度で支払えなくなった
特例制度の対象となるのは、令和2年2月1日から令和3年1月31日までに納期限が到来する住民税や固定資産税、都市計画税、自動車税など、ほぼ全ての地方税です。すでに納付期限が過ぎていても、遡って特例制度を利用できます。
さらに自治体独自で、納税の猶予・減免を実施している場合もあるため、お住まいの地域の情報を確認してみましょう。たとえば新潟県三条市では、新型コロナウイルスによる収入減少で持続化給付金を受け取った個人事業主は、住民税を減免してもらえます。
また、特例制度に該当しない場合でも、現行の猶予制度や減免制度によって、税金の支払いを最大で1年間待ってもらえたり、税負担の一部または全部を免除してもらえたりできます。ただし現行の猶予制度は、税額が一定以上の場合、土地や建物などを担保として提供する必要があるだけでなく、場合によっては延滞金も支払わなければならない点に注意が必要です。
地方税の猶予や減免の申請は、お住まいの自治体で行えます。特例制度は個別の事情に応じて柔軟に対応してくれる制度であるため、納税が難しい方は担当窓口に相談してみましょう。
その他国税の猶予・減免もある
所得税や法人税、消費税などの国税についても、以下の条件を満たすと支払いを猶予してもらえます。
- 1.新型コロナウイルスの影響により、令和2年2⽉以降の任意の期間(1か⽉以上)において、事業等に係る収⼊が前年同期に⽐べて概ね20%以上減少していること。
- 2.国税を⼀時に納税を⾏うことが困難であること。
(注)「⼀時に納税を⾏うことが困難」かどうかの判断については、少なくとも向こう半年間の事業資⾦を考慮に⼊れるなど、申請される⽅の置かれた状況に配慮し適切に対応します
国税の支払いを猶予してもらえる条件は、地方税とほぼ変わりません。対象は、令和2年2⽉1⽇から令和3年1⽉31⽇までに納期限が到来する所得税や法⼈税、消費税等ほぼすべての国税です。地方税と同じく、納付期限が過ぎた税金でも遡って申請できます。
納税の猶予・減免措置は一時的な救済策にしかならないことも
住民税や固定資産税などの重い税負担を猶予・減免してもらえれば、とても助かりますよね。
しかし、納税の猶予・減免措置で完全に「免除」してもらうための要件は厳しく、多くの方にとっては一時的な救援策にすぎません。猶予措置は最大で1年が、1年後には来年納税しなければならない住民税や固定資産税の通知書が届きます。つまり納税を猶予してもらったとしても、来年には2年分の税金をまとめて支払わなければならないことにもなりかねないわけです。
1年で収入や雇用が安定すればいいですが、2020年6月時点で新型コロナウイルスはまだ収束しておらず、先行きは不透明。また今年の景気が低迷したからといって、来年の景気が急激に回復し国民の収入が増えるとは考えにくいでしょう。そのため、納税の猶予・減免以外にも、税負担が家計にとって大きな負担とならないように別の対策が必要です。
withコロナ時代には「税額を下げる」選択も
今後の生活や経済がどうなるか分からないwithコロナ時代では、税負担そのものを下げるのも一つの方法です。
ここでは、住民税や固定資産税、自動車税などの税負担を下げる手段を3つご紹介します。
1.所得控除や税額控除を活用する
住民税や所得税は、所得控除や税額控除を活用することで負担を減らせます。
- 所得控除:住民税や所得税などの課税対象となる所得から一定額を控除してくれる制度
- 税額控除:住民税や所得税などの負担を直接軽減してくれる制度
住宅ローンを組んでいる人が適用できる住宅ローン控除は、税額控除の一種です。住宅ローン控除の他にも、以下のような所得控除や税額控除を利用して、住民税や所得税の負担を下げられます。
名称 | 内容 | |
税額控除 | 寄付金控除 | 全国各地のいずれかの自治体にふるさと納税による寄付を行うと受けられる税額控除 |
所得控除 | 生命保険料控除 | 1年間のうちに生命保険や医療保険、個人年金保険などで支払った保険料に応じた一定額が所得から控除される制度 |
医療費控除 | ご自身や家族が年間で支払った医療費※1が10万円※2を超えた場合、超過分が所得から控除される制度 | |
配偶者控除・配偶者特別控除 | 所得が一定以下の配偶者がいる場合に受けられる所得控除 | |
小規模企業共済等掛金控除 | 小規模企業共済やiDeCoで支払った掛金の全額が所得から控除される制度 |
※1.高額療養費や出産一時金、医療保険の入院給付金などで受け取った金額を差し引いたあとの医療費
※2.その年の総所得金額等が200万円未満の人は、総所得金額等の5%の金額
ただしコロナの影響で収入が下がっているときに生命保険やiDeCoに加入すると、保険料や掛金が家計を圧迫して生活が余計に苦しくなります。生命保険やiDeCoは、ライフプランニングを立てて必要性を判断したうえで、収入が回復し生活が安定してから加入しましょう。
また所得控除や税額控除は、年末調整や確定申告で申請をしないと利用できません。
そこで、過去に申請をし忘れた所得控除や税額控除がある場合は、修正申告(還付申告)をしましょう。修正申告をすると、所得控除や税額控除が過去に遡って適用され、払いすぎた所得税や住民税を取り戻せる可能性があります。
修正申告ができるのは、所得控除や税額控除の対象となる年の確定申告の期限(翌年の3月15日)から5年以内です。例えば、令和元年に申請し忘れた所得控除や税額控除がある場合は、令和7年の3月17日(月)※まで修正申告できます。※令和7年の3月15日が土曜日であるため
2.自動車を手放す
自動車を手放すのも、税負担を下げる一つの方法です。
自動車税は、以下のように所有している車の排気量によって決まる仕組みです。そのため、排気量が大きい車に乗っている人ほど、自動車の売却によって税負担を大きく軽減できます。
税額 | ||
令和元年9月30日以前に新車登録 | 令和元年10月1日以降に新車登録 | |
軽自動車 | 10,800円 | |
1リットル以下 | 29,500円 | 25,000円 |
1リットル超~1.5リットル以下 | 34,500円 | 30,500円 |
1.5リットル超~2リットル以下 | 39,500円 | 36,000円 |
2リットル超~2.5リットル以下 | 45,000円 | 43,500円 |
2.5リットル超~3リットル以下 | 51,000円 | 50,000円 |
3リットル超~3.5リットル以下 | 58,000円 | 57,000円 |
3.5リットル超~4リットル以下 | 66,500円 | 65,500円 |
※上記の金額は自家用の場合で営業用は自動車税額が異なる
ひと昔前は、所有している車の種類や価格が個人のステータスの一つでした。しかし2020年現在は、車をできるだけ所有しない時代へと変化しています。
たとえば、近年ではカーシェアリングできる車を設置したコインパーキングが増えました。タクシーもまた、スマホアプリで手軽に呼べようになっています。
自動車を手放すと、自動車税だけでなく駐車場代や自動車保険料などの支出も削減でき、家計の収支を大きく改善できます。自動車を手放しても生活に支障が出ないのであれば、思い切って売却しましょう。
3.不動産を手放す
土地や建物などの不動産を所有している人は、売却することで、物件引き渡し以降の固定資産税・都市計画税の負担がなくなります。土地と建物に課税される固定資産税・都市計画税は、1月1日時点の所有者が支払いますが、売却した場合には引き渡し日以降の税額を日割り計算して買主から売主に支払われます。また売却することでまとまった資金が得られ、猶予された税金の納税にも充てられるでしょう。
とはいえ、家族が住んでいる自宅の売却はすぐに考えられるものではないですよね。しかし、あらゆる対策をしても住宅ローンの支払が厳しいという方は、税金のみならず、今後のことを考えて自宅を売却するのがいい判断となるかもしれません。というのも、もし住宅ローンを一定期間滞納させてしまったら、自宅が強制的に競売にかけられてしまうからです。
競売は、強制的に手続きが進むだけでなく、落札価格が相場の半値ほどになってしまう恐れがあります。結果として、家を追われ、多額の債務が残ることで、競売にかけられた債務者が自己破産してしまうケースも少なくありません。「納税もできない」「住宅ローンも返せない」という方は、一時的な救済策にすがるのみならず、根本的な解決を目指すべきでしょう。
また、自宅に限らず相続などで取得した空き家を所有している人は、今後、固定資産税の負担が増える恐れがあります。それは、2015年に施行された「空き家対策特別措置法」により”管理不行き届き”と判断した空き家は「特定空き家」に指定され、固定資産税が最大1/6・都市計画税が最大1/3に優遇される「住宅用地の特例」から除外される可能性があるからです。
空き家の多くは、かつて暮らした実家や親御さんが大切にされていた自宅だと思います。簡単に手放せるものではないでしょうが、今、家族が危機に直面しているとすれば、少しでも負担が軽くなる選択を検討されてみてはいかがでしょうか。空き家を手放すと、固定資産税や都市計画税の負担を減らせるだけでなく、将来、負担が増えるリスクや管理の手間もなくなります。
まとめ:コロナで納税が厳しい方はまずは猶予申請を
住民税や固定資産税、自動車税などが払えない方は、所定の条件を満たすと新型コロナウイルスによる徴収猶予の特例制度によって納税を猶予してもらえます。
しかし特例制度を利用しても、税金の支払いを待ってもらえるだけで、いずれは支払わなくてはなりません。今後の仕事や生活が不安なwithコロナ時代では、所得控除・税額控除を活用したり、車や不動産を手放したりして税金の負担を下げることも必要です。
もし数ある対策の中から不動産の売却を検討される場合は、弊社イエツグまでご相談ください。イエツグは、仲介手数料が定額の182,900円(税別)。さらに建物状況調査や既存住宅かし保証などを無料で付帯しているため、できる限り負担を下げてお住まいを売却していただけます。弊社にはFPが在籍しておりますので、税負担を軽くするためのお住み替えや、これからの生活にも無理のない資金計画も同時にご提案させていただきます。
大手保険会社で培った知識と経験から、保険、不動産、税金、住宅ローンなど幅広いジャンルの記事を執筆・監修。